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■なぜあえて気づかないようにしているのか

他人から見れば明らかにおかしい労働環境なのにもかかわらず、働いている当人は、「ブラック方針」を妄信していることも多いもの。目を覚まさせるには、どうすればいいのでしょうか。

6ステップに分けて具体的に見ていきます。1つめは、「受け皿」の問題です。どういうことかというと、目を覚ますことができたとしても、その後に逃げ込める「安心できる場」がなければいけないのです。

むしろ、ブラック方針を逃れた先の精神的な受け皿や、次の勤め先という物理的な受け皿がないからこそ、怖くて辞められない、方針に従うしかない状況が生まれている。家族・同僚が精神的な支えとなるか、別のいいプロジェクトや、働き口があるか。方針がブラックなことに、あえて気づかないようにしている人を救うには、受け皿が必要なのです。

2つめに、ブラック方針を出す側との「コミュニケーションを断つ」こと。会社や上司などとの上下のコミュニケーションを妨害しないと、いつまでも冷静になれず、目を覚まさないままになってしまいます。

では、受け皿になったり、コミュニケーションを断ったりできるのは誰か。3つめが、説得する側に信頼性と専門性が必要だということ。信頼性とは、「この人は嘘をつかない」と思われる相手であることです。家族や友人、他の上司や同僚など、関係を築いている人がいいでしょう。

対して、専門性とは、知識を持ったプロ。つまりコンサルタントや、別部署、別の会社のもっと成功した人間です。ブラック方針がどうブラックなのか、否定できるだけの専門性のある人が説得すること。もし違法な労働環境なら、労働問題に詳しい識者や弁護士など、より「権威ある」情報を提供できる人に説得を依頼することも求められます。

■方針を出す人の「権威を失墜させる」には

権威という観点で見ると、ブラック方針を出す人の「権威を失墜させる」という4つめの方法もあります。妄信している人に異常性を気づかせないといけないので、「あの会社の言うことは○○の受け売りだ」「あの人の資格や肩書は実は大したものではない」など、相手が欺瞞、詭弁を使っていると理解させるのです。

5つめとして、「仲間を用意する」ことが挙げられます。妄信から目を覚ました人や、妄信していない人を、当人の周りに置く。ブラックな環境では得てして、間違いやおかしいことを「周りのみんながあたり前に思っているから」と多数者効果が生じています。つまり、妄信者ばかりになって、異常さに気づけなくなっている。そうなると、冷静な誰か1人が一言指摘するだけでは効果は薄い。異常を指摘する「仲間」が当人の周りにたくさんいてはじめて、考え方は変わるのです。

ここまでくれば、あとは「自分で調べてもらう」ことです。他人から説得されるだけでは、また別の会社や上司にそれらしい話をされれば、コロッと信じてしまう。心の整理をつけるのは、最後はその人自身の役目。自己検証をすることで、ブラック方針に従うのはバカなことだと、目を覚ますことができるのです。

(立正大学心理学部教授 西田 公昭 構成=伊藤達也 写真=iStock.com)