グルメな素顔を明かした葛西

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 2月9日に韓国・平昌(ピョンチャン)で冬季五輪が幕を開ける。前回の2014年ソチ五輪で、男子スキージャンプのラージヒル個人で銀メダル、同団体で銅メダルを獲得し「レジェンド」と呼ばれる葛西紀明(45)=土屋ホーム=は、世界記録を更新する8大会連続冬季五輪出場が濃厚だ。悲願の金メダル獲得を目指す“生きる伝説”を直撃した。(飯田絵美)

 2017年11月5日の全日本選手権(札幌大倉山ジャンプ競技場)の男子ラージヒルで8大会ぶりに優勝。同25日のノルディックスキーW杯ジャンプ第2戦(フィンランド・ルカ)の団体では、日本チームの一員として3位となり表彰台を射止めた。ベテランは平昌へ着実に階段を上っている。

 ジャンプは体重が成績に直結するデリケートな競技だ。葛西はときに体重管理のために、1回につき3日間ほどの『断食』を採り入れていることで知られる。

 「ベスト体重で試合(W杯第2戦)に挑みました。いま、58・5キロです。断食をした? はい、そうですね」

 11月の海外遠征中に断食を実施したと明かした。今シーズンに入ってから3キロの減量に成功している。シーズンオフならともかく、体に日々高い負荷をかけているトップアスリートが試合で戦いながら食事制限をするのは、すさまじく過酷だろう。

 「がっちりと体を絞らなきゃいけない。それを維持しなきゃいけない。おいしいものは食べられないです。おあずけです」

 ソチ五輪直後の2014年2月22日、12歳年下の怜奈(れいな)さんと結婚。料理上手でマッサージ師の資格を持ち、「レイチェル」と呼ぶ愛妻が、カロリーを抑えた特製野菜スープを作り支えてくれている。だが、地元・北海道の新鮮な海の幸や肉、乳製品を思う存分食べることができないことには、寂しさを隠せない。

 もともとワイン好きでグルメ。葛西と記者の共通の知人が都内でイタリアンレストランを経営していると伝えると、目を輝かせた。

 「彼はいまイタリアンを経営しているんですか? へー、すごいな、東京でお店をやっているなんて! もう10年も続いている? 繁盛しているんですね。彼の店、行ってみたいです。何がおいしいのか、教えてください」

 そう言って身を乗り出してきた。この知人は1年に1度イタリアを訪れ、食事に合うワインを各地から集めていると説明すると、声がひときわ大きくなった。

 「ワイン! わー、いいな! 1年に一度、本場で勉強するなんて、それはすごいですね。なかなかできることじゃないですよ。そういえば僕、ワインの名誉ソムリエとして、春に表彰されたんです! あの田崎さんからもらったんですからね!」

 普段穏やかなジェントルマンの葛西がはしゃいだ。実際、17年5月に日本ソムリエ協会による「ソムリエ・ドヌール(名誉ソムリエ)」に就任。世界的なソムリエ、田崎真也氏からメダルとバッジを授与された。

 ひと一倍体重に気を使い、断食まで敢行する男が、グルメでソムリエ。この人間味あふれる“矛盾”が興味深い。

 ジャンプ競技の大会は、ドイツ、オーストリア、ロシア、北欧などを中心に開催される。高校1年から国際大会に出場してきた葛西にとって、チーズやハムなど欧州の食事はなじみ深い。欧州産のおいしいワインに精通する環境もあった。

 今は大好きなワインも、試合後のご褒美に1、2杯飲む程度で我慢している。

 自宅にトレーニングルームを作って筋力トレーニングを行い、オフ期間も毎朝長時間走り込んだ。すべては金メダルのため。最近、スマートフォンのカバーを特注。『LEGEND KASAI』と記した。もちろん色はゴールドだ。

 「平昌には家族みんなで行きたい。金メダルを取って、子供に見せてあげたい」

 ソチとの一番大きな違いは、妻、そして1月に2歳になる長女・璃乃(りの)ちゃんという心強い味方がいること。

 8大会連続出場で、冬季五輪最多出場のギネス記録を更新する。そんな“レジェンド”に世界がひれ伏す。勝利の美酒は…もちろん浴びるほどのワインだ。