クールジャパンという言葉が日本ではちょっとはやっているらしい。例えば日本のトイレ文化が結構クールであるとか。お祭りや温泉文化も必ず選ばれる定番だろう。韓国はどうか。写真は韓国・ソウル。

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クールジャパンという言葉が日本ではちょっとはやっているらしい。例えば日本のトイレ文化が結構クールであるとか。お祭りや温泉文化も必ず選ばれる定番だろう。韓国はどうか。

クールコリアという言葉はこちらでは今のところは使われていないが、もしクールコリアは何と聞かれたら、私としては「オンドルの家」を挙げたい。

昔ながらの“本物”のオンドルの家は今はほとんどなくなってしまい、人々が住むマンションの部屋は、床暖房は床暖房だが、これは本物のオンドルではない。床板の下にパイプを巡らして、その中にボイラーからの温水を循環させ床全体を暖める仕組みだ。

本当のオンドルというのは、アグンギといわれる「土かまど」で木をくべてその熱と煙が通っていく時のぬくみを利用して、床全体、家全体を暖めるステムだ。火気がかまどから床下の通路を通って煙突に抜けていくわけだ。

アパート・マンション全盛となる以前は、韓国の住宅はすべてこの昔ながらのオンドル式だった。故にほとんどは1階建ての家であった。家の基礎を造る段階からこの火気の通っていく通路つまり「オンドル」の工事を進行することになる。家ができた後でちょこちょことやるのではない。できた後では、ほぼ不可能に近い。

現代のマンションの床暖房は、ボイラーで沸かしたお湯を床板のすぐ下に張り巡らせた直径2センチほどのチューブを循環させる方式である。見た目にはオンドルと似ているから、普通はこのマンションの部屋を「オンドル」の部屋と言ったりはする。でも本物ではない。本物ではないが、ボイラーとチューブの接続、そしてそれをコントロールするスイッチ系統などのシステムは見事というしかない。すごくよくできている。感心することしきりだ。

ちなみにオンドルは「温突」という漢字となる。モンゴルや中国あたりでも同じようなものがあったようだ。ここ朝鮮半島では、記録に残っているものは古くは5世紀ごろからあるようで、8、9世紀ごろ主に渤海(ぼっかい)という朝鮮半島の北部地域の国で広く使われていたようだ。朝鮮半島全体に広まるのは10世紀の統一新羅の頃からとみられる。

ところで最近、こちら韓国で本物のオンドルの家がそこはかとない流行になっているらしい。本格的なものはもちろん高価だが、昔ながらの本物のオンドル方式で作った注文式の小ぶりな家がはやりだ。

注文してから2週間くらいでトラックで運ばれてくる。締めて2000万ウォンから4000万ウォンくらいで買える。日本円で200万円から400万円くらい。もちろんそれほど安い買い物ではないが、完全な家であることを考えるとかなりお買い得ではないだろうか。

しかも部屋の壁は黄土(ファント)塗り。環境に優しく体にも優しい。あの土色の中にいれば、心も穏やかになること間違いない。特に雪の多い北海道や東北地方の人々にはお薦めだ。今住んでいる家があって、周りに畑などの空間があれば、そこにトラックで運んできて設置してくれる仕組みだ。生活用品は母屋に置いておき、離れ的な存在としてこのオンドルの家を設置する。ちょうど日本の茶道でよくみられる茶室といった感覚と言えば理解が早いかもしれない。韓国からコンテナに積んで運べるかどうかは分からない。

日本で新たな事業として始めれば結構行けるのではないかと筆者は考えている。友達にアドバイスしているが、「おっ、それやろう」という人間はまだ名乗りを上げていない。早い者勝ちだと思うのだけれど。

■筆者プロフィール:木口政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年〜現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。