2017年はデジタルメディアにとって厳しい1年となった。多くのパブリッシャーは年間売上目標を下方修正し、格安で売却されたパブリッシャーもあった。

米DIGIDAYはディスカバリー・コミュニケーションズ(Discovery Communications)の持ち株会社であるグループ・ナイン・メディア(Group Nine Media)のCEO、ベン・レーラー氏に話を聞いた。これらパブリッシャーの何が問題だったのか、そして同氏はこうした失敗を回避するために何を行っているのか。またレーラー氏は、いずれFacebookはパブリッシャーとともに繁栄する道を模索するようになると考えており、その理由を語った。

なお、以下のインタビューは内容を明瞭にするため若干の編集を加えている。

――ここ数週間で、BuzzFeedは収益目標を下方修正し、マッシャブル(Mashable)は売却された。これについてどう思うか?



デジタルメディア各社が頭打ちになり、問題を抱えて売却に向かっているという筋書きで語られることが多いね。ただ、去年私たちがグループ・ナインを立ち上げたときはポジティブに見られていた。大規模ではない独立系のパブリッシャーを取り巻く厳しい環境は知られていたし、ますます厳しくなるように思われていたからだ。結局最後にものを言うのは規模だ。私たちは統合の時代へと向かっている。そんななか中小規模のパブリッシャーとして生きていくのは難しい。なぜならば、そもそもパブリッシャーとはあれば便利だが、必須な存在ではないからだ。

――いま、デジタルメディアにとってのチャンスは存在するだろうか?



いまでも新しいブランドを築き上げるような輝かしいチャンスはある。だが、それには時間はかかる。まず業界のなかで、アップダウンを乗り越えて生き残り続けなければいけない。たとえばテレビ業界も長い暗黒時代をくぐり抜けてきた。だがそこを乗り越えれば、人々に受け入れられた存在になれる。会社は成長するほど使える資本は大きくなっていく。BuzzFeedやVice Mediaが売上目標を下方修正したことでひどく叩かれているが、期待値の問題もあるだろう。まるでシリコンバレーのテック系企業のような期待を抱いている人もいるようだ。会社が成長していくなかで、運営上のミスをすることもある。だが、テレビ業界だって、いまだに成長を続けているんだ。広告業界はゆっくり進んでいるんだよ。

――そのような現実離れした期待から距離を置くにはどうすれば良いだろうか?



ひとつの方法は、パートナー選びだ。数字の羅列だけじゃなくて、この業界のことを理解している人たちと組むのが大切だ。当社も従来のベンチャーキャピタルだけではなく、昔ながらのメディアとデジタルメディアを同じものとして見てくれる既存のメディアとも組んでいる。

――あなた自身もベンチャーキャピタルのレラー・ヒッポー(Lerer Hippeau)で投資を行う立場にあるが、誇大広告が行われているのはどういった分野だろうか?



VRやフィンテックといった投資家が喜ぶ分野は、実に乱高下が激しい。投資の世界で困らされるのは、こうした誇大広告からくる不安定さだ。VRが過大に広告されていた時期は完全に過ぎ去ったね。これからVRで何かしたいと思っている人にとっては大変だろう。今月の流行りが、FacebookやGoogleに対抗できて、より小規模で直販を行うオーディエンスにリーチしたり、形のある商品を販売したりする分野だ。FacebookやGoogleはいずれ世界中を食い尽くしてしまって、誰も生き残れない。だから、とてつもなく高級な商品を生み出し、独立して生きる道を探すほかない、と考えているんだ。

たしかに、Amazon、Facebook、Googleの3社はあまりにも強力だ。だけど、いずれ時間が経てば、自身のパートナーも繁栄できるような環境を醸成する取り組みが、この3社にとっても重要になってくる。短期的に見れば、この3社にとって重要なのは、自社のプラットフォームで最高品質のコンテンツを提供することだ。けれど、Facebookで広告を売っている広告主にとって重要なのは、品質やコンテクスト、エンゲージメントであって、そのためには優れたコンテンツが必要となる。いまのところ3社から入ってくる収益は大きくないが、時間が経つにつれて増加すると踏んでいる。

――テレビ業界に進出したいと話していたが、進捗はどうだろうか?



迅速に進めているよ。予想より時間がかかっているわけではないが、良い題材を製作まで進めて放送日を決めるまでのスピードは、デジタル業界とはだいぶ違うのは確かだ。

――Facebookの動画タブ「Watch(ウォッチ)」がパブリッシャーに収益をもたらせるように、いますぐできることはあるだろうか?



それはプラットフォームの話になるだろう。Facebookはパブリッシャーのために最大限の努力をしていると思うが、パブリッシャーにはいろんな事情がある。政府がらみや広告ビジネスでの圧力とかね。1日ですべてが変わるとは思っていない。だが、小さな動きとはいえ、パブリッシャーにとっては大きな一歩と呼べるような動きも実際に起きているんだ。

――広告を売るときにブランドセーフティはいままでより重要な要素になっているだろうか?



そんなことはない。重要なのは楽観視することだ。私たちはブランドにとって、とても安全な場所だよ。私たちは消費者の利益を中心に考えている。1年半ほど前にナウディス(NowThis)に女性のエンパワーメントについて取り上げる「ハー(Her)」を立ち上げたが、いまや実に多くのブランドが同調してくれている。現代のブランドには、寄って立つ理念が必要なんだ。

LUCIA MOSES(原文 / 訳:SI Japan)