太永浩氏=(聯合ニュース)

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【ソウル聯合ニュース】2016年に脱北して韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使は2日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が元日に発表した今年の施政方針に当たる「新年の辞」について「相当な手間をかけ、研究したと感じた」とし、故金正日(キム・ジョンイル)総書記や金正恩氏の過去の新年の辞と比較すると、今年の新年の辞は相当戦略的で細分化されていると評した。韓国情報機関・国家情報院(国情院)のシンクタンク、国家安保戦略研究院で行われた聯合ニュースとのインタビューで話した。

 以下は太氏との一問一答。

――北朝鮮は平昌五輪への参加によって何を得ようとしているのか。

 「金正恩は新年の辞で、韓国に対しては対話と平和を呼びかけ、米国を威嚇し、中国に対しては北朝鮮が核・ミサイル挑発を中止し、韓米が合同軍事演習を中止するという中国の提案を受け入れた。北の核問題を解決しようとする3大軸である韓国、中国、米国をそれぞれ揺さぶり、対北制裁協力を壊そうとする金正恩の具体的な考えが含まれており、冬季五輪は金正恩の戦略的意図を実現するための一つの手段にすぎない」

――北朝鮮が中国の提案を受け入れるとはどういうことか。金正恩氏は今後どのような形で米国との交渉に乗り出すのか。

 「米国はもちろん、北朝鮮もこれまで中国の主張を受け入れなかった。しかし、今回金正恩が『北と南はこれ以上情勢を激化させるのをやめよう』と言ったことは非常に意味がある。北朝鮮はこれまで朝鮮半島情勢の悪化の責任は米国と韓国にあるとしていた。ところが今回『北と南』という表現を使ったのは、南にも北にも責任があるということだ。結局は中国の主張を北朝鮮が受け入れたのだ。北朝鮮が中国に『われわれが中国の主張を受け入れたのだから、こちらの要求を受け入れて米国とこの問題を解決できるように対話を取り持て』と求めたものだ」

――金正恩氏の意図に、北朝鮮制裁の緩和を狙う側面もあるのか。

 「昨年、北朝鮮の相次ぐ挑発に対して国際共同体が対北制裁・圧力で協力を強化し、このままでは北が長く耐えられない状況になりかねない危機を招いた。そのため金正恩としては平和な環境作りを掲げ、自分の首を絞めている対北制裁を個別につぶしていこうという意図がある」

――北朝鮮は平昌五輪を糸口に南北経済協力の拡大まで望んでいるのか。

 「現在、北朝鮮は四方八方から制裁を受けており、突破口が見えない。現時点で北朝鮮と交流して協力するという国は韓国しかない。だから北がこのような要因を利用し、対北制裁(打開)の突破口を開こうとするのは当然のことだ」

――今回の平昌五輪に北朝鮮の崔竜海(チェ・リョンヘ)党副委員長や金正恩氏の妹、金与正(キム・ヨジョン)党宣伝扇動部副部長(党中央委員)などの要人が参加する可能性は。

 「金正恩が(新年の辞で)平昌五輪についてあれだけの話をした。北朝鮮では指導者の言葉は『至上命令』だ。そのため(北朝鮮代表団が)来るのは確実だ。(代表団の構成について)崔竜海か金与正かという具体的な状況については予測できない。だが金与正のような血のつながった家族を韓国に送るのは、金正恩としては大きな賭けだ。金正恩が妹を平昌に送る賭けをするだろうか。ただ今回の新年の辞で、金正恩が北朝鮮の指導者として分断後初めて『血を分けた民族として同胞の慶事を共に喜び、互いに助け合うのは当然だ』と述べた。平昌五輪に小規模な代表団や選手団を送るのであればこれほどの表現は使わなかっただろう。そのため以前のような美女応援団でなくとも、五輪開会式などに芸術団を送る可能性がある。北朝鮮としては韓国国民に対して民族の慶事を共に喜び、一緒に祝おうというイメージを最大限作りだそうとするだろう」

――対北制裁が今年の北朝鮮経済に相当な影響を与えるという見方が多いが、どの程度の打撃があるか。

 「対北制裁が与える影響はかなり大きい。金正恩の新年の辞や最近の細胞委員長大会でも、反社会主義現象との闘争を重要視している。これは北朝鮮内部の結集力に問題が生じている証拠だ。今年この問題を克服できるとは思わない。北朝鮮は反社会主義現象と資本主義要素の拡大の遮断を叫んでいるが、その方向に進まなければ制裁に対応し人民生活や経済活性化の問題を解決できないからだ」

――近ごろ金与正氏の地位が上昇したと言われているが、現在担っている役割はどのようなものだと考えるか。

 「私が北朝鮮にいた16年まで、金与正は党宣伝扇動部行事課長だった。しかし宣伝先導部の核心は、北朝鮮住民に対する洗脳教育だ。これまで党副委員長兼宣伝扇動部部長のパク・グァンホがその仕事をしていた。そのような仕事をするには相当な知的水準でなければならない。しかし金与正はそのようなレベルではないとみている。金与正を積極的に推しているのは、妹を高い地位に据えたがっている金正恩の強い意向を反映しているだけで、金与正が北朝鮮内部で大きな役割を果たしているとは思わない」

――金正恩氏の異母姉、キム・ソルソン氏が大きな役割を担っているとの主張もあるが。

 「キム・ソルソンは金正恩や金与正よりずっと年上だが、彼女が北朝鮮社会で一定の影響力を持っていれば、私が北朝鮮にいる時にすでにうわさになっているはずだ。金正恩の叔母の金慶喜(キム・ギョンヒ)が労働党国際部課長として勤務していた時や、金与正が金正日の死亡直後の12年に党宣伝扇動部に出勤した時もすぐにうわさが立った。しかし私は一度もキム・ソルソンがどこかに出勤したり何かの仕事をしたりしたという話を聞いたことがなく、そのような主張には懐疑的だ」