プログラマティック取引におけるアービトラージ(裁定取引)は、ここ数年監視されてきた。しかし、デジタル取引にはほかにも疑わしい分野があり、いまのところは監視の目から逃れている。それがデータのアービトラージと不正なアトリビューションモデリングの慣習だ。

どちらもパブリッシャーと広告主の両者に害を及ぼすものだ。匿名を条件に真実を語ってもらう「告白」シリーズの最新記事では、国際的なメディアオーナーやアドネットワークに勤務してきたデジタルメディアのベテランから話を聞いた。

本文はインタビュー内容を読みやすくまとめてある。

――メディアトランスペアレンシーのうち、広告枠獲得が不十分なのは、どの領域なのか?



メディアトランスペアレンシー(透明性)となると、誰もがメディアのインベントリのことを口にする。しかし本当に胡散(うさん)臭いのはアトリビューション測定モデルで、データは巨額のマージンが操作されるなど、怪しげな領域のひとつだ。オーディエンスデータに関わる裁定取引やマージン、正確性の欠如について、誰も口を開かない。

――第三者のオーディエンスデータということか?



そうだ。広告主はそこに関与できない。私はエージェンシーが1ポンド(約151円)で手に入れたデータセグメントを、10ポンド(約1510円)で広告主に販売した例を知っている。私はブランドセグメントを1.2ポンド(約181円)で買っていたが、広告主はまったく同じセグメントを9ポンド(約1360円)か10ポンドで購入していた。広告主にはメディアトランスペアレンシーが必要だが、アトリビューション測定モデルとデータにも透明性は必要だ。すべてのエージェンシーのトレーディングデスクは現在、メディアでの情報公開に取り組み、また独自のデータセグメントを立ち上げており、いまは誰もがエージェンシーグループのプールデータを購入することができる。そのうちどれだけの広告主データが再利用されているのだろうか? このエージェンシーデータを監査しようなど、誰も思いつかなかった。

――これを修正するには?



一般データ保護規則は、この[サードパーティデータ]に非常に大きな影響を与えることになる。データマネジメントプラットフォーム(DMP)からセグメントを購入した場合、それが本当はどんなものか、どのように知ることができるのだろうか? 誰もがメディアサプライの透明性について口にしているが、人々は世界中でソースのわからないデータに何十億とはいわないまでも、何百万という費用をデータに費やしており、そのソースを知るのは非常に難しい。

――広告主は何をすべきなのか?



広告主はパブリッシャーと直接かけ合って、自分で取引を行う必要がある。パブリッシャーには独自のメディア供給およびデータ供給サービスがある。そこで広告主はエージェシーに対し、彼らがパブリッシャーと競合関係にあることを伝える必要がある。また、交渉は密室で行われるべきではない。

――不自然なアトリビューションモデリングの例を挙げてほしい



広告主は結果ベースの測定基準で販売されているため、見るべきはCTR(クリックスルー率)ではなく売上高だ。ただ、売上高の数字さえも操作することができてしまう。メディアエージェンシーは、売上を可能な限り、自らの業績に結びつけることに関心がある。エージェンシーのなかには、モバイル広告提供1回あたりの売上高に基づいて評価されるべきで、その売上とはクライアントの製品が30日以内に売れた場合が対象だ、と主張するものもいる。こんなことは、とてもじゃないが、あり得ない。モバイル広告に対する一般的な消費者行動と一致しない。ただ、エージェンシーがどんな発言をしようと、それは彼らの勝手だ。

――非公開のメディア販売は、いまも害を及ぼしているのか?



イギリスでは、放送業者以外の動画インベントリのほとんどが、エージェンシーによって非公開で販売されている。したがって、そのインベントリを利用する一流のパブリッシャーは、望むほどの認知度を獲得することができず、また広告主に直接販売する場合と比べて、収入も少ない。これらはエージェンシーがパブリッシャーに販売を強制する直接取引だ。そこから彼らは、インベントリを自身やサードパーティが提供する動画ネットワークに入れ、広告主に販売する。クライアントもこのことに気づきはじめているが、遅すぎた感は否めない。

――そういうわけで、彼らはまだ巨額のマージンを手にしていると



私がアドネットワークにいた際、我々はエージェンシーのトレーディングデスクを相手に取引を構築していた。そこでは、標準的な広告掲載注文(直接販売)の形で購入していた。しかし、エージェンシーは広告主に対してプログラマティックバイイングであると伝えており、実際には発生しないはずのサービス料やマージンを不正に受け取っていたのだ。一般に、クライアントがプログラマティックバイイングを行う際、20%までを上限に追加費用を請求されていた。しかし、実際にはプログラマティックを利用していないとなると、エージェンシーが10%から20%のマージンを余分に受け取っていたことになる。

――しかし、状況は改善されたと思って良い?



いま、すべての大手エージェンシーのデスクが提供するものは、将来的に開示される可能性のあるものだ。しかし、それは広告掲載位置に関するものであって、価格が開示されることはない。彼らが追加費用を上乗せすることは可能で、また裏にリベート契約が隠れていても発見できない。我々は、1年に渡ってあるエージェンシーグループとリベート契約を結んでいたが、その翌年、彼らはそれをサービス契約に変更した。これは、クライアントとの契約書の規定で、返金がリベート契約の場合に限定され、サービス契約では返金がなされないと規定されているからだ。書類をほんの少し変更しただけで、彼らが広告主に返金することなく、パブリッシャーに料金を請求できる、ということだ。このことから、賢明な広告主は契約条件の変更をはじめたが、リベート契約がサービス契約に変わったことで、何百万ポンドもの代金がエージェンシーに吸い上げられている。

――誰に責任があるのか?



上級職に就く者のなかには、クライアントよりもエージェンシーの利益のために取引を構築するものもいる。それが、エージェンシーでクライアントのために良い仕事をする素晴らしい人々に、悪影響を及ぼすことになる。一般的には、エージェンシーとの営業窓口を担う人々が陥りやすいことだ。

Jessica Davies(原文 / 訳:Conyac)