VR未来塾は昨年12月13日、東京都港区にあるソニー本社のCreative Loungeでセミナー「VR編集ソフトウェアを極めるvol.1 Adobe CCのVR機能 徹底解説」を開催した。VR未来塾とは、実写のVRを中心にセミナーやイベント、ワークショップを定期的に開催しているコミュニティ。これまでにも「VRカメラ最前線 2017夏」や「タイムラプス講座」、「360°動画制作ワークフロー超初級編」、「空間音声入門」などのVRに関するセミナーを開催してきた。

今回のセミナーでは、アドビ システムズの古田正剛氏、VR未来塾主宰の染瀬直人氏、スタジオねこやなぎ代表の大須賀淳氏、Adobe Community Evangelistでビデオ担当の山下大輔氏の4人が登壇し、Adobe Premiere Pro CC 2018、Adobe After Effects CC 2018、Adobe Photoshop CC 2018のVR新機能紹介とその使いこなしについて解説。定員は70名で開催が近づくとチケットは完売となり、参加したくてもできない人もいたようだ。会場には大勢の人が集まり、VRへの注目の高さを改めて実感した。

アドビ システムズが現在研究開発中のVR機能を紹介

まず最初に登壇したのはアドビ システムズの古田氏。2017年10月にラスベガスで行われたアドビのカンファレンスイベント「Adobe MAX」で公開したビデオ製品のVRに関するスニークプレビューについて紹介した。最初に紹介したのは「Sonic Scape」と呼ばれる技術で、360°の空間上の音をビジュアルで表示してくれるというもの。これまでの360°の空間音声は耳で聞くしか確認の方法がなかったが、Sonic Scapeの登場によって映像と音の方向がずれているということも簡単に判断できて合わせやすくなりそうだ。

今秋にアップデートしたAdobe Creative CloudのVR機能について解説をするアドビ システムズの古田正剛氏「Sonic Scape」は360°の空間上の音の再生をビジュアルで確認可能な技術。音の発生している場所に色をつけて判断することができる

続いて紹介したのが「6自由度」の問題を解決した「Sidewinder」と呼ばれる技術。これまでのVRの撮影では頭を中心にパンやチルトなどの回転はできるが、カメラの位置は固定されてしまうという問題があった。「Sidewinder」は、GoogleのVRコンテンツ作成システム「JUMP」のような多視点のカメラを使って奥行きの情報をその場で生成し、6自由度の表現を可能にするというものだ。並行移動に対応して、手前のものが少しパースがついているような形で見えるようになる。

「Sidewinder」の技術を使えば、6自由度の表現が可能になるGoogleのカメラを放射状に並べた「JUMP Camera」のような多視点のカメラを使い、奥行きの情報をその場で生成

次に、2017年10月のアップデートでパノラマ編集が可能になったPhotoshopの新機能を紹介。リコーTHETAの360°で撮ったエクレクタンギュラー形式の静止画を読み込み、自動補正での調整や彩度の調整、色温度を若干調整したりできるようになった。また、暗いシーンで撮影をするとどうしても暗部のノイズが気になる場合があるが、メインメニュー→「フィルター」→「Camera Rawフィルター」の「ノイズ軽減」でノイズを抑えるという。

ノイズが目立つ場合は「Camera Rawフィルター」のノイズ軽減が使える

続いて、メインメニューの「3D」メニュー「球パノラマ」→「選択したレイヤーから新規パノラマレイヤーを作成」の選択で、エクレクタンギュラー形式をPhotoshop上でパノラマとして表示できることを紹介。撮影クルーや不要なオブジェクトが写り込んでいて消したいという場合はPhotoshopの通常の画像編集と同じで、領域を選択ツールで選んでメインメニューの「編集」→「塗りつぶし」→「内容」→「ホワイト」や「コンテンツに応じる」で自動的に消すことができるという。

エクレクタンギュラー形式であっても通常の平面の画像処理と同じように処理できる。消したい範囲を選択して、「塗りつぶし」の「コンテンツに応じる」を選択平面の「塗りつぶし」処理と同じように、エクレクタンギュラー形式でも「コンテンツに応じる」できれいに塗りつぶせた

Premiere ProでVR空間をより面白く見せるテクニックを紹介

VR未来塾主宰の染瀬直人氏

次に登壇したのは染瀬氏。まず最初にPremiere ProのVRビデオのサポートで特に注目したい3つの機能を紹介。1点目は、ヘッドマウントディスプレイを装着しながら編集が可能になったことを挙げた。アップデートで編集中にヘッドマウントディスプレイでさまざまな方向の確認ができたり、Oculus Riftのコントローラー「Oculus Touch」でタイムラインを停止、再生のコントロールが可能。特にヘッドマウントディスプレイを付けたり外したりしないで編集できることが便利と語った。

Premiere Proの編集中のタイムラインをOculus Riftを装着したまま確認可能

2点目はAfter EffectsのVRコンポジションエディターによるスタビライザーできれいにスタビライズをかけることができること、3点目はプラグイン導入による追加機能により、「mocha VR」を使えばドーリーが消せることを挙げた。

「mocha VR」のカメラリグや撮影クルーなどの消し込みができる「オブジェクトリムーバル機能」は強力だ

次に、Premiere Proに新しく搭載したVR機能の有効的な機能を紹介。そのうちの1つが、新しく搭載されたイマーシブビデオエフェクトの「VR回転(球)」で、「チルト(X軸)」、「パン(Y軸)」、「ロール(Z軸)」を搭載し、簡単に水平の回転が可能になるというものだ。VRの映像は視聴者が任意に視点を自由に選べるのが最大のメリットだが、作り手がある程度、視線を誘導したり、映像にアクセントを付けるなどの観たいところに誘導できる「VR回転(球)」はとても有効的だという。

自動的に回転ができる「VR回転(球)」エフェクト

次にPNG形式の「360°」というロゴを貼り付ける手順を紹介。新しく搭載した「エフェクト」→「ビデオエフェクト」→「イマーシブビデオ」→「VR平面から球体」を使えば、ロゴのPNGをVR空間に適した形で貼り付けることが可能。パラメーターには「ソースを回転」や「投影を回転」があり、チルト、パン、ロールが可能。ロゴに適用したエフェクトのチルトを90°に設定すると真正面のパッチが真下に貼られたり、スケールで大きさを調整することができる。

「VR平面から球体」エフェクトを使ってPNGのロゴを空間上に貼り付ける方法を解説

最後にkolor社で無償で配布されているGoPro VRのプラグインの中からGoPro VR Reframeを紹介。GoPro VR Reframeは、パン、ピッチ、回転以外に、フォーブのパラメーターでリトルプラネットという面白い映像が作れるという。インタラクティブにVRを楽しむのとは別に、360°の映像を使ってディレクターが見せたいところを指定して演出するのに非常に効果的であるとのこと。

GoPro VR Reframeを使えば惑星の上にいろんな建物などがデフォルメされたような面白い映像を作ることができる

After Effectsによるより凝ったVR空間の実現方法を解説

スタジオねこやなぎ代表の大須賀淳氏

3人目と4人目の登壇は大須賀氏と山下氏。メイキングを詳しく解説した内容なので詳細なレポートは控えるが、After Effectsを使ったVR空間の制作過程を詳しく紹介した。大須賀氏は、After Effectsの「エフェクト」→「イマーシブビデオ」→「フラクタルノイズ」でつなぎ目のない霧の作り方や、テクノの曲を使って、音のパーツに合わせてグラフィックが動く映像の制作の事例を紹介。シンセサイザーの音などいろんな方向から聞こえてきて、空間の中でグラフィックと音が連動しているという映像で、「エフェクト」→「描画」→「オーディオウェーブフォーム」でオシロスコープのような波形を使って実現したという。

「イマーシブビデオ」の「フラクタルノイズ」を使って周りをうっすら霧が取り巻いている効果の実現方法を解説した

山下氏は、After EffectsはVRコンポエディターの機能を使って撮影時に揺れてしまったVRコンテンツにスタビライズをかける方法や外部プラグインであるElement 3DのオブジェクトをVR空間の中に配置したり、最終的に書き出しのポイントなどを解説した。

Adobe Community Evangelistでビデオ担当の山下大輔氏VRコンポジションエディターでスタビライズをVRにかけることが可能

次回のVR未来塾のテーマはVRゴーグル。2018年1月19日に開催

VR未来塾は、2018年の第一弾のセミナーとして2018年1月19日にソニー本社一階にあるCreative Loungeで、「今改めて知りたい、VRゴーグル大研究」を行う。Oculus Riftを始め、国内ではGoogle Daydream、新たな展開を見せるPCレスの一体型高性能VRゴーグルなど多数のメーカーからヘッドマウントディスプレイが発売されている。そこで、改めてキーパーソンを呼んで大研究を行うという。次回以降のVR未来塾の詳しい詳細については、下記の公式ページを参照してほしい。

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