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●第4次産業革命において、企業は顧客に価値ある情報の提供を

Salesforceは2017年、かねてからの目標である売上高100億ドルに到達する。創業19年、エンタープライズ・ソフトウェアのベンダーとしては最短での100億ドル達成だが、日本は世界を上回るペースで伸びているという。

セールスフォース・ドットコムの代表取締役会長兼社長を務める小出伸一氏は、「日本企業の変化が始まったことを肌で感じている。ポートフォリオ拡大により、お客さまを支援できる材料が増えた」とさらなる成長に向けて目を輝かせる。本稿では、小出氏に日本市場を中心に事業概況、2018年の抱負などを聞いた。

--2017年を振り返って、どのような一年だったか?--

小出氏: 全世界の売上高は10億ドル規模になり、エンタープライズ・ソフトウェアの企業としては最短で100億ドルに達した企業となる。1999年の創業以来成長を持続しているが、その中で日本は世界の成長を上回るペースで拡大している。このように、成長という面で見ると良い年となった。

また、社員数が1200人を超えた。3年半前の現職就任時は500人未満だったので、倍以上に増えたことになる。加えて、企業としての認知度が高まっていることも感じる。主要な業界のトップ企業がSalesforceをメインのプラットフォームとして採用いただいていることも後押ししていると思う。

--好調さの背景には何があるのか?--

小出氏: これまで進めてきた戦略が身を結んだと感じている。

内部においては、製品のポートフォリオが全世界共通であり、戦略的に投資している領域がきちんと伸びた。日本企業はカスタマイズを好む傾向があると言われるが、われわれはCRM、SFAといったアプリケーションをそのまま提供するという方向に舵を切っている。それにあたり、エンドユーザーの経営陣にアプローチしているが、デジタルトランスフォーメーションのためのツールとして選ばれる例が増えている。当然、1件あたりの受注規模も拡大している。並行して平行して、大阪、名古屋、九州、北海道など地方への注力も進めた。

外部においては、お客さまのクラウドファーストが進んだ。これまで運用・保守にコストの7割を割いていたが、新規事業などにコストを振り向けるべきだと、意識が変わってきているようだ。ここ2〜3年、お客さまがクラウドを使うことに積極的になってきたと感じる。

このように、内部と外部でうまくいったことが結果につながったのだと分析している。

--今年の「Dreamforce 2017」(Salesforceが米サンフランシスコで開催する年次イベント)でSalesforceのCEOであるMarc Benioff氏は現在を「第4次産業革命」と表現した。この時代において、企業は何をすべきか?--

小出氏: 日本におけるコンピュータの歴史を振り返ると、メインフレームが企業の効率化を進め、PCが個人の生産性を高めた。現在はモバイル、ソーシャル、IoT、AI、クラウドとさまざまな技術があり、より社会インフラに近いところを変えている。これらの技術を使いながら、ビジネスモデルを変えるというのが第4次産業革命の流れと言える。

その流れの中で企業が求められているものは、顧客への価値提供だ。顧客は企業のホームページ、ソーシャル、口コミとさまざまな情報を得ることができる。言い換えれば、情報武装をしているというわけだ。そうなると、企業は顧客が知っている以上の情報を提供しない限り、振り向いてもらえない。

かつて、米国の消費者は車を購入する時にディーラーのところに7〜8回通い、情報収集をして相談して決めていた。しかし現在は、ディーラーに通う回数は平均1.5回であり、話している内容は車の下取りやローンだ。つまり、販売員にファイナンシャルプランナーのような要素が求められている。

インターネットが普及し、スマートフォンのアプリ、ソーシャルサービスなどで企業は顧客とつながることができる。このように顧客情報を多く収集していながら、利活用できている個人情報は実に1%にも満たないと言われている。実際、企業やブランドとつながっていると満足している顧客の比率は3割にも達していない。つながっているといってもギャップがある。このギャップを埋めることが、戦略上の差別化になる。

--膨大な情報から整理して処理を自動化したり、次のアクションを提案してくれたりするという点で、AIは人間の手助けになるのか?--

小出氏: AIはすべてを解決するものではない。AIは30年ぐらい前から存在し、別の言葉で表現されていたこともある。営業スタッフに対してアクティビティを教えるようなフロントエンドで利用するものもあれば、ビッグデータを駆使するデータマイニングのようなものもある。どこに使うかが企業戦略となるだろう。

--Salesforceは「Trailblazer」(先駆者)というコンセプトを打ち出しているが、どのようなメッセージが込められているのか?--

小出氏: イノベーションを起こす人、変革をリードする人、パイオニア的で新しい世界を切り開く人――このような意味を込めて、「Trailblazer」という言葉を使っている。パートナーの中にいるかもしれないし、ユーザーにいるかもしれない。社内にいるかもしれない。経営者、開発者もそうかもしれない。明確な定義をしているわけではないが、いろいろな人たちが「先駆者」になりうると考えている。

われわれはそのような人たちをリスペクトし、トラストし、ともにビジネスを作っていきたい。そういう人たちが新しいエコシステムを作るかもしれない。それが重要なのだ。

--「Trailblazer」は、Salesforceのエコシステムの拡大に欠かせない存在ということか。--

小出氏: 市場が小さなところで奪い合いをしてもしょうがない。クラウドの市場全体を拡大するために、エコシステムを作り、大きくしていくことに取り組んでいる。世界でも日本でも、クラウドの効果を体感した人たちが増えている。

●使い続けてもらうため、顧客に寄り添ったビジネスモデルを

--SAP、Oracleなどもクラウドに注力している。世界でも日本でも競争が起こっているが、これら競合をどう見ているか?--

小出氏: クラウドに対する不安が払拭され、価値の理解が進んだ。使えるところはクラウドを使おうという機運が高まっているが、「この領域はオンプレミス」「あの領域はクラウド」と使い分けていくことになると思う。

企業はクラウドを採用する際に、仕様やスペックだけで決めるということはない。クラウドの難しさは、使い込んでいただかなければ価値が出ないという点にある。そうなると、クラウドでの実績が豊富で、利用が進む中で問題が出てきた時にサポートや解決ができるという総合力でベンダーを評価すると考えられる。

クラウドのビジネスはPCやサーバを売るのとは違う。使い込んで初めてビジネスの変革につながるなどの価値が出て、それを体感してもらうのがサブスクリプションビジネス。解約せずにずっと使っていただくというのは大変なことだ。そのため、当社は、売り込み時のエンジニアよりも、ポストセールスのエンジニアのほうが多い。お客さまによるクラウドの使い込みを支援し、結果が出るところまで一緒にやるという踏み込んだモデルを取っている。

われわれのサービスは世界15万社に使っていただいており、そこで生じた課題や問題を共有することで早期解決を実現している。これは当社の差別化の要因になっていると思う。

--CEOになって3年半が経過した。前職の日本ヒューレット・パッカード(HPE)とどのような違いがあるか?--

小出氏: Salesforceは創業20年に満たない企業なので、成熟した企業であるHPEとの比較はできない。時代背景も違う。

今、従業員が3年半で500人から倍増するなど、一番成長している時に経営の舵取りをしている。クラウドという新しいテクノロジーも、日本ではやっと浸透し始めたところだ。成長、そしてイノベーションを起こす側であるという2つの点が、この会社の醍醐味だと思う。

--2018年はどのような目標を掲げているか?--

小出氏: 世界レベルでは、成長を加速させるためにさまざまなアクションを取っている。今年のDreamforceでも、製品ポートフォリオが拡大していることを感じてもらえたと思う。これまでBtoBのCRMの会社というイメージだっただろうが、Eコマース企業、デジタルマーケティング企業などを買収し、BtoCの領域にも拡大している。BtoBからBtoCまでトータルなプラットフォームを提供する会社を目指して、ここ数年戦略を進めてきており、2017年はそれが結果として現れたと思う。2018年は、それを加速する年になるだろう。

日本でも、デジタルマーケティングは堅調に伸びている。デジタルマーケティングとEコマースでBtoCのCRMを展開するとなると、「顧客情報をきちんと管理しよう」「コールセンターも整備しよう」など、新たな施策についてマルチクラウドでデザインするという事例が増えている。われわれはポートフォリオを拡大したことで、お客さまを支援できる範囲が広がっており、「デジタルトランスフォーメーションをやりたい」という時に、支援できる材料が増えた。2018年はこれを実行に移していく。