なぜ女性はお互いの足を引っ張りあうのか

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なぜ女性同士は対立しあうのか。バブルvs氷河期、既婚vs未婚、子ありvs子なし……。男性にはわかりづらいその仕組みを、コラムニストの河崎環氏とマーケターの牛窪恵氏が分析する――。

■対立の筆頭は「世代間ギャップ」

女たちが対立している。働き方の違いや子どもの有無など、きっかけは無数。「女同士で足を引っ張り合わずに、仲良くすればいいのに……」と、感じる男性は少なくないのではなかろうか。

男女差や世代論に詳しいマーケターの牛窪恵さんは、「私が調査を通じて見聞きしてきた中でも、女性同士の価値観の対立や確執は数多く存在します」と語る。そして、それは生き方、働き方や人材の多様性が広がる現代において、「標準」とされるものがなくなっていることが原因だと続ける。

「標準」というひな型が失われることで顕在化した対立の筆頭は「世代間ギャップ」だ。一方の主役となるのが40代後半から50代半ばの男女雇用機会均等法第一世代(以下、均等法世代)で、結婚や出産によって離職せずに働き続けた女性が管理職世代に突入したことにより、下の世代との間に温度差が生まれている。

「『24時間戦えますか』と、仕事優先で生き残ってきた均等法世代には、プライベートを犠牲にしてきたという思いが強い。ところが日本の右肩上がりの時代を知らず、終身雇用も崩壊した後に就職した20〜30代からすれば、プライベートを犠牲にしてまで仕事するのは美学でも何でもなくて、単なる時代遅れに見えるんです」

普段はお互いに自制しているものの、ふとしたときに世代間対立は際立つ。その代表的なものは、ワークライフバランスの感覚が問われる場面だ。特に女性の場合は、子どもの発熱時に早退するか、仕事を休むか、そしてその際に申し訳なさそうにするか、それとも当然の権利として堂々としているかなど、お互いの感覚差、キャリア観の違いが浮き彫りになりやすい。

また、均等法世代と団塊ジュニア世代のギャップも深刻だ。就職氷河期により、派遣など非正規での就業を余儀なくされた人の多い40代半ば前後の団塊ジュニア世代には、正規社員と遜色のない仕事をしているのに評価が低いといった制度への不満や、世代的に損をしてきたとの思いから、均等法世代の女性や正社員キャリア女性への複雑な感情を抱える人も少なくない。

「責任ある仕事を任されない中で、開き直ってアフターファイブを自分磨きに充てるなどしてすごしてきた人たちです。ときにキャリア女性に嫉妬する一方で、『ああはなりたくない、そこまで猛烈に働きたいわけじゃない』という気持ちもある。その思いが透けて見えるからこそ、均等法世代の正社員は、団塊ジュニア世代の非正規社員がお稽古だ、異業種交流会だ、婚活だといそいそと退社していく姿を見て、『またなの!?』『中途半端に働くなら、辞めてくれる?』ぐらいの厳しい視線を向けてしまうんです」

■「降りる」無念を男は知らない

世代や雇用形態のギャップは、男性にもあるものだが、なぜ女性の場合は特有の対立が生まれるのだろうか。牛窪さんは、「女性には出産というタイムリミットがあるから」と看破する。

妊活という言葉に表れるとおり、女性にとって出産が「誰でも当たり前にすること」ではなくなってきている。でも、多くの女性は「産む」前提で、40歳ぐらいまでに1度は「産めるだろうか」と真剣に悩む。産んでも今度は、バリバリ働く人生、可能だったかもしれないもう一方の道から「降りる」ことになる。

ところが男性は、「子どもはいつでもつくれる」という認識を持つ人が多く、女性ほど切迫したプレッシャーを感じずにすむ。すると、「降りる」という感覚を持つことなく「いつでも選べるけれど、まだ俺は選んでいないだけ」というゆるゆるとした状態を保てるため、自分と異なる選択をした同性と反目し合うほどにはならないのだ。

牛窪さんは女性心理をこう分析する。

「女性の場合は、自分の責任でこの道を選んだという思いがあり、どこかで自分を納得させなければならない。その一方で“隣の芝”を選んでいれば、もっと幸せになれたかもという思いも抱えて生きているわけです。そういう中で“隣の芝”が権利を主張してくると、『いやいや、私だってそっちを選ぼうと思えば選べたのに』とか、『本当はそっちに行きたかったのに行けなかったんだ』とか、複雑な思いでモヤモヤすることになる。そこが男性とは決定的に異なります」

女性同士の泥沼のような戦いに、どこか悲痛さが感じられるのは、こういうわけなのだ。

趣味にしても、「俺流」とは違う流派に対してそもそも興味がなく、反目しにくいのが男性。一方、女性は少女時代からブランドの好みや化粧の濃さ、愛読している雑誌が何系かなど、消費活動にさえ相手との細かな差を敏感に察知し、対立を生じさせる。牛窪さんは「現代の価値観の対立はSNSが強く影響している」と指摘する。

20〜30代半ばの世代は、物心がついたときから青春時代まで、メールやSNSを介したコミュニケーションが基本。ミクシィに始まり、趣味などを媒介として、コミュニティごとにまとまる行動をとってきた。

「女性は男性に比べ、社会的に認められる機会が少ないため、自分らしさというものをより大事にしている。しかし、自分らしさとはとても曖昧な評価軸であり、人と比べたり相手を否定したりしないと、自分を評価できないという図式になりがちなのです」

また、ヒエラルキーのつくり方にも女性ならではの特徴があるという。

「男性の場合、ジャイアンのような強くて威厳ある存在がリーダーに君臨しがちです。一方、女性たちはモテ、コミュ力、情報力などを基準として、なんとなくお互いに調整しながら協調する。女性のヒエラルキーは、その中で誰かがお金持ちと結婚していいマンションに住んだとか、子どもが名門校に入ったなんていう出来事が起こると、その均衡が崩れ、対立が露呈しやすいのです」

女性は幸せの基準も、立場の上下の基準も、とても曖昧で揺らぎやすいものなのだ。

▼あなたの身近にもある!「女子vs女子」紛争
※働く女性を対象にしたヒアリングをもとに編集部作成

1.キャリアvs腰掛け
「キャリア」の言い分
→フリーライダーは目障り。いつまで腰掛ける気か。一斉駆除したい

2.夫が高給vs夫が普通
「夫が普通」の言い分
→仕事にやる気のない同僚の夫は超高給取り。無理に働かなくていいのでは?

3.教育ママvs放任ママ
「放任ママ」の言い分
→教育ママ自身が勉強しないタイプの人だと子どもがかわいそうと思う

4.バブルvs氷河期
「氷河期」の言い分
→バブル世代の先輩の出身大学、今なら入社試験で門前払いなのに……

5.既婚vs未婚
「未婚」の言い分
→「既婚不幸せ」より「未婚幸せ」のほうがマシと自分に言い聞かせている

6.SNS投稿派vsSNS閲覧派
「SNS閲覧派」の言い分
→「事実」が書いてあっても「自慢」と感じ、いちいちイライラする

7.子ありvs子なし
「子なし」の言い分
→子どもがいる人が会社で特別扱いされていると感じ、優しく接せられない

8.片働きvs共働き
「共働き」の言い分
→優雅な専業主婦の友人が、私の仕事を羨ましがるがなんだか素直に喜べない

9.ブランド派vsエコ派
「エコ派」の言い分
→エコ=貧乏と勘違いされているようで悔しい。金以上に手間隙がかかるのに

■夫の無関心が攻撃的な妻を生む

妻という立場から女性を見ると、その揺らぎやすさはさらに増す。

「自分の評価を、子どもや夫の出来を通じてしか測れない専業主婦もいる」と牛窪さん。さらに、職場でもママ友などの地域コミュニティでも、女性同士で激烈な対立を見せる妻は、夫婦が不仲な場合が多いと続ける。パートナーからの関与や承認がないと、女性はほかの女性に矛先を向けることで自己評価を確認する傾向が強いのだ。

自己承認欲求が歪んだ形で花開いてしまうのは、寂しさゆえ、寄る辺のなさゆえともいえる。SNSはその欲求を満たす手段の好例だ。しかしSNSによって救われる人もいれば、ストレスを溜めてしまう人もいるのだとか。

「SNSでは、夫や子どもの出来にかかわらず、素敵な料理を毎日頑張って作っているというようなことが、すごいね、いいねと見ず知らずの相手からも褒められる。すると、自己肯定感が持てて、救われるという女性も多いんです。半面、今の自分には手の届かないリア充的な幸せを見せられると、ストレスを感じる場合もあります」

とはいえ、女性的な対立が起こり、太い火柱が立つのもSNSならでは。牛窪さんは「SNSでの対立は、見ている側にとてもわかりやすく伝わる。そのため、同じような立場の人たちが参戦して煽るために、火の手が大きくなって炎上していくのが特徴です」とデメリットを指摘しつつ、「そこで燃えている人たちは、同じ感覚を持つ仲間と思い、吐き出し合えてもいるんですよね」と、同時にその効用も認める。

では、対立の渦中にある女性は、どのようにして脱出すればいいのだろう。「1つ目は、仕事と家庭以外の、第3の居場所を持つことです。趣味でもボランティアでも株式投資でもいい。この場所に戻ってくると、私という一個の人格に戻れると実感できることが大切です」と、牛窪さん。第1、第2の居場所に不満があっても、同じ価値観の仲間がいたり、これがあるから大丈夫と思える別の世界を持っていたりすれば、閉鎖的な空間から自由になれるのだ。

「2つ目は、自分以外のいろいろな人に興味を持つこと。自分とは異なる価値観の人を面白いと思って観察し、理解しようとしてみることで、人間観も一段と深まります。これからの時代、価値観ギャップは女性だけでなく、男性にも確実に広がっていく問題。『女同士で揉めてるな』ではなくて、自分にも降りかかるものと受け止めてほしいです」

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▼まだまだある!「女子vs女子」
・現実志向vs夢追い志向
・フェロモン系vsさっぱり系
・都会出身vs地方出身
・実家暮らしvs独り暮らし
・仕事命派vsプライベート重視派
・ビジネスライク派vs気遣い派
・飲み派vsカフェ派
・貯蓄派vs散財派

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牛窪 恵
世代・トレンド評論家、インフィニティ代表。「おひとりさまマーケット」「草食系」が、新語・流行語大賞に最終ノミネート。11月、『独身ファーストの時代(仮)』が発売予定。

 

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(フリーライター/コラムニスト 河崎 環)