参院予算委員会で学校法人「森友学園」の国有地取得問題について質問に答える財務省の佐川宣寿元理財局長(毎日新聞社/アフロ)

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「忖度」が「インスタ映え」と並んで今年の流行語大賞に選ばれたのは、12月1日発表された『2017 ユーキャン新語・流行語大賞』(『現代用語の基礎知識』選)においてである。「忖度」は本来「人の心をおしはかって配慮する」といういい意味の言葉だったが、森友学園問題で、「上に立つ人間の意向をくみ取って、それに沿うように行動する」という悪い意味の言葉として広まってしまった。

「もはや森友問題を“忖度”という言葉で語るのはおかしいでしょう。明らかに背任であり、違法なことが行われたわけですから」

 そう語るのは、立教大学経済学部の郭洋春(カク・ヤンチュン)教授である。会計検査院は、大阪府豊中市の国有地が学校法人「森友学園」にごみの撤去費分として約8億円値引きされて売却された問題で、値引きの根拠となったごみ推計量について「十分な根拠が確認できない」とする検査報告書を11月22日、国会に提出した。

 12月9日に閉会した特別国会では、当時の森友学園理事長の籠池泰典氏と近畿財務局職員の会話を記録した2016年5月半ばの音声データを、財務省は事実上認めた。籠池氏が「ゼロに近いかたちの払い下げ」を繰り返し求め、財務局職員が「1億3000万円を下回る額は提示できない」「理事長が言うゼロに近い額まで、できるだけ努力する作業をしている」と答えている。

 財務省の佐川宣寿・前理財局長は3月、「価格を提示したこともないし、先方からいくらで買いたいと希望があったこともない」と答弁していた。「金額」と「価格」と言葉を使い分けての釈明を試みたが、財務省の太田充・現理財局長は「(佐川氏の過去の答弁が)金額に関する一切のやり取りがなかったかのように受け取られたのは申し訳ない」と陳謝するに至った。

「これは世間から見れば価格交渉ですよね。ゼロに近いかたちというのは、価格のことを言っているわけですから。森友学園への国有地売却に関する交渉のなかで出てきているわけですから、これを価格交渉と言わないでなんと言うのか。会計検査院が言うようにごみ推計量について十分な根拠もないということからしても、財務省が森友学園に特別な便宜を図ったというのは明らかです。国民から税金を1円でも多く徴収しようとする財務省が、なぜ何億円というお金をずぼらに提供したんだというようなところが、国民の不信感を増長させるとしか思えないですよ。

 適正な価格がいくらかということに関していうと、会計検査院は根拠がなく不十分だと言っているわけですが、根拠は何かといえば、財務省がつくっていたはずの資料です。『その資料を開示しろ』と要求したら、財務省は『もう廃棄しちゃいました』と言っているわけですけど、何億円という取引を計算した書類を棄ててしまうということ自体、異常なことです。これは本当に廃棄してるのか? 『実は調べたらありました』という話になるかもしれない。1年で処分していい行政文書には、『所管行政上の軽易な事項に係る意思決定を行うための決裁文書』という条件がつけられています。8億円という額は軽易ではなく膨大な額です。そういうふうに考えると、財務省が『軽易なものだから廃棄しました』というのは、公文書管理法に違反することになるのではないでしょうか。

 大いなる過失だと捉えなければいけないのに、堂々と廃棄したことを悪びれないで言っているのは、開き直りとしか思えません。実際に廃棄してしまったのだとしても、当時の担当者は売却価格を1億3000万円にしたわけですから、どうやって計算したかはわかるはずです。当時の坪単価もゴミの量もわかっているはずですから、書類がなくとも同じものを、つくらせればすむ話です」(郭教授)

●過去に前例か

 森友学園にまつわるさまざまな疑惑がクリアにされなければ、財務省の体質そのものを問題にせざるを得ない。

「もしかしたら財務省は過去にも同じようなことをやっているのではないかと、推測されるのは当然です。過去にも同じようなことやっていて、もっと多額の値引きをして国有地を払い下げて、書類は全部棄てちゃいましたということになれば、国家に相当な損失を与えていることになります。

 大阪地検特捜部が、財務省職員に対する、国に損害を与えた背任容疑の告発を受理して、捜査が始まりますが、国に損害を与えようという意図があったのかどうか、あるいは個人の利益を得ようとしたのかということを証明しないといけないので、難しい捜査です。

 昔から、ほかにもたくさんやっていれば、森友の件はワン・オブ・ゼムということになり、今回だけであれば、なぜ森友にだけ便宜を図るのかということになる。そうなれば、安倍首相夫人の昭恵さんとの関係があるから、ということでしか理解できません」(同)

 加計学園の問題と絡めて、マスコミでは「もりかけ問題」などともいわれてきた。

「加計のケースは百歩譲ったとして、一応粛々とルールに則ってやっているわけですから、法に違反してないという主張は一理ある。しかし、森友に関しては明らかに背任、犯罪をやっているわけなので、忖度という言葉を軽々に使わないほうがいい。表面的なところばかりに目を奪われてしまうと、森友問題に類するような財務局の国有地売却に関する過去の不正な事案について、蓋をされてしまいかねない。そこまで追求していく姿勢があっていいんじゃないかと思います。

 役所というのは前例主義なので、ゴミの量を多くあるかのようにしたり、重要な公文書を棄ててしまうというのも、過去にも事例があったからやったとしか考えられない。森友の件だけで終わったら、たぶん財務局はほっとすると思います。過去の財務局長や地方の財務局は、いつ自分のところに火の粉が飛ぶかもわからず戦々恐々としているかもしれません。そう考えたら、この問題だけで終わらせてしまうのはよろしくないと思います」(同)

●財務省の過失

 忖度という言葉を流行語に押し上げた森友問題だが、これまでと比べて特別国会での議論のマスコミでの扱いは小さかった。

「森友学園では、籠池泰典前理事長が積極的に出て証言しており、恩恵を受けた側が『受けました』『安倍首相と関係がある』と言っているわけですから、やっぱり非常に重大な利益誘導ということになってくるわけです。そのことをしっかりと野党もマスコミも追及すべきじゃないかと思います。便宜を与えたほうにまったく過失がないというのは、おかしな話で、本来はそちらのほうが問われるべきです。

 財務省が過失を問われないというのは、おかしな処罰の仕方です。今の安倍政権に刃向かうものにはすべて厳しく対処し、守るものについてはまったくお咎めなしというのは、国民から見ても非常にアンフェアです。籠池さんは詐欺罪で訴えられているわけですが、国に対する背任容疑のある財務省は罪をまったく問われない、あるいは問うのが難しいというのは、国民からしたら納得できません。籠池夫婦は拘置所に入ってすでに4カ月が経過して、一方の佐川さんは国税庁長官に出世しているというのは、おかしな話です」(同)

 会計検査院の報告書に対して、麻生太郎副総理・財務相は「財務省としては結果を重く受け止めなければならない」と語るに留まった。

「会計検査院というのは、まさに国から独立して公正に判断する組織であり、そこが最終的に売却額は根拠がないと結論づけたのであれば、財務省はそれを厳粛に受け止めるだけではなく、反省が必要なわけです。指摘されたことに対して徹底的に事実を解明する、きちんと説明責任を果たして初めて厳粛に受け止めるという意味になる。

 財務省の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で議論が始まって、国有財産を売却する手続きの透明性を高めるための議論をしたときに、財務省は説明責任を果たしていないという意見が出ました。諮問機関は答申するわけですから、その答申に従ってきちんと説明責任を果たすのが財務省トップである麻生さんの役割です。この審議会も中途半端に行われて、『これから透明性を高めるようにがんばります』みたいに終わってしまわないかが懸念されます。過去まで遡って、審議会がきちんと発言できるかどうか。そこは見守っていく必要があるのではないかと思います」(同)

 財務省の闇に光が当てられることがなければ、籠池夫婦はスケープゴートにされたのだと、受け止められかねない。
(文=深笛義也/ライター)