2018年は思いのほか平穏な年になりそうだ。良好な米国経済を背景に、日本の景気は堅調に推移するだろう。輸出産業を中心に株価も上昇トレンドが継続となる可能性が高い。

 問題は2019年以降である。消費増税、所得増税と増税プランが目白押しとなっており、消費にとってはマイナス要素が多い。しかも世界景気の循環は2019年頃にピークアウトする可能性が高く、日銀が2018年中に量的緩和策の見直しに動くことも十分に考えられる。

 基本的には楽観的なスタンスで大丈夫だが、市場は常に現状の先を行くものである。場合によっては2019年以降の経済を折り込む形で、2018年中に相場が崩れ始める可能性もある。過度な楽観は禁物だろう。

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好景気でも実感できない人が多い

 2018年の景気を見通すためには、まず現状について整理しておく必要がある。

 四半期ごとのGDP(国内総生産)成長率が7期連続でプラスを記録するなど、このところ「景気が良くなっている」との声が高まっている。一方で、皮膚感覚として景気の拡大を実感できないという人も多い。

 数字上、景気が拡大しているのは事実だが、その主な理由は、好調な米国経済を背景に製造業の業績が拡大しており、設備投資が増えているからである。しかし、製造業の多くは、現地で最終製品を組み立てる「地産地消」の体制にシフトしており、かつてのように日本からの輸出が大きく伸びるわけではない。

 企業経営者は、稼いでいる地域の従業員の昇給を優先するため、業績が拡大しても国内の賃金はあまり上昇しない。その結果、経済が拡大しているにもかかわらず、消費が活性化しないという状態が続く。これがGDPの数字と生活実感にギャップが生じる原因である。

 消費の低迷は、GDPの数字を細かく見るとよりハッキリする。2017年7〜9月期については、輸出や設備投資の増加で全体はプラス成長となったが、個人消費はマイナス0.5%とボロボロだった。これは4〜6月期の伸びが大きかったことの反動なので、各四半期を平準化すれば消費はわずかなプラスである。

 整理すると、好調な米国経済を背景に企業の業績が拡大しており、それに伴って日本経済はある程度の成長を続けているが、大半の消費者には恩恵がないといった状況である。

基本は株高円安基調

 では、こうした状況をベースに2018年について考察してみよう。世界経済は米国が主導する形で堅調に推移しており、この流れは2018年も継続する可能性が高い。米国では大規模な減税法案の実施が決まり、これが施行されると米国経済にさらに弾みが付くことになる。

 北朝鮮や中東での有事といった不測の事態が発生しない限り、米国経済が鈍化する理由はほとんど見当たらない。日本の製造業の多くは、北米市場に大きく依存しているので、米国経済が堅調に推移すれば、日本企業の業績も同じように拡大するだろう。

 株式市場はこうした状況を先取りして動くことになるので、2018年の早い時期に、もう一段の株高が実現するかもしれない。為替についても、大きな変動は起きないだろう。

 税制改革によって米国経済は拡大するが、今のところインフレ懸念が生じるほどではない。FRB(連邦準備制度理事会)の利上げは4回程度と予想されており、日米の実質金利差は拡大傾向となる。基本的な流れとしては緩やかなドル高・円安となる可能性が高く、これも日本の株価を後押しする。

 株高が高所得者の消費を増やすことは経験則的に知られているし、日本人従業員の昇給が抑制されているとはいえ、企業の業績拡大が続けば、ある程度までなら賃金も上がる。2017年と比べれば、消費は少しは改善しているかもしれない。

 トランプ大統領が就任した当初は、米国が極端な保護貿易に走るのではないかと懸念された。実際トランプ政権はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの離脱を行ったが、貿易実務で大きなマイナスが出るほどの動きにはなっていない。経済界はトランプ氏の奔放な発言からは一定の距離を置くようになっており、トランプ氏のツイッター発言で市場が乱高下するリスクも低くなった。

 ただトランプ氏はイスラエルの米国大使館をエルサレムに移転するなど、少々キナ臭い動きも見せている。日本にとっては北朝鮮問題が地政学上の最重要課題だが、米国ではあまり報道されておらず、米国民の関心は高くない。だが中東問題は時に米国社会全体を揺るがすインパクトをもたらす可能性がある。中東問題がどのように推移するのかについては、注意を払っておく必要があるだろう。

2019年以降は波乱要因が目白押し

 このように2018年は平穏に推移する可能性が高いのだが、残念なことに、この状況がずっと続くとは考えにくい。2018年とはうって変わって、2019年以降は波乱要因が目白押しだからだ。

 2019年10月には消費税10%への増税が控えている。2017年12月にとりまとめられた2018年度税制改正大綱では年収850万円を超えるサラリーマンの増税が決まったが、このプランは2020年から施行される。2019年以降は、個人消費に逆風が吹き続けることになる。

 世界景気の動向も2019年以降は不確実性が高い。現状の景気拡大は短期的な循環によるものだが、これは2016年の夏をボトムとしている。短期循環は3年程度になることが多いので、2019年あたりにピークアウトする可能性が高い。そうなると、世界景気が下降局面に入って日本企業の業績が頭打ちになったところに、消費増税や所得増税が加わる形となる。

 もっとも2019年は東京オリンピックの前年であり、政府としては、ここで景気が腰折れしてしまうことは何としても避けたいはずだ。場合によっては緊急経済対策などが実施され、オリンピック開催までは景気を持たせることも十分に考えられる。だが、景気を意図的に持続させれば、当然、その反動も大きくなる。過度な景気対策が実施された場合には、その後の落ち込みについても警戒が必要となるだろう。

 では2018年中は、あまり景気動向を気にしなくてよいのかというとそうでもない。

 市場は先を織り込んで形成されるものであり、2019年以降の低迷が大きいと市場が判断した場合には、相場が崩れる可能性もある。

 日銀も微妙な状況に置かれている。現在の政局が続けば黒田総裁は続投となる可能性が高いが、日銀は量的緩和策の継続をめぐって決断を迫られており、2018年中にも何らかの政策変更があると予想する専門家は多い。これらが同時に進んだ場合、市場の雰囲気は大きく変わっているかもしれない。

日銀はすでに舵を切っている

 量的緩和策は年間80兆円のペースで国債を買い続けるという政策だが、現時点において、すでに国債の買い入れペースは年間60兆円程度まで減少している。つまり、日銀はすでに事実上の出口戦略に舵を切っているのだ。その意味では、仮に日銀が名実ともに出口戦略を表明しても、大きな混乱は発生しないだろう。

 しかしながら、量的緩和策を名実ともに見直せば、金利を低い水準で張り付かせておくことは今よりもずっと困難になる。急激な金利上昇は起きないまでも、じわじわと金利が上がった場合、これが景気に対して引き締め効果を及ぼす可能性は否定できない。また金利が上昇すれば政府の利払い費も増え、予算での大盤振る舞いもできなくなってしまう。数年というタームでは、日銀の政策変更がもたらす影響は大きいはずだ。

 結局のところ2018年は、2019年以降に備えるための年と考えるべきだろう。

 まずは世界景気の拡大がいつまで続くのかについて冷静に見極める必要がある。景気変調の兆しが少しでも観察されるようなら、それが日本に波及してくるのも時間の問題である。過度な楽観は禁物である。

 もし日銀が出口戦略に舵を切るということになれば、最終的にはこれも景気を冷やす要因となる。一方、日銀が緩和策を継続すれば多少の延命は可能かもしれないが、副作用もまた大きくなるだろう。世界景気の動向と金融政策については要注意である。

筆者:加谷 珪一