旧岩崎邸庭園(「Wikipedia」より)

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 日本の製造業で、改竄の連鎖が止まらない。神戸製鋼所に続き、三菱マテリアル、さらには日本経済団体連合会会長・榊原定征氏の出身企業である東レでも品質データをいじっていたことが発覚した。

 非鉄金属大手、三菱マテリアルの竹内章社長は11月24日、子会社が製品データの改竄をしていることを2月に把握しながら、10月下旬まで問題のある製品の出荷を続けていたとして、「多大な迷惑をおかけしたことを深くおわびする」と陳謝した。

 不正は神戸製鋼所と同じ構図だが、神戸製鋼所は経営陣が把握した段階で、該当製品の出荷は停止していた。他方、三菱マテリアルは経営陣が不具合を知りながら出荷を継続していたことになる。そのため、三菱マテリアルはコーポレートガバナンス(企業統治)の面で神戸製鋼より悪質との批判が強まっている。

 神戸製鋼所の不正が明らかになり社会問題に発展したため、三菱マテリアルは仕方なく、それまで隠蔽していた不正を公表することにしたとみられる。大騒ぎにならなければ、公表することはなかった可能性が高い。

 最初に問題が発覚したのは子会社の三菱電線工業だった。三菱電線は今年2月に、社内検査で配管などのパッキングに使うゴム製品のデータを改竄していたことが明らかになった。3月に村田博昭社長ら経営陣に伝えられたが、顧客に通知したり出荷を停止するなどの措置はとられず、10月23日に出荷を停止するまで問題製品の出荷を続けていた。

 三菱電線にとどまらない。三菱伸銅では16年10月から17年10月にかけて、自動車に使われる銅合金製品などでデータを改竄して出荷。三菱アルミニウムでも基準に満たないアルミ製品を出荷していた。不正品の出荷先は三菱電線が航空・宇宙分野など229社、三菱伸銅は自動車部品など29社、三菱アルミは輸送業界など16社に上った。

 三菱マテリアルの子会社が扱う素材は鉄道車両や航空機、自動車などに幅広く使われている。英紙フィナンシャル・タイムズは「航空機大手の米ボーイングと欧州エアバスは自社製品への使用状況を調査中」と報じた。日本のものづくりの信用低下に拍車をかける結果になった。

 実は、三菱マテリアルは“2連敗”なのである。

 神戸製鋼所が納入品の品質検査データを改竄して出荷した子会社、コベルコマテリアル銅管は、三菱マテリアルとの共同出資だ。神戸製鋼が55%、三菱マテリアルが45%出資している。コベルコマテリアル銅管秦野工場は2度にわたり日本工業規格(JIS)の認証を取り消された。

●三菱金属出身者が人事を握る

 三菱マテリアルは1990年、三菱金属と三菱鉱業セメントが合併して誕生した。三菱鉱業セメントの前身である三菱鉱業は、三菱財閥の主要会社で炭鉱を経営していたが、石炭の斜陽化ととともに石油販売、建材、セメントに進出した。

 三菱鉱業セメント社長の大槻文平氏は、日本経営者団体連盟(日経連、のちに経団連と合併)の会長を務めるなどした財界の大物。三菱鉱業セメントは三菱グループの中では三菱金属より格上だった。しかし、その後、三菱マテリアルでは力関係が逆転する。

 初代社長の藤村正哉氏は三菱鉱業セメント出身だったが、2代目から現在の6代目の竹内章社長に至るまで、いずれも三菱金属の出身だ。

 不正把握から出荷停止までに8カ月かかった三菱電線は12月1日付でトップを更迭した。生え抜きの村田博昭社長が代表権のない取締役に退き、親会社の三菱マテリアルの高柳喜弘執行役員が新社長に就任した。村田氏は、この問題の原因究明にあたる。

 三菱マテリアルは10年、上場企業だった三菱電線を完全子会社にした。当初は、三菱金属出身で三菱マテリアル副社長の本間久義氏を社長に送り込んだ。社員のモチベーションの向上が大事だとして16年4月、技術系で生え抜きの村田氏をトップに据えた。ところが、スキャンダルが起こり村田氏は事実上、解任された。

 三菱伸銅も上場会社だったが08年、三菱マテリアルが完全子会社にした。13年から三菱金属出身の堀和雅氏を社長に送り込んでいる。堀氏は10月18日に問題を把握後、同日のうちに出荷を停止、19日に親会社の三菱マテリアルに報告した。その迅速な対応が評価され、現時点では“お咎めなし”なのである。

 三菱アルミニウムは16年に浜地昭男氏が社長に就いたばかり。浜地氏は三菱鉱業セメントの出身。浜地氏の前任は三菱金属出身の半沢正利氏だった。三菱鉱業セメント出身者としては、三菱アルミニウムの社長の椅子はぜひとも死守したいところだろう。

 結局、三菱電線の村田氏の退陣で幕引きをはかり、三菱金属出身者によるグループの支配が強まることになるとみられている。

 三菱マテリアルは金属、セメント、超硬工具などの加工事業、電子材料の4つの社内カンパニーがある。神戸製鋼所の時も指摘されたことだが、本社(ヘッドクオーター)では各カンパニーの問題点の把握は難しい。外部から見れば倫理に反する行為はやってはいけないことはすぐにわかるが、“組織内の論理”でいつしか不正が合理的と判断されてしまう。企業風土や、部下の上司に対する“忖度”が不正を生み出し、拡大していったとみられる。

 三菱マテリアルは12月1日付で、2人の社外取締役など5人で構成する特別調査委員会を立ち上げ、不正の事実関係や原因の究明を行い、グループ全体の再発防止策を策定するという。

 加えて品質管理の専門部署、「品質管理部」を新設したが、むしろ今まで本社に品質管理部がなかったことに驚きの声が上がっている。
(文=編集部)