出所:自治体向け「空き地・空き家問題等への対策」に関するアンケート調査2014年/司法書士総合研究所

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■ネズミ算式に増える相続人

街中で、荒れ放題の空き家を見かけることがある。空き家となっている理由はさまざまだが、なかには、所有者が不明であるために、空き家の状態が続いているものもある。

不動産の所有者は、法務局にある不動産登記簿で確認ができる。しかし、登記簿上の所有者が死亡しているなどして、現在の所有者が不明になっている不動産も多いのだ。

なぜ登記簿に現在の所有者の名前が載っていないのか。『人口減少時代の土地問題』の著者、東京財団研究員の吉原祥子氏はこう解説する。

「日本では不動産の権利の登記は任意です。登記には手間やお金がかかるので、不動産を相続や売買で取得した人が登記の必要性を感じず手続きをしなければ、登記簿上は前の所有者のままとなり、実態とズレが生じてしまう。相続の場合は代が進むとさらにズレが広がり、誰が現在の所有者なのかすぐにはわからなくなります」

相続では“法定相続人”がネズミ算式に増えるので、解決はますます困難になるのだ。

権利の登記が任意なのは、日本の不動産登記制度がフランス法の考え方を取り入れているからだ。

「フランス法では、第三者に『ここは自分の土地』と権利を主張するためには登記を必要とする、という考え方をとっています。ドイツ法のように登記しないと権利の変動そのものが成立しないという考え方もありますが、日本では採用されていません」

■所有者把握の仕組みに課題

ところで、不動産には固定資産税がかかるはず。登記制度とは別に、行政は現在の所有者を把握しているはずだが、残念ながら所有者情報の把握の仕組みには課題が多い。

市区町村は法務局の登記情報に基づいて固定資産税を課税している。戦前は税(地租)を徴収する税務署が土地台帳で所有者情報を管理していたが、戦後は土地台帳が登記簿に一元化された。そのため相続登記が行われない不動産については、自治体の税務担当者が相続人調査を行って現在の所有者を特定し、課税をしなければならない。

「しかし、相続登記が長年放置される不動産は免税点(課税対象にならない資産額。土地は30万円、建物は20万円)未満のものも多い。課税対象にならなければ自治体が人員を割いて調査するインセンティブが働かない。事実上、後回しです」

この問題を解決するために、政府も腰を上げた。法務省は、「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会」を発足。法改正を視野に入れた議論をスタートさせる。これで問題は解決されるだろうか。

「民法や不動産登記法を見直すとなれば、議論に長い時間がかかるでしょう。この問題に、万能薬や特効薬はありません。同時に登記の手間やコストを下げたり、所有者不明の土地の受け皿を整えるなど、さまざまな対策を積み重ねていくことが大切です」

(ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=東京財団研究員 吉原祥子 図版作成=大橋昭一)