アンテナショップ「ピエトロドレッシング」の「ベジデリビュッフェ」(筆者撮影)

ドレッシングといえば、生野菜にかける調味料。そうした認識も、最近では変わってきているようだ。福岡県が本拠地のピエトロはレストラン業とドレッシング・ソース製造販売事業を営む企業。“ドレッシングは万能調味料”をうたい文句に、ドレッシング消費の拡大を狙っている。その情報発信拠点となっているのが、有楽町・交通会館内に2012年から運営しているアンテナショップ「ピエトロドレッシング」だ。毎日午前11時〜午後3時までのベジデリビュッフェや、「1時間でラクラク料理が学べる」料理教室などユニークな取り組みで注目が高まっている。

ドレッシングだけでも16種

ピエトロといえば、オレンジ色のフタのドレッシングを思い浮かべる人も多いだろう。スーパーなどでも定番商品として必ず並んでいる。しかしこれは東側の人の認識。本拠地である九州地方など、西側ではドレッシングだけでも16種というバラエティに富んだ商品群がピエトロのイメージらしい。


ピエトロといえば、オレンジ色のフタのドレッシングだと思っているのは東側の人の認識!?(筆者撮影)

「ドレッシングを作っているメーカーは600社以上あり、種類となるとさらに多くなります。その中でも、定番として消費者の皆様に知られているのが、キユーピーさんのごまドレッシング、リケンさんのノンオイル、そして当社の和風しょうゆです」(ピエトロ食品事業本部東日本営業推進課課長の岡野順子氏)

同社ではこうしたピエトロドレッシングの、特に東京における認知をもっと高めたいという狙いがあった。そこで2011年9月、創業30周年イベントとして、六本木ヒルズで5日間の期間限定ショップをオープン。予想以上の反響があり「こんなに品ぞろえがあるんだ」「常設の店も出してほしい」などと来店客から声が寄せられたことなどが、アンテナショップ設置の直接のきっかけとなった。翌年4月、有楽町での開店とともに、当時、茅場町にあった東京オフィスも交通会館へ移転するなど、アンテナショップによるマーケティング・PR活動を本格的に開始。なお、2011年にはタレントの佐々木希氏を起用し、全国でのCM放映もスタートしている。以後毎年新作CMを発表しており、2017年のコンセプトは“全国でいちばんになりたい”。「九州ではいちばんのピエトロ。秋田ではどうですか?」「私たちは知らないよ」といった会話が秋田弁で交わされている。

このCMでも紹介されているが、ドレッシングの用途はサラダだけではない。さまざまな調味料をバランスよく組み合わせていることから、ドレッシング1本で料理の味付けができてしまうのだという。

時短のニーズに応える万能調味料

「伝統的な和食の調味料の“さしすせそ”(砂糖、塩、酢、しょうゆ、みそ)のうちみそ以外は全部入っています。これを加えるだけで味が決まるので、時短のニーズに応える万能調味料なんです」(岡野氏)

時短、つまりより短い時間で料理できる、また味付けに失敗したくない、というニーズが高まっており、ドレッシングだけでなく、1本で味付けができるさまざまな調味料が各メーカーから発売されている。そのため現在では調味料とドレッシングの境目がなくなってきている時代だという。そもそも、ノンオイルドレッシングは原材料表示のうえでは「ドレッシングタイプ調味料」なのだそうだ。

そして「ドレッシングは万能調味料である」という認識をさらに広めるべく、同社が行っている取り組みが、アンテナショップにおけるベジデリビュッフェや料理教室だ。

ベジデリビュッフェは、ランチの時間に行っているサービスで、9種の料理が75分間食べ放題で、831(ヤサイ)円(税抜)。飲み物やスープは別で、それぞれプラス100円(税込)だ。ビュッフェで提供される料理は、ピエトロのドレッシングを知ってもらうことや、家庭で実際に作ってもらえるようにとのコンセプトで考案されており、野菜が中心で、味付けはドレッシングだけでなされている。2カ月ごとに入れ替わるメニューのレシピはすべて、営業推進課の社員が考案しているそうだ。その中心となる奥多佐知子氏は、もともと同社の商品開発を担当していた経験から、ドレッシングに込められた開発者のこだわりや、使い方についても熟知。調理師の資格も有している。


料理教室の様子(写真:ピエトロ)

「塩やこしょうも基本的に使いません。だから失敗することもないし、時短になります。旬の野菜を取り入れながら、すぐにご自宅で作っていただけるようなレシピを考えています」(奥多氏)

並んでいる料理を見ると、野菜中心だがバラエティに富んだ品ぞろえで、彩りも美しく食欲をそそる。アンテナショップを訪ねたのが12月半ばだったこともあり、根菜を使った料理や焼き野菜のサラダなど、体を冷やさないようなメニューも気配りされている。炊き込みご飯などの主食も並ぶ。

また料理が並ぶカウンターには、「かける」「和える」などとその料理の調理法がパッと見てわかりやすいようアイコン化したイラストを表示している。さらにレシピを掲載した持ち帰り自由のレシピカードも並べられている。いずれも、材料は多くても5〜6品程度、手順も1〜3工程で済むような簡単な料理だ。

「実際の生活者の視点でレシピを考えています。ですから、たとえば葉野菜が高い時期のための、乾物を使った料理なども加えているんです」(奥多氏)

ひじきや切り干し大根というと伝統的な和食のイメージ。確かにヘルシーで、ストックしておけばいつでも使えて便利なのだが、味付けや調理法が限られており、食のバリエーションに欠ける。

そこで奥多氏は、ひじきと切り干し大根を洋風のサラダに仕立てた。ひじきと切り干し大根を水で戻して、人参、ゆでた枝豆と一緒にし、「焙煎香りごま」をかけるだけ。簡単だし見た目もカラフルで、子どもも喜びそうだ。


左がイートイン、右がテイクアウト(筆者撮影)

ビュッフェでは、9種類をちょうど盛りつけられるよう、9個のマスに分かれたプレートが準備されている。見た目よく盛りつけようとするとちょっとずつしか乗らないが、何度でもお代わりしてよいそうだ。

「1度目は全種類を食べて、2度目は気に入ったものだけを盛って、というお客様が多いようです。さらに、『この料理をうちでも食べたい』と思ったら、料理に使われているドレッシングを購入していかれます」(岡野氏)

なお、このデリビュッフェはテイクアウトもOKだ。同じように9種類のマスに分かれた容器に詰め放題で831円。あらかじめ盛りつけられたものも販売されていて、こちらは600円と300円だ。


営業時間4時間のうち4〜5回転と、ほぼフル回転の状態(筆者撮影)

評判のほどはというと、平日は80人程度、土日は100人程度と、かなり繁盛しているようだ。席数はテーブル席も含め26席なので、営業時間4時間のうち4〜5回転と、ほぼフル回転の状態。ただし、この取り組み自体はPRが主たる目的。実際の利益という形では、業績アップにはつながらない。

「女性客が圧倒的に多いですが、男性のお客様が1人でぶらっと入ってこられることもあります。あとは近辺で働く外国人も多いです。ベジタリアンで『野菜が食べられるのでうれしい』と、休日に来ていただいたこともあります」(岡野氏)

こちらのベジデリ、野菜が中心でヘルシーなのだが、心配なのが、塩分とカロリーだ。野菜だからと食べすぎると、塩分と油分を取りすぎてしまう可能性もあるので注意しなければならない。

「確かに、ドレッシングのニーズとしても健康志向が高まってきています。そのため油を50%、70%とカットしたタイプやノンオイル、減塩タイプなども発売しています。また、最近では油についてもお客様の認知が高まっていて、質のよい油は、野菜との組み合わせによっては少量取ったほうがよいことを知ってらっしゃいますね。エキストラバージンオリーブオイルを使用したものも発売しています」(岡野氏)

賞味期限の短いピエトロドレッシングだからこそ

実は、ピエトロのドレッシングの最大の特徴が、加熱処理を行わず、作りたてのフレッシュな味わいを重視していること。そのため賞味期限も3カ月程度と、他社(8カ月から1年というものもある)より短い。いくら上質な油でも、熱や光を当てると酸化劣化してしまう。これを踏まえ、同社でも遮光性の高い緑色ボトルが採用されるようになった。

「賞味期限の短いピエトロドレッシングだからこそ、おいしく使い切れるようなレシピを、ビュッフェや、料理教室で紹介しています」(奥多氏)

料理教室は月に1度のペースで、午後4時から、午後6時からと回を分けて行っている。参加費は1000円で、1時間のうち、前半の30分が料理デモンストレーションに、後半30分が試食タイムにあてられる。定員は20人だが、非常に人気で、毎回、30人ほどは参加があるそうだ。

講師は社員である奥多氏が務めるとはいえ、1000円で料理が学べ試食できるだけでなく、お土産にドレッシングがもらえるという、参加者にとってはかなりお得な料理教室となっている。ここ数回はJAや都道府県とのコラボレーション企画で行っており、食材をコラボ先に提供してもらえるので、受講料を安くできているそうだ。コラボ先にとっては、地元の食材の新しいレシピ開発や、宣伝をしてもらえるという面でメリットがある。

「前回行ったJA長野さんの料理教室では、『きのこの鍋料理以外の食べ方を考えてくれ』と宿題を出されました」(奥多氏)

偶然ではあるが、同社やアンテナショップが入居している交通会館には、テナントとして県のアンテナショップが複数入っているほか、近隣にも県のアンテナショップが多数ある。このことによって料理教室の開催がスムーズになっているという。

事業とアンテナショップの取り組みの関係

では、こうしたアンテナショップの取り組みは、実際に同社の事業にどのように役立っているのだろうか。

「『ここに来ればピエトロ商品の全種類がそろっている』ということで、ピエトロのファンを増やしていきたいと思っています。またお客様との直接の接点の1つとして活用しています。月に3000人の方が訪れますので、お客様の声をヒアリングし、商品開発に生かしています」(岡野氏)

前述のエキストラバージンオリーブオイルを使ったドレッシングや、『フライドオニオン』のような、サラダ用のトッピングなども、ヒアリング結果を取り入れて開発した商品だという。また、ドレッシングのアンテナショップは珍しいのか、テレビ番組などに取り上げられることも多くなり、結果として商品の宣伝につながっているそうだ。

「理想は、ここでの取り組みをスーパーなどの流通にリンクさせていくことです。たとえば、レシピのペーパーを置いてもらったり、調理デモをすることなどです。最近ではスーパーでも、『クッキングスタジオ』といったデモンストレーションスペースを設けるところが増えています。そういったスーパーで取り上げてもらう方法もあります」(岡野氏)

調味料のメーカーなどが、自社ホームページでレシピを紹介したり、レシピ本を発行したりといった流れは以前からある。同社の取り組みは、そのリアル版といえるかもしれない。消費者が実際に料理を味わい、学ぶことができ、食の楽しみが広がる。JAや都道府県と連携をとって行っていることも、生産者と消費者を結ぶ意味がある。結果として、食の安心・安全を意識したり、食生活の大切さへの気づきにつながるかもしれない。外食や中食へと移行し、家庭でほとんど料理しない人も増えているなか、ニーズに合わせた商品を生産販売するだけでなく、食の大切さを伝えていく姿勢も、食にかかわる企業に求められるようになる。