米ロサンゼルス市にある(USC)「ライアン・センター」で9月23日、プロボクシングの試合が行われた。6階級制覇世界王者オスカー・デラ・ホーヤ率いる「ゴールデンボーイ・プロモーション」の定期興行で、これまで主会場はダウンタウンにある格闘技の殿堂「オリンピック・オーディトリアム」だったが、ここが韓国系の教会に買収されたため、会場を転々としているのだ。

 USCといえば、巷では学費が高いことでも知られているが、米国西部最大の規模と125年の伝統を誇る名門大学。記者は午後4時半の開場に先んじて足を運び、キャンパスのほんの一部を歩いてみたが、聞きしに勝る施設の充実度だった。84年ロス五輪で使われたプールには、当然だが巨大な飛び込み台があるし、陸上トラックは大阪長居陸上競技場第2競技場くらいの豪華さだ。サッカーフィールドに野球場…、これ以上行くと道に迷いそうだったので引き返した。

 「ライアンセンター」は、そういう体育施設が集合する一角にある巨大な体育館。1階のアスレチック・ジムでは、数え切れないほどのマシーンで、数え切れないほどの学生や学校関係者が汗を流していた。その横のチケット売り場で入場券を買う。学生証を見せると、何とたったの10ドル(約1100円)。素晴らしい!ついさっきまでサッカー場でボールを蹴(け)っていた若者をはじめ、ジャージ姿の体育会系っぽい学生たちがわんさか並んでいた。10ドルならば「ちょいと帰りがけにボクシングでも見ていくか」という気になるだろう。

 記者は前日、ハリウッドの「ヘンリー・フォンダ・シアター」で夜中近くまでボクシングを見ていたのだが、そこは客席の後ろにバーカウンターがあって、酔っ払った客がリングサイドで騒いで、セキュリティーが大忙しだった。その不健全さ(?)を見た直後だからなおさら、この日の会場は健全にみえた。

 打ち合いに大歓声は沸いても、逃げ腰のボクサーに汚い野次(やじ)は飛ばない。ラウンドガールはチアリーダー! 慣れていない感じがまた新鮮。場内で売られているのは、ホットドッグに水、コーラ類とポテトチップスだけ。ビールを売っていないプロボクシング興行は、渡米以来初めてお目にかかった…。だが、10ドルの学割チケットを買って、3ドルのホットドッグと2ドルの水を両手に持ちながら見るイベントの中味は、なかなか豪華だった。

 客席には、元世界2階級王者の人気者シェーン・モズリー、WBO世界ウェルター級王者アントニオ・マルガリート、WBCライト・フライ級王者ブライアン・ビロリアらが普段着姿で観戦していたし、セミファイナルでは世界挑戦経験者で大ベテランのベン・タッキーが判定勝ち。メインイベントは、元IBF世界ライト級王者ハビエル・ハウレギとフィリピン人ランディー・スイコの対決。スイコは、日本のボクシング・オーソリティ、ジョー小泉氏がマネージャーを務める選手で、世界挑戦目前といわれているホープ。これまで23勝(20KO)1敗というすばらしい戦績で上がってきて、今日は49勝(34KO)12敗2分の古豪ハウレギを踏み台にする−−という筋書きだったと思う。しかし、元王者はスタートからガツガツ攻めてペースを握り、途中失速したものの、最後まで完全に主導権を譲らなかった。ベテランは“戦い方を知っている”という感だった。

 日本でもかつて日大講堂、早稲田大学、山梨学院大などでプロボクシングが行わたが、また場所を提供してくれないだろうか。そしてその折は是非、学生割引を導入していただきたい。【了】