ソロボーカリストの宮田悟志が2018年1月10日に、1stソロアルバム『RISE』をリリースする。このタイトルには「立ち上がる」「起き上がる」という意味があり、BREATHEとしてグループ活動を終了し、ソロ歌手として歌はもちろん、舞台や映画など意欲的に幅広い活動を続けてきた彼の心境が重ねられている。プロデューサーはデビュー当時から制作に携わってきた和田昌哉氏が担当していて、「宮田悟志だから歌える歌」にこだわったという。表題曲の「RISE」は、同級生だという東京ヤクルトスワローズの高井雄平選手が怪我から復活する姿と自身の経験を重ねながら作詞していったという。壁を乗り越え、はいあがってきた彼が、今伝えたい思いとは?【取材=桂泉晴名】

困難に向き合うことが自分の強さに変わる

――「RISE」は宮田さんにとってどんな作品になったのでしょうか。

 ファンの皆さんもグループ解散というのは、いきなり発表されて衝撃だったと思うんですけど、僕にとってもすごく大きな悲しいできごとでした。そして、悲しみを乗り越えるために、すぐ活動して歌い続けていないと不安になってしまうという心境だったんです。そこからソロになり、舞台やナレーションなど、さまざまなことにチャレンジさせていただいて。

 ボーカリストとして表現の幅が広がりましたし、いろいろなことを学ばせていただきました。どんどん活動していく中で、自分ではそれをマイナスというよりプラスに変えていけるんだと感じて。今振り返ると、すべてはこの瞬間につながっているんだと思えました。今回の1stアルバムでは舞台や映画でやった曲も収録させてもらって、自分のソロになってからやってきたこと、歩みのようなものをアウトプットで入れた作品になったと思います。

――アルバムタイトルにもなっている「RISE」の詞は宮田さんと、このアルバムのプロデューサーでもある和田昌哉さんの共作ですね。

 最初は僕が全部書いていたんです。BREATHEのことをメインで書いていたんですけど、自分が書いていくと、どんどん切ない方向になっていってしまって(苦笑)。「RISE」というテーマなのに、こんな悲しくていいのかな? と思い、和田さんに助けを求めました。

 和田さんはBREATHEのときからボーカルディレクション等をやってくださっていたので、BREATHEのこともわかっているし、僕のこともわかってくださっていて。「バランスを取っていただけませんか?」といった形で助けを求めたんです。そして、ちょうどこの制作をスタートし始めたときに僕の同級生の雄平(プロ野球選手、東京ヤクルトスワローズ所属)がシーズンの中盤くらいでケガをして、骨折してしまったんですよ。

――宮田さんと雄平さんは中学時代からの野球仲間だそうですね。

 はい。それでメールする機会がたまたまあって、「リハビリ、大変なんだよね。すごく孤独だよ」といった話を聞いていて。その話を聞いた上で、ヤクルトがシーズンの後半で残り1試合のときに、彼は復活したんです。4番で試合に出ている姿を見て、「自分と雄平の気持ちがリンクするんじゃないか」と思って。彼にとっては来年がケガからの復活のシーズンなので、彼を応援する意味での曲にしたらどうかと考えたんです。以前ファンクラブの対談で、「曲を作ろうぜ」といった話をして、それが新聞にも載ったりしていたので、ここで作らないとダメだな(笑)と思い、和田さんにも相談しました。

 最初は自分のことだけを書いていたんですけど、違うステージではあっても、雄平と自分は乗り越えていく、立ち上がっていくという思いは一緒なのかなと感じたんですよね。そういう意味でも、彼にリンクするような歌詞に少し変えて作ったこともあって、MVにも出てもらいました。

――そうすると、「RISE」は最初からだいぶ変化していった曲になるんですね。

 歌詞に関してはそうですね。それも逆にいいかなと思って。人間ぽいというか、今のリアルなものを描いていくということで。

――スポーツ選手のリハビリについては、宮田さんご自身の経験もあるとうかがいました。

 気持ちが前のめりになってしまうんですけど、それに反して体が動かないし、たぶんトレーナーからドクターストップというか「安静にしていなさい」と言われているはずなので、それがおそらくもどかしいんですよね。僕も大学4年のときにケガして、やりたいけれど思うように全然体が動かなかったという経験があるので、そのへんのことはすごくわかるな、と思いました。

 だからといって、雄平にぬるい言葉をかけられないから。「RISE」は結構、体育会系の歌詞なんです(笑)。

――確かに<どうやっても乗り越えていくんだ>というようなフレーズがあります。

 「頑張らなくていいんだよ」みたいなことは、アスリートには通用しないんです。そういう曲もありますけど、どちらかというと叱咤激励というか、「逃げるな、負けるな、乗り越えろ」みたいになる。その困難に向き合えば、いずれ自分の強さに変わるんだよ、といったことですね。体育会系な発想なんですけど、このくらいやってしまっていいんじゃないかと考えました。自分が野球を経験してきたこともあって、わかる気持ちでもあるので。

――逆にこれを書いてみて、ご自身にはどう刺さりましたか。

 自分のグループ活動終了というのがあって、すごく落ち込んで「これからどうしよう?」みたいなときが結構長かったんです。雄平もそうですけど、気持ちだけ焦っていくというか。やっぱり自分は歌い始めないと、忘れられてしまうのではないかと思って。それで、すぐソロでライブをしたんですけど、そこで2人で歌っていたものを1人で歌ったときの大変さみたいなものがすごくわかりました。挫折まではいかないんですけど、どうやって自分のソロ、宮田悟志を表現していくんだろう、というところの葛藤が始まって。

 そこから舞台やナレーション、映画等にチャレンジさせていただいて。こういう理由で舞台をやってみよう、というより、とにかく走り出していて。ちょうどMATSUさんからも「舞台やらない?」というお話を僕がソロをスタートして、すぐいただいたので、こういうタイミングで来るんだったら、何かあるんじゃないか、と思ったくらいなんです。別にそれが自分の歌に生かされるとか考えなかったですし、そのときは全くわからないですね。でも、それがのちに生かされるんですけど。いろいろ学んでいくことで、「自分にもこういう一面があるんだ」とか、「自分の歌がこれで変わったな」という実感がありました。

――アルバムを作ることによって、これまでの道のりも整理、振り返られたということもあるのでしょうか。

 そのときには感じなかったものが、「これはこういう風に繋がっていたのかな」と思うこととかもありますね。それこそ「RISE」というのは、僕が野球をやっていなかったら生まれなかった曲だと感じています。出来たとしても、もう少し生ぬるい感じになっていたと思いますし。

 この発想がなければ、ソロでここまで頑張っていないんじゃないかな。「1人でどうしよう? でもやるしかないでしょう」という。「応援してくれる人がいるし、頑張るしかないでしょう」と走り出したんです。

人が描いたものを自分の色にしていく

「RISE」ジャケ写

――今回のアルバムは別れや失うというテーマの曲がすごく多いですよね。その上で、どう立ち上がるかということにも言及していらっしゃいますが。

 これはそういうテーマのもと、作りました。僕は切ない曲が結構好きなんですけど、切ないとか悲しいと思うのは、その前に幸せがあって、それを美化するから悲しくなると思っているんです。いい思い出だったなと思うから切なくなるわけで、決してマイナスなことじゃなくて、その時間はムダじゃない。何も思っていなかったら悲しいと思わないし、切ないと感じないから、その時間はすごく有意義なんじゃないかな、と思えるんですよね。

――アルバムは「Sorry〜海になれない〜」から始まりますね。曲順にもこだわりが?

 これはちょっと斬新だと思っているんですけど(笑)。

――雄大な曲ですが、このメッセージから始まるというのはすごく意図があるのではないかと感じました。

 おっしゃってくださったように、別れから立ち上がる人、悲しみを乗り越えることで強くなっていくというメッセージ性はあると思います。

――「Sorry〜海になれない〜」はコーラスがすごく重なっていたりファルセットも使われたり、宮田さんのボーカルの魅力がもりだくさんです。

 「Sorry〜海になれない〜」について、僕は作詞を担当してくださった小竹正人さんのファンなんです。3代目とかFlowerとかのバラードといえば小竹さん、みたいなイメージがあって。自分のボーカリスト意識というか、人が描いたものを自分の色にしていくという、自分の中のテーマもあったんです。小竹さんとやらせていただいたのは初めてなんですよ。

 ずっと小竹さんの世界観を自分の色にしたいと思っていたので。1曲目というのもあるんですけど、自分で書いていない分、これは本当にボーカリストとして真価が問われる曲というか。今回、そういう曲が結構多いです。

 それを自分の声で、どうやって自分の色にしていくのか挑戦しました。さっきの話ではないんですけど、舞台と朗読をやったことでそれを学ぶというか。人が書いたものをそこで演じなきゃいけない。その感覚がすごい楽しくなったんです。

――まさにこれがさっき言われた「経験が生きた」1曲なんですね。

 はい。これは「小竹さんに頼みたいんです」と和田さんに言って、自らメールして聞いてもらって。「いい曲だったらいいよ」みたいな感じでおっしゃっていたんですけど、こうやって書いていただいたということは、いい曲だったということですよね(笑)。

――そうですね(笑)。ところでタイトルを初めて見たとき“海になれない”というのは、どのような意味があるのかなと思ったのですが。

 これは広い心を持てないということなんですよね。

――このタイトルを見たとき、いろいろ考えされられました。

 人によって解釈は違っていいと思うんですけど。本当の意味は、海みたいな広い心を持てないことへの後悔、というか。

――この曲からアルバムがスタートし、「RISE」。そして「アレコレ」からクールな曲が続きます。「アレコレ」に関しては、ガラッとイメージが変わりますよね。

 BREATHEのときはこういうオリジナルの曲がなかったんですよ。ちょっとセクシーというか、エロティックというか。和田さんの中では、制作を始めたときに、BREATHEのときよりも声が大人になっているという表現をしてくださって。新しい宮田悟志を打ち出すのなら、そういうセクシーな部分もあっていいのではないかということで。これは小竹さんに頼んだのですが、小竹さんの歌詞の中でもこういう世界観は実はあまりなくて。LDHのアーティストさんの中でも、こういう世界観はないんですよね。宮田悟志だから、書けるみたいなものを書いてくださったというか。

――和田さんが「宮田悟志だから歌える歌」にこだわったのは、そこだったんですね。

 そうですね。あとキーも結構こだわっていて。昔よりもおいしいキーが変わったんですよ。BREATHEのときはわりと2人のバランスを考えて、相方も高かったので、バランスを取って、わりと僕がおいしいところよりもちょっと高めの設定だったんですけど、今は自分で全部選べるので。わりと少し低めになっているというか。

――「アレコレ」も「Dried Flower」も色気がある曲ですよね。

 和田さんも、ちょっと大人の感じと「RISE」みたいな野球少年的な(笑)、まっすぐな面も合わさったらいいんじゃないか、みたいなお話をされていました。

「待ってて」はどうしても入れたかった

宮田悟志

――後半はBREATHEのころの名曲「待ってて」が今回収録されています。

 ちょうど1月10日のリリースの日は、BREATHEが最後のライブをやった日なんですね。それが終わりの日でもあり、僕のスタートの日であって。「待ってて」というのは、実は最後のライブで歌っていて、それ以来一回も歌っていなかったんです。僕はこのアルバムにはこの曲が必要だと思ったので、「どうしても入れたいです」と松尾潔(BREATHEのサウンドプロデュースを担当)さんにお手紙を書かせてもらったんです。そうしたら松尾さんも快く承諾してくださって。

――「待ってて」はどのような思い出がありますか。

 僕らがデビューしたときにレコーディングした曲なんですね。そこからリリースされていない曲なので、ファンの方も音源として1回も聴いたことがないんですよ。だから、2011年にデビューして、そこから1回も音源として世に出ていないので、BREATHEとしての音源はなかったけれど、ソロでは絶対これは入れたいと思いました。

――まさに「待ってて」でしたね。

 ファンの方からは「待ってました」というメッセージが多かったですね。

――そして最後は「STORY」。

 これはソロスタート時に初めて作って歌った曲なので、自分のこれからのストーリーを自分のことを支えてくれる人たちとともに、これから歩んでいきたい、みたいなことで書いた曲なので。最後は前向きに終わります。

――このアルバムでどんなことが伝わればいいと思いますか?

 生きていくなかで、悲しいできごとや悩むことは、本当に当たり前のように訪れてきます。でも僕はそれを乗り越えていくことで、人は強くなっていくんだなと、この何年かの活動で感じました。このアルバムには自分のそのリアルな気持ちを込めたこともあって、皆さんがそういう境遇にあったときに、アルバムを聴いて、ちょっとでも強い気持ちや前向きな気持ちになってもらえたらいいな、と思います。

 簡単に「頑張れ」とは言えないですけど、「私もこういう経験をした」とか、「こういう悲しいできごとがあったけれど、ここから乗り越えたいな」とか、少しでも寄り添えるアルバムになってくれたらと。「待ってて」も、大切な人を亡くしてしまったけど、それに向き合っていくことで強く前を向いていく曲ですし。生きることがテーマにもなっていると思うので。僕の生き様まで言ったら大げさですけど、そういう強い思いを感じてもらえると、一緒に前を向けるのかなと思います。