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外国人の接待を命じられたが、英語には自信がない……。そこで気落ちするのは、まだ早い。接待が成功するかどうかは、英語力以外の部分にある。国際的な宴会での「仕切り力」でトップクラスを自負する著者が、宴席で外国人との距離を一気に縮める技を伝授する――。

■何より重要なのは事前の情報収集

外国人の接待を命じられたら、とりあえず寿司を食べに連れていけばいい。安易にそう考えているとしたら、その接待は失敗する可能性大です。

外国人接待で何より重要なのは事前の情報収集です。学生の頃、海外の客人を食事に連れていくことになったときの話です。先方はベジタリアンだと聞いていたので、私は肉を出すお店を避けて、寿司店へ連れていきました。ところが彼は魚もダメだった。ベジタリアンといっても、完全菜食の人もいれば、魚は問題ない人もいます。その確認を怠ったため、相手を喜ばせることができませんでした。

特に注意したいのはアレルギーです。聞いてみると、ピーナッツアレルギーの人は想像以上に多い。店側への問い合わせも必須です。アレルギーのある食材が隠し味に使われる場合もあるので、念には念を入れて確認すべきです。

相手の好き嫌いも聞いておきたいところです。「外国人は自己主張が強いから、食べたいものがあれば向こうから言ってくるはず」という先入観は捨ててください。普段ははっきりモノを言うアメリカ人でも、招かれたときは遠慮する場合も多々あります。こちらから「寿司とステーキ、イタリアン、どこがいい?」と選択肢を提示するほうがいいでしょう。

■吉田茂は高官接待に、天ぷら屋を使った

事前に情報収集できなければ、メニューが多い店が無難です。私も急場のときはホテルのビュッフェや居酒屋をよく使っていました。

接待の場ではスマホはありがたい味方です。「What would you like to drink?(飲み物は何にしますか)」程度の簡単なフレーズは覚えているかもしれません。ただ、寿司ネタの鯖を英語で説明するのは難しいはずです。そうした場合もスマホにグーグル翻訳アプリを入れておけば慌てないで済む。「サバ!」と音声入力すれば「Mackerel」と出てきます。

メモとペンも持参したいところです。聞き取れない単語の綴りを書いてもらったり、絵や地図で説明してもいい。視覚情報で補えば何とかなります。

入店後に座る位置も重要です。テーブルかカウンターかを選べるなら、おすすめはカウンター。対面すると緊張しますが、隣なら相手の目を見ずに済むのでお互いに気楽に話せます。かの吉田茂も、外国高官の接待には銀座の天ぷら屋を使ったといいます。おそらく吉田茂もカウンターのリラックス効果を知っていたのでしょう。

なかでもおすすめは、寿司店のカウンターです。最近は英語を巧みに使いこなす寿司職人が珍しくなくなりました。築地や銀座など外国人観光客が多いエリアのお寿司屋さんに、馴染みの店をつくっておきましょう。

ただカウンターの難点は、人数が多いとコミュニケーションが取りづらくなること。4人以上ならテーブル席、できれば個室のほうが聞き取りやすくていいと思います。

■「失礼」を避ける、セーフティネット

いざ接待が始まったものの、会話が続かなくて困った経験のある人もいるでしょう。しかし、その原因を自分の英語力に求めるのは間違いです。話が盛り上がらないのは十中八九、話題選びがヘタなせいです。

ベストセラーになった『国家の品格』(藤原正彦著)は私が好きな本なのですが、その中でロンドン駐在の商社マンが得意先の英国人とディナーしたときの話が紹介されています。相手は「なぜ元寇は2度起きたのか」と日本の歴史について質問。商社マンは答えられず、以後は相手にされなくなったそうです。著者はこのエピソードから教養の大切さを説きたかったようです。しかし、私の見解は少し違います。ディナーの席でもっと気軽に盛り上がれる話題はたくさんあります。にもかかわらず、難易度が高い政治や歴史の話を相手にさせてしまったら、その時点で盛り上がっていないのだと思います。

では、盛り上がる話題とは何か。まずは、日本の観光情報です。来日中の旅程を聞き出して、どこで何を食べるといいのか一緒に探してあげると、それだけで軽く1時間は盛り上がれます。相手が新幹線で京都に移動するなら、「右の窓側の席を取ると富士山がよく見えるよ」と教えてあげればいい。

箸の使い方指南も鉄板のネタです。身振り手振りを交えながら教えることになるので、英会話が苦手でも間違いなく盛り上がります。

なお、会話中は、つねに笑顔を心がけましょう。日本人相手でも笑顔は大切ですが、相手が外国人の場合はとくに重要です。こちらがよかれと思ってやったことが、違う文化から見たらじつは失礼にあたるケースがあります。万が一失礼なことをした場合でも、笑顔でいれば悪気がなかったということが伝わりやすい。笑顔は、異文化コミュニケーションのセーフティネットなのです。

■実はアメリカ人も、カラオケが好き

宴席の終わりには、何か手土産をプレゼントしてもいいでしょう。私がよくあげていたのは、100円ショップで売っている寿司ネタのキーホルダー。お子さんがいると事前にわかり、阪神タイガースのキャップをプレゼントしたこともあります。かさばらない小さなサイズのもので、帰国後に話のネタになるものがいいと思います。

2次会はケースバイケース。時差ボケで疲れている人も多いので無理強いは厳禁です。元気が余っているようなら、カラオケに連れていってもいいかもしれません。アメリカにもカラオケ店はありますが、アジア系の人がいくものだと思われていて、一般的な娯楽になっていません。しかし、アメリカ人も歌うことが嫌いなわけではありません。最初は恥ずかしがって遠慮するものの、ビートルズの曲を入れて「一緒に歌ってくれ」とマイクを渡すと、そのうち気持ちよく歌い始めます。これまで外国人をカラオケに連れていって盛り上がらなかったことは1度もない。ぜひお試しを!

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▼外国人接待・7つのポイント
1:アレルギーへの配慮
可能な限り、アレルギーには配慮しよう。相手の好みが事前にわからない場合は、ホテルなどのディナービュッフェにして自分で選んでもらう方法もある。
2:意思疎通グッズ
音声で入力・翻訳できる翻訳アプリは、強力な武器になる。ペンやメモも、英語力の不足をカバーするのに役立つ。
3:接待場所
少人数であれば、お互いの声が聞き取りやすいカウンターもおすすめ。
4:話題
日本の観光情報や習慣などは鉄板ネタ。箸の持ち方を知らない場合は教えてあげるのもいい。新幹線に乗る人には、富士山が見える側の席のチケットを取るようアドバイスしてあげよう。

5:2次会
その場の雰囲気によって、カラオケに誘う方法もある。ほとんどの外国人は尻込みするが、まずは自分が歌い、次は英語の歌を入れて一緒に歌おうと誘い……とリードしてあげよう。

6:表情
笑顔を絶やさなければ、万一、不得意な英語で相手に誤解されても、悪意はないことが伝わり、最悪の事態は避けられる。

7:手土産
手土産の習慣がない国が多いが、値段が高くなくても喜ばれるものがある。

 

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児玉教仁(こだま・のりひと)
グローバル アストロラインズ社長
1972年、静岡県生まれ。三菱商事を経て2006年ハーバード大MBA取得。11年にグローバルアストロラインズ社を立ち上げ、イングリッシュブートキャンプを主宰。著書に『ハーバード流宴会術』(大和書房)。
 

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(グローバル アストロラインズ社長 児玉 教仁 構成=村上 敬 撮影=落合星文 写真=iStock.com)