改革の大本命「VISION COUPE」

写真拡大

今、マツダの未来戦略に注目が集まっている。究極のガソリンエンジンを完成させ、今年の東京モーターショーでは2台のコンセプトカーが来場者の目をくぎづけに。

マツダが進める大改革の全貌に自動車ジャーナリストの小沢コージが迫った!

■究極のエンジン、スカイアクティブX!

マツダの勢いがスゴい! 2020年に迎える創業100周年に向けて次世代技術のぶっ込み方がハンパないのだ。

まず興味深かったのが、11月5日に閉幕した「第45回東京モーターショー2017」で発表したコンセプトカー「ビジョンクーペ」と「魁(カイ) コンセプト」。

一見すると、ビジョンクーペは前回の東京モーターショーで出したRXビジョンの続編っぽいがテイストは大違いだし、さらに市販ハッチバックサイズで出した魁コンセプトが超大胆。実用ハッチバックにはない美しさで、今までの魂動デザインの一歩先を行く作り込みレベルである。

そしてなんといってもビックリ仰天なのが2019年には実用化させると発表した新エンジン「スカイアクティブX」。海外でも「夢のエンジン」と呼ばれる次世代エンジンだ。専門的にはSPCCI(火花点火制御圧縮着火)といい、あのメルセデス・ベンツやBMWがトライしても実用化のめどをつけられなかったガソリンの圧縮着火技術。マツダはそれを見事にモノにした。

このエンジンは2012年に登場した現行の「スカイアクティブG」より燃費を20〜30%ほど改善できて、トルクは全域で10%以上、最大で30%程度の向上を実現しているそうだ。

では、どうしてこんな技術ができたのか。スカイアクティブXの開発チームを率いている人見光夫常務を直撃すると、「一種の意図的なノッキング、手なずけられたノッキングですよ」と話す。要するにガソリンを薄くしすぎたときに発生する異常燃焼=ノッキングをコントロールするのがスカイアクティブXのキモ。

というか、現行のスカイアクティブGは、ガソリンの圧縮比が10とか11だった頃に最大で14を実現。おかげで効率は一気に上がり、当時のデミオが25km/リットルの低モード燃費を稼ぎ出して、マツダのスカイアクティブG搭載車はハイブリッドキラーとなり、今の大成功へとつながっている。スカイアクティブXはまさしくスカイアクティブGの進化版であり、マツダ大改革の第2幕に突入した証拠である。

さらに2020年の創業100周年に向けた大改革はSUVにも及ぶ。昨年9月に日本へ導入した3列シートSUVのCX−8がその筆頭だ。ミニバンともSUVとも違う多人数乗用車の世界を広げようとしている。

実に思い切ったラインナップ戦略で、マツダは単なる技術進化だけでなく、デザイン、商品構成、販売からブランド構築まですべてを一新しようとしている。そしてマツダが最近よく口にする「マツダプレミアム」。この本質とはなんなのか。デザイン本部チーフデザイナーの土田康剛氏を直撃した!

■マツダプレミアムとは○○タオル!?

―東京モーターショーに出展したビジョンクーペと魁 コンセプトは、今までのマツダにはないカッコよさをまとったと思うんですが、文脈的にはどういう位置づけなんですか。

土田 まず大きな流れの話をすると、マツダデザインのビジョンを示すモデルとして、RXビジョンとビジョンクーペを東京モーターショーに出しました。

―ええ。ただ、どっちもテイストが微妙に違いますね?

土田 2015年の東京モーターショーに出したRXビジョンは艶(あで)やかなエモーショナル寄りのサイド、今回のビジョンクーペは凜としたエレガント寄りのサイド。艶がセクシーだとしたら、凜がエレガンス。つまり、次世代のマツダ魂動デザインは表現の幅を最初から広く持ちます。

―今までとは違う?

土田 今まではブランドを立てるために表現の幅をあえて絞っていましたが、魂動デザインも認知されてきたので、幅を広げましょうと。

―なるほど、戦略的だ。ところで魁 コンセプトはどういう狙いですか?

土田 コンパクトハッチバックって普通は実用性を求めるものです。

―ダサく、ずんぐりむっくりがハッチバックの基本です。

土田 でも、マツダはスモールプレイヤーじゃないですか。そこでいかに存在感を放つかって考えたときに、最もセクシーでありたいし、最もスポーティでありたいと。

―マツダはますます味であり、エモーショナルな方向に行くんですね。僕は現行のCX−3やデミオの方向性でもビックリしていて、明らかにカッコ優先です。今の日本ってホンダのフィットがそうですが、広さ優先のほうが客にウケる。でも、マツダはやはり広さよりカッコを優先する。その路線をさらに強化?

土田 マツダは「人間中心に物を作る」って考えがあり、デザインもまさにそれなんです。「走る歓び」を中心に考えるとクルマによけいなスペースがあってもしょうがない。われわれとしてはやはり人馬一体の思想が一番ですから。

―今のマツダを洋服にたとえると、グッチでもプラダでもないし、ユニクロでもない。そういう意味では今治(いまばり)タオルとかに似ているのかもしれない。質はいいけど、不当に高くはなく、タオルとしての使い心地や、タオルへの愛情にもこだわっているし。

土田 確かにそっち寄りかもしれません(笑)。

◆発売中の増刊『クルマプレイボーイ』では、2018年のイチ推しカー、コンパクトSUV最強の10台、ニッポン自動運転の実力、各メーカートップ独占インタビューetc…専門誌が書けない最新クルマ情報がアツ盛り!

(取材・文/小沢コージ 撮影/本田雄士)