ドナルド・トランプ大統領(以下トランプ)の右腕と言われた前主席戦略官スティーブ・バノン氏(以下バノン)にインタビューした。

 ここではバノンに直接聞いた話だけでなく、以前の言動も踏まえて、特筆すべき点をいくつか記し、今年のトランプ政権の総括としたい。

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解任されても100%トランプ支持

 1つ目はロシアゲートの真偽である。

 ロシアゲートは昨年の大統領選にロシア政府が介入し、トランプ選挙対策本部と共謀した疑惑のことである。バノンに真偽を問うと、「完全なフェイクニュースだ」と断言。共謀どころか、ロシア政府が大統領選に関与したことすら認めなかった。

 米国の17諜報機関はすでにロシア政府による大統領選への関与を結論づけているが、バノンは逆に「関与したという報告書を読みましたか。そんなものはないのです。誰も読んでいないのです」と反論した。

 元CIA(米中央情報局)長官を含めた複数の政府高官が議会でロシア政府の関与を証言しているにもかかわらずだ。

 バノンは解任された後も、「100%トランプを支援している」と言い切るほど熱烈なトランプ支持の立場を崩さない。そのためトランプ批判は全く口にしなかった。

 現在も数日ごとに電話で連絡を取り合う関係であり、2人の絆は周囲が思っている以上に強い。ロシアゲートはバノン流の言い方をすれば「でっち上げ」でしかないという。

 しかしトランプ陣営からはすでに4人が起訴されており、トランプは窮地に立たされているかにみえる。しかもロバート・モラー元FBI長官が特別検察官に任命されて以来、捜査は深度を増した。

 今度も逮捕者が出る可能性は高い。というのも、問題の核心はまだベールに包まれたままだからだ。

 バノンは9月、米ジャーナリストとのインタビューで息を飲むような発言をしている。

 「コミー長官を解任したことは近代政治史上、最大のミスだった」

 どういうことなのか。近代政治史上という大げさな表現を使っている。

語るに落ちたFBI長官解任劇

 トランプがジェームズ・コミー前FBI長官を解任したのが5月9日。それまでコミー氏がマイケル・フリン前大統領補佐官のロシアゲートの関与を捜査していた。

 フリン氏はすでに起訴されたが、トランプはコミー氏を解任すれば、ロシアゲートの捜査を終わらせられると踏んでいたかにみえる。

 ところが結果は逆だった。司法省がモラー氏を特別捜査官に任命したことで、ロシアゲートの捜査は本格的に始動したのだ。

 バノンは、モラー氏の捜査が始まってしまったことがトランプにとって「最大のミス」と認めたに等しい。これはまさしくロシアゲートがクロということである。

 さらにインタビューで目を開かされたのは、バノンとトランプの思想的共通点である。

 2人が出会ったのは2010年までさかのぼる。トランプは当時、すでに大統領選への出馬を考えており、バノンに助言を求めていた。トランプは2012年の大統領選に出馬する意向だったが、共和党からミット・ロムニー候補が出ていたので出馬を見送る。

 バノンはトランプに最初に会った時のことを昨日のことのように覚えている。

 「カリスマ性があり、人間的に魅了されました。しかも鋭い直感を持った人です。大統領候補(当時)としてこれほど魅力にあふれた人は会ったことがありません」

 バノンとトランプは、米国の新しい保守主義について語り合っている。それまでの共和党主流派とは違う、反エスタブリッシュメントで、反エリートの意識こそがこれからの保守派の有権者を動かす考え方になるとの点で一致していた。

前政権の成果を次々破壊

 それはまた、バラク・オバマ政権で築いてきた政治成果を破壊することでもあった。バノンはこれ以上はっきりと述べられないと思われるほど明確に言った。

 「私はストリート・ファイターだ。それはトランプさんも同じです」

 叩かれても殴られても、拳を握って立ち向かう姿勢を携えていると目を輝かせる。バノンはトランプにも同じ気質を見いだしていた。さらにこうも言った。

 「私は破壊者です」

 それがトランプ政権誕生後、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)を離脱し、NAFTA(北米自由貿易協定)を見直し、パリ協定からも離脱し、オバマケアを撤廃するという動きにつながっている。前政権の成果をことごとく破壊しているのだ。

 中東和平の頓挫にもつながる。イスラエルの米国大使館をエルサレムに移転することで、和平は今後数年遠のいたかにみえる。

 まさに破壊者としての行動と呼んで差し支えない。それが「アメリカ・ファースト」という考え方につながるが、来年以降米国の孤立化は避けられないだろう。

 さらにもう1点、語ったのが北朝鮮問題である。バノンは主席戦略官を解任される2日前、「(北朝鮮問題に)軍事的解決策はない」と公言していた。

 交戦によって「ソウルで1000万人が死亡するという問題を解決できない限り、軍事オプションは意味をもたない」と述べている。

 解任された理由の一端は、北朝鮮に聞かれてはいけないトランプ政権のこの本音を漏らしたことにある。

政権の本音をばらし解任される

 トランプ政権の表向きの北朝鮮政策は圧力をかけ続けることであり、軍事攻撃も辞さないという威圧の継続である。米韓軍事合同演習もその一環だ。

 軍事圧力をかけ続けることで、金正恩書記長に核兵器とミサイル開発を諦めさる意図がある。だが軍事行動では解決できないという、トランプ政権側の本音をバノンは漏らしてしまったわけだ。

 筆者とのインタビューではこう述べた。

 「解決にはとにかく中国が重要な役割を担っています。中国の力なくして北朝鮮問題を解決させることはできないでしょう」

 けれども今夏、バノンは中国に対して懐疑的な見方をしていた。

 中国共産党はコントロールフリーク(すべてを制御したがる)であり、通貨からフェイスブック、政治活動まであらゆる分野をコントロールしてきたというのだ。だが北朝鮮だけはコントロールできていない。

 そのため今後も中国共産党が北朝鮮をコントロールすることは無理だろうとの見解だった。バノンが軍事攻撃を最悪のオプションと考えているかぎり、トランプも北朝鮮に軍事攻撃する可能性は低いと思われる。

 興味深かったのは、バノンが国家安全保障会議(NSC)の他の補佐官と確執があったことだ。

ホワイトハウスは楽しめなかった

 インタビューで「私はチームプレーヤーではないので、ホワイトハウスでは(仕事を)楽しめなかった」と率直な感想を述べた。

 それまで組織のトップとして仕事をしてきた人物だけに、高官の1人として意見を調整することの難しさを感じていたようだ。

 それでもバノンの主導で、トランプは特定国からのイスラム教徒入国禁止やパリ協定からの離脱、TPPからの離脱などを実施した。その点についてバノンは述べた。

 「最終的に決断したのはトランプさんであり、私ではありません」

 最後までかつてのボスを立て、サポートする態度は変わらなかった。来年もホワイトハウス外にいる最も親密なアドバイザーであるはずだ。

筆者:堀田 佳男