女子バレーボール元日本代表の迫田さおり【写真:Getty Images】

写真拡大 (全2枚)

【連載第2回】ロンドン五輪銅メダル、「常に緊張、自信のない選手」だった現役時代

 2012年ロンドン五輪の銅メダリストであり、2016年リオデジャネイロ五輪にも出場した女子バレーボール元日本代表の迫田さおりさん。輝かしい経歴とは裏腹に、自分の力の無さに苦しみ、ジレンマを抱えていたという。約20年に及んだバレー人生を辿る連載の第2回、そんな彼女を引退まで支え続けたのは――。

【連載第1回】春高バレーがどんな大会かも分からず… 元日本代表・迫田さおり、異端のバレー人生
【連載第2回】目は毎日腫れ、体はガリガリ 迫田さおりが今明かす、SOSを出せなかった“あの時”
【連載最終回】「私はアスリート失格だった」― それでも、元日本代表・迫田さおりが輝けた理由

「選手を引退し、新たな人生を一人で歩き始めた今、仲間の大切さを実感しています。喜びも苦しみも分かち合う仲間に出会えたことが、バレーボールを続けられた理由の一つであり、一番の宝」

 2017年5月、Vリーグの東レアローズ退団と同時に現役引退を発表した迫田さおり。2012年のロンドン、2016年のリオ五輪と2大会連続で日本代表として活躍したが、「常に緊張し、自信のない選手だった」と現役時代を振り返る。

「高校時代、バレーボールが楽しかったから、『実業団でもや〜ろおっ』て本当に簡単な気持ちで入団。子どもの頃から実業団でプレーしたいとか、全日本に入ろうとか、目標をもってバレーボールを続けていたタイプでもなく、厳しい環境に入って打ちのめされました。しかも、地元を離れての寮生活。すぐにホームシックになってしまった」

 この当時、迫田自身、ホームシックで泣いている自分に気づいていなかった。「毎日、目が腫れているよ」。先輩からの指摘で初めて、そのことに気づいたというから驚く。

自分からSOSを発信できず、体はガリガリに…「私がいていい場所じゃない」

「その数日後、『頑張ろうよ』と私のために先輩が手作りのケーキを作ってきたんです。その後も、『今日は声が出てないよ』『今日は出ていたね』と、ことあるごとにチームメートは気に掛けてくれました。体育館に一歩入ればめちゃめちゃ怖い先輩が、そうやって励ましてくれたのがうれしかった。

 当初は監督や先輩たちにポンコツのように言われ、自分がチームにいる意味がないと腐ることもあったけど、愛情をもって指導してもらっていることに気づけた。本当に素晴らしいチームメートに恵まれたと思います」

しかし、「一人でいるほうが楽で、人と距離をおきたがるタイプ」という迫田は、その後も自分からSOSを発信することはなかなかできなかったという。

「東レでも全日本でも新しい環境に身を置くたびに『私には無理だ』『私がいていい場所じゃない』という気持ちになっていました。思えば、当時、リーグが始まると体がガリガリになっていた。メンタル面の影響が体に出ていたんですね」

 そんな迫田にチームメートやスタッフは「一人になるな」としつこく繰り返したという。“いっぱいいっぱい”だった彼女に、助け船は、常に用意されていた。

「私の人生は、バレーボール人生で出会ったみんなに支えられ、作り上げられた」

「昔の私は、普段からチームメートと会話をしなくても、プレーには何ら影響しないと考えていました。でも、あるときから他愛もない会話をするようになると、コミュケーションがうまくできるようになりました。チームメートに甘えるって、こんなに気持ちが楽になるんだと気づいたら、リーグに入っても痩せなくなった(笑)。ちゃんと体は反応するんですね」

 気が付いたのは選手生活も後半に入ってから。引退するわずか2年前だったという。

「そのうち、東レでも全日本でも、バレーボールと向き合うことができた。同じバレーボールでも全然違うな、こういうやり方もあるんだなぁと気づきを得て、ふと、『私、バレーボール好きじゃん』って思えました。それからは誰と話をしていても『バレーボール、大好きです!』と自信を持って言えるようになった。たった2年だったとしても、そのことがうれしかったですね」

 きっと、チームメートやスタッフが一人でも欠けていたら自分はダメだった、と語る。

「背中を押して、引っ張って、転げ落ちてもみんなが起き上がらせてくれる、そういうチームにいたからプレーを続けられました。仲間に支えられたから今の自分があり、今の考え方もある。私の人生は、バレーボールで出会ったみんなに支えられ、作り上げてもらったと思っています」

【連載第1回】春高バレーがどんな大会かも分からず… 元日本代表・迫田さおり、異端のバレー人生

【連載第1回】春高バレーがどんな大会かも分からず… 元日本代表・迫田さおり、異端のバレー人生
【連載第2回】目は毎日腫れ、体はガリガリ 迫田さおりが今明かす、SOSを出せなかった“あの時”
【連載最終回】「私はアスリート失格だった」― それでも、元日本代表・迫田さおりが輝けた理由(長島恭子 / Kyoko Nagashima)

長島恭子
編集・ライター。サッカー専門誌、フリーランスを経て編集ユニット、Lush!を設立。インタビューや健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌、WEBなどで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『肩こりには脇もみが効く』(藤本靖著、マガシンハウス)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。