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もくじ

ー ベスト3がいよいよ決まる
ー 駆動輪の違いが雨で如実に
ー 割れるそれぞれの「推し」
ー 最後まで悩んだDB11 V8
ー 720S 雨が敵にも味方にも
ー 豊かなコミュニケーション能力
ー 911 GT3 そのまま優勝か?

ベスト3がいよいよ決まる

BBDC(Britain’s Best Driver’s Car:イギリスのベスト・ドライバーズカー)コンテストの選考初日が終わるころ、われわれは安堵感に包まれていた。ピットレーンが暗闇に包まれていくなかで、テスト・ドライブと採点は大枠で終わらせることができたのだ。

薄暮のなかで審査員が集まり、今回の成果を振り返りながら、深呼吸をした。

天候は終日悪く、テストは難航。全ての審査員は、ウェット・コンディションのカッスル・クーム・サーキットが、路面のバンプやうねりなどに気をつかわなければ思わぬ危険が潜む容赦ないコースだということを、今回しっかり理解したはず。

何とか初日は、全員アクシデントを起こさず、1台のクルマも傷付けることがなかった。そしてわれわれのプライドも。もちろん、ベスト・ドライバーズカーのノミネート車両に対しても、短い時間のなかで、充分な理解ができたはずだ。

この雨が、どんな結果をもたらしたのか。審査員それぞれのテストドライブの印象を分析しながら、少し振り返ってみる。

駆動輪の違いが雨で如実に

滑りやすい路面は、安定性に明確な差を生じさせた。

予想通り、フォルクスワーゲン・ゴルフGTI パフォーマンス・パックのようなFF車は、広い視界とともに、余裕を持って走ることができた。一方でAMG GT RやM4 CSのようなFR車は、パワーオンと同時にオーバーステアに陥り、即座にカウンターステアで対処する必要が出てくる。

そして、極めて緻密にチューニングされた、信頼できるトラクション/スタビリティ・コントロールは、これまでのコンテストのなかでは最も有効に機能したと思う。

しかし究極的には、ドライ・コンディションで得られる印象と、大きな差は生まれなかったようだ。

コミュニケーション豊かな操作フィール、ボディの挙動、上質に調整された乗り心地、パワフルでリニアな駆動系、スタビリティとコントロール性、プロポーションが高次元でバランスされたシャシー。本当の最良を見極めることは、できたと思う。

ここから最終的に3台のクルマに絞っていく。

割れるそれぞれの「推し」

わたしとしては、ドライビング・フィールとその正確性が非常に鮮明で輝いていたこともあって、シビック・タイプR GTが最終選考から外れたのは残念。

プライヤーは、500psの後輪駆動にも関わらず、その運転のしやすさから、アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオがトップ3の1台だと考えていたようだ。

プロッサーは、ケータハム・セブン420Rドニントン・エディションが持つコミュニケーションの豊さと、悪天候においても不安感の少ないドライバビリティの良さを主張した。

全て、価値のある意見だ。

結果として、4人の審査員のうち、ふたりずつ最優秀としたクルマがあり、その評価が組み合わされた順位となっている。よって、アストン マーティンDB11 V8は3位ではあるが、マクラーレン720Sとポルシェ911 GT3との順位には、決定的な差はないのかもしれない。

もし今回のテスト状況を知らない状態で、ノミネート車両11台のなかから主観的に3台のドライバーズカーをピックアップするとしたら、ある程度の推測ができただろう。でも、火曜日の朝9時過ぎの、空一面雲に覆われた雨天の日に、720psのミドシップ・スーパーカーや、カップタイヤを履いた911のサーキット仕様を選ぶだろうか。自分のクルマだったら、晴れるまで待っているはずだ。

最後まで悩んだDB11 V8

DB11 V8も最後まで悩む候補ではあった。しかし、過去の評価を振り返ると、以前に開催したイギリスのベスト・ドライバーズカー・ミーティングにおいて、アストン マーティンは総合1位ではなかった。もっと訴求力の強いV8の存在を知っていたこともあり、DB11 V12は昨年の優秀賞候補にも入らなかった。

DB11 V8は重たいV12エンジンモデルとは異なることは、すでに何度か触れている。今回の選考にノミネートしているクルマのなかでは、比較的柔らかいサスペンション・セッティングのおかげで、アストン マーティンは他のクルマよりも巧みにサーキットを周回できた。

重量のあるエンジンがフロントにマウントされ、ハンドリングやスタビリティでプラスに働いていただろうし、現代的なスポーツGTというキャラクターも、この天候には有利だった。グリップも秀でていた。

カッスル・クーム・サーキットの粗野なバンプに、悪天候のなかで挑戦するとなったら、走行ラインを妥協する以外、電子制御システムに依存せずに周回はできないと思うが、DB11は違った。

ところどころ大きな水たまりのある、長く伸びる一般道でも、ライバルたちが脚を取られるなかで、安定性を保っていた。相当なスピードでも安定しており、素直で、クルマの挙動予測も十分に可能。コーナーを選ばない、アストンの安定した走りは、大きな賞賛に値する。

フランケルは「理想的なホイールベースと重量、タイヤ、リニアなステアリングレスポンスなど、過酷な条件のサーキットでも、完璧なセットアップ」と評価する。

「フレンドリーでスムーズ。ぎこちなさもない」とプロッサーはまとめ、プライヤーは「どんなコーナーにおいても確かな信頼感があり、走りを委ねられるモデルは少ない」と記している。他のクルマと比較するほど、DB11の素晴らしさが良くわかった。

720S 雨が敵にも味方にも

DB11が、悪天候に襲われたウィルトシャー州のカッスル・クーム・サーキットで、これほどの好印象を残すとは考えていなかったが、期待の高かったマクラーレン720Sは、予想通り、天候に左右されてしまった。総合的な評価は、若干低くなったはずだ。

アストン マーティン同様、マクラーレンも工場出荷時のままの高性能なロードタイヤを装着しており、雨天を一応、処理はしてくれた。さほど速くないスピードなら、コントロールを失うことはないと思うかもしれないが、720psのマシンのドライビングを何とか支えていたのは、ミドシップの優れたシャシーによるところが大きい。

クルマの持つ強大なパフォーマンスを全て発揮することは不可能だったし、陶酔するようなエキサイトさも、すっかり奪われてしまった。しかし、極めて正確な動きで上下振動を処理しながら、しっかりとしたグリップ力を保持する、カーボンタブとリアサブフレームが生み出す安定性の高さは、注目に値するものだった。

またマクラーレンのトラクション・コントロールは、ノミネート車両のなかでも極めて効果的に機能したうえ、全てをオフにしても、恐怖感は感じられなかった。敏捷性が高いだけでなく、バランスが良いため、神経質さとは無縁。懐も深く、安全性も期待通りだった。

アクセルペダルのわずかな動きに対するレスポンスも、正確性が高くリニアなもので、ブレーキペダルの踏力や、ステアリング操舵に対しても、同様。フランケルは、クルマの穏やかなドライビング特性に衝撃を受けたようで、「限界を感じさせない旋回性能と、ブレーキとステアリングの味付けは第一級」と賞賛する。他のドライバーも同様だった。

こうなると、リアエンジンのレイアウトにカップタイヤを装着したポルシェが、どのような走りを披露したのか、疑問に思えるかもしれない。

豊かなコミュニケーション能力

ポルシェは、今回ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を履いていた3台のなかの1台。他の2台、AMG GT RとBMW M4 CSは数ラップしたが、期待はあまりできない感触だった。

AMG GT RとBMW M4 CSは何とかコース内に留まっているような印象だったのに対し、GT3はと言えば、タイヤが温まってくると、進行方向への安定性も高くなり、大きな違いが見られた。

ポルシェはここ20年ほどに渡って、911のGTシリーズを数多くリリースしてきたが、その全てが、グリップの余力やトラクションの状態が明確な、豊かなコミュニケーション力を得ていた。

それは、コントロールに対する自信につながり、性能のギリギリなのか、まだ余裕が残っているのか、把握を可能とする。だから、他のクルマのドライビングに少し疲れた状態で、わたしは911 GT3に乗り込んだのだが、この悪天候でも、ハンドリングは素晴らしいだろうと期待していた。

走り出すと、911 GT3で3周もしないうちに、カッスル・クーム・サーキットの印象が変化した。他のクルマでは感触がはっきりせず、ブレーキングしにくかった高速コーナーは、GT3なら路面状況を感じ取ることができる。

グリップしやすいライン、路面のくぼみや左右の傾き、バンプやうねりなど、マクラーレンとケータハム以外、感取できなかった表情だ。ただし、路面は滑りやすいことは十分わかっていたが、非常に賢いESPシステム(PSM)に、数回は助けられているはず。

911 GT3 そのまま優勝か?

500psを誇る911 GT3は鋭いことに違いはないが、鮮明で表情豊かなステアリングレスポンスが、若干だが柔らかくフィルタリングしてくれる。

またサスペンションは、路面状況や起伏状態を細部まで読み取らせてくれるから、スピードを上げても下げても、ドライバーの意図のすべてを、クルマが受け止めてくれる。

「素晴らしいステアリング、エンジンに加えて、クルマがどんな状況なのか、しっかり掴むことができる。全てが期待以上だ」とプライヤーはまとめた。プロッサーもGT3のエンジンを驚異的とし、ドライブトレインはこの世のものとは思えないと、讃えている。

このように、雨天と戦うことになったBBDCコンテストは、ポルシェ911 GT3が、最優秀の座を射止めつつあった。

しかしこの後、予想していなかったのだが、わずかな残り時間でカッスル・クーム・サーキットの路面が乾いてきたのだ。

ラップタイムは、その評価には影響しないという認識はあったが、利用時間の終了が迫るなか、サーキットへ急いで出て行くドライバーたち。2017年のベストなドライバーズカーを選出するのに、クルマの限界領域まで踏み込んで、完璧なテスト走行を行なう、最後のチャンスとなる。

突然、今までの足かせが外された。アストン マーティンは、ウェットコンディションでは秀逸だったが、ドライになった途端、いいクルマには違いないが、大きさと重さを強く感じさせるGTカーとなってしまった。

一方で、強烈な加速力と安定性を持つマクラーレンと、9000rpmからレッドゾーンとなる孤高のポルシェとの、サーキット・アタックによる一騎打ちとなった。

2017年のBBDC(Britain’s Best Driver’s Car:イギリスのベスト・ドライバーズカー)選考は、このように最後の最後まで、もつれることとなったのだ。

ドライバーズカー選手権2017(最終回)につづく。