サイバー犯罪は年々増加傾向にある。そして、平成28年に都道府県警察に相談されたサイバー犯罪件数のうち51%を占めるのが「詐欺・悪質商法」となっている(警察庁「平成29年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢について」)。

 IT系のメディアを読んでいる人にとっては、手の込んだ迷惑メールは笑いのネタで、友人のSNSアカウントが乗っ取られたらすぐに気が付くかもしれない。手垢の付いた架空請求詐欺などは、完全にスルーしていることだろう。

 しかし、ご両親などのシニア層は違う。スマートフォンとタブレットの普及により、インターネットに初めて触れたシニア層が増えている。もちろん、デジタルリテラシーなどを学ぶ機会はない。しかし、自分だけは詐欺などに引っかからないという根拠のない自信はある。

 インターネットの中で絨毯爆撃のように繰り返されている詐欺行為は、当然シニア層ユーザーにも届く。それどころか、シニア層をターゲットにした詐欺手法も増えている。そして、いろいろな手法で引っかけられ、お金を振り込んだり、商品を購入したりしてしまうのだ。

 あとで詐欺だと気が付いても、恥ずかしくて子どもに言えない人が多い。途中で詐欺だと気が付いても、数万円でケリが付くなら勉強料だと考えて振り込んだりする。当然、犯罪者は取れるところからはお金をむしりに来るので、終わることはない。両親の笑顔が消え、銀行口座が空っぽになってから深刻な打ち明け話を聞かされ、絶句すると言ったケースが後を絶たない。

 ネット詐欺の手口はさまざまで、日々進化している。外国人の変な日本語を見抜けば済む時代とは異なり、想像もしない角度から多種多様な方法でお金や個人情報を引き出しに来るのだ。特に最近は、ビットコインなどの仮想通貨がらみのトラブルも急増している。

 被害金額が大きいと、時々ニュースに上ることがある。しかし、これは氷山の一角。総務省が発表している「通信利用動向調査(平成28年)」によると、60〜69歳の75.7%、70〜79歳の53.6%がインターネットを利用している。80歳以上でも23.4%が利用しており、一般的なイメージより、シニア層でも普通にネットを使っているのだ。

インターネットの利用動向。想像以上にシニア層も利用しているのが分かる(総務省「平成28年通信利用動向調査」の結果より)

 シニア層をターゲットにした詐欺行為も頻発している。国民生活センターの発表によると、2016年度にあった相談のうち、「デジタルコンテンツその他」と「アダルト情報サイト」が1位、2位となっている。増加が目立つカテゴリーとしてはトップが「デジタルコンテンツその他」で、利用した覚えのないサイト利用料の請求などに関する相談が増えたという。そして、「興信所」が第3位。アダルト情報サイトからの請求に関して依頼した探偵業者に関する相談が寄せられているという。7位には、「インターネット通信関連サービス」も入っている。

 「興信所」はどんな相談か分かるだろうか? アダルトサイトの架空請求詐欺に遭ったが、変だなと気が付いたシニア層が、金で解決できるならと探偵事務所に相談するのだ。数万円を支払うが、「詳細不明」「解除不能」といった素っ気ない報告だけが来て、状況は変わらずというケースが増加している。もちろん、これも詐欺。デジタルリテラシーがないと、往復びんたでむしられ続けるのだ。もちろん、ほとんどの興信所はきちんと対応してくれるのだが、被害者はそこまでたどり着けず、「解決保証」と謳ったお手軽なウェブサイトにひっかかってしまう。

相談件数の多い内容。2年連続で1位、2位がネット詐欺になっている(国民生活センター「2016年度のPIO-NETにみる消費生活相談の概要」より)

 知識のない人たちをターゲットにして、恥ずかしさで枷をはめてお金を吸い上げ、やっぱりインターネットはひどいところだ、と傷つけるのは許せない。1万人に1人引っかかればいいという算段で、ネット上に膨大なクズ情報をばらまくのもストップさせたい。シニア層に、きちんとしたデジタルリテラシーを持ってもらい、ネット詐欺に遭わない世界を作りたい、そう考えて我々は「ドリス(DLIS)」という団体を設立した。名前は「デジタルリテラシー向上機構」の略。「〜機構」と大仰なのは、「〜協会」だと略が「ドリア」になってしまうため。

 DLISはシニア層向けに分かりやすいコンテンツを作成し、シニア層の目にとまるところに情報を届け、デジタルリテラシーを向上するお手伝いをする。我々の所には、最新の詐欺手口の情報がたくさん集まっており、防御策や対応策をお伝えできるという強みがある。しかし、今のところ広くシニア層にアプローチするルートを模索しているところ。そこで、たくさんの人の協力を仰ぎながら、ネット詐欺を根絶していきたいという考えから、DLISは現在、NPO法人の申請をしているところだ。

「DLIS」は高齢者のデジタルリテラシー向上を支援する団体

 被害者が困るのは、金銭的なこともあるが、まず相談する相手がいないということ。特にアダルトサイトを閲覧して架空請求画面が出たときには大パニックになる。男性でもそうだし、女性の被害も増えている。両親がアダルトサイトを見ることなど想像したくないだろうが、その空気が詐欺でもいいから振り込んで終わらせたいという動きを誘発してしまうのだ。

 DLISは、この記事を読んでいる読者層が、シニア層の相談窓口になれるような情報の提供と、いつでも何でも家族に相談しやすい空気感の醸成を目指す。「ほら言ったことか」とか「なんでそんな怪しいのに手を出したの?」と責めてはいけない。あらかじめ、普通のウェブサイトを見ていても、アダルトサイトの架空請求ページが出てくることもあるよ、といった助け船を出しておくのもいい。

 そしてもう1つ、DLISも相談を受ける窓口になりたいと考えている。最新の詐欺手口を収集し、認知につなげられるし、その上で最先端の対応策をご紹介できる。さらに、無料で対応することにより、興信所とうたった詐欺行為を減らせるという目的もある。

国民生活センターの発表によると、探偵業者に依頼したトラブルの相談が急増していることが分かる

 同時に、若い人たちへも最新のネット詐欺事例をお伝えしていきたいと思う。ネットは長く使っているし、自分は平気、と思っている人ほどあっけなく引っかかる。FacebookやLINEのアカウントを乗っ取られたり、ビジネスっぽい内容のメールに添付されたエクセルやワードのファイルを開いた経験のある人もいるのではないだろうか。つい最近の2017年12月、JALは詐欺メールを受け取り、なんと3億6000万円と2400万円を2回にわたって振り込んでいる。詐欺グループの手口は恐ろしいほど巧妙に進化し続けている。世知辛い世の中だが、身を守るためにデジタルリテラシーを高めておきたいところ。DLISの活動が、そのお手伝いをできると幸いだ。

DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援する団体で、現在、NPO法人の申請中です。今後は、媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行う予定となっています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。