フリーメイソンは世界各地に複数のロッジと呼ばれる集会所を持ち、その事実上の総本部はイギリス・ロンドンにある「United Grand Lodge of England(イングランド・連合グランドロッジ)」だといわれています。秘密結社と呼ばれるフリーメイソンには陰謀や謎といったイメージがつきまといますが、イングランド・連合グランドロッジは意外にもオープンで誰でも建物の中を無料で見学できるようになっていたので、実際にロッジ内部を探索してきました。

United Grand Lodge of England - About Freemasonry

http://www.ugle.org.uk/about-freemasonry

ロンドンにあるグランドロッジの住所は「Freemasons Hall, 60 Great Queen St, London WC2B 5AZ」。コヴェント・ガーデンの近くという、めちゃくちゃ中心地&観光地に位置しています。

建物外観は写真で確認していたのでどこかな〜と思っていると……



振り返ったところでグランドロッジを発見。予想よりもはるかに巨大だったので、隣を歩いていたのにも関わらず気づかなかったのでした。



建物の前を歩く通行人と比較すると、その巨大さがよくわかります。



別の角度から見るとこんな感じ。周囲の建物から頭がポコンと突出しています。



建物の正面には黒い扉とガラス窓があり、その上・建物中央には「1717」と「1967」という数字が時計の左右に示されています。この1717という数字は各ロッジを統括する初の「グランドロッジ」としてイングランド・連合グランドロッジが創設された年。そして1967という数字はフリーメイソンのトップであるグランドマスターとして現職の第2代ケント公爵エドワード王子が就任した年を示しています。



数字の横にはフリーメイソンのシンボルの1つであるコンパス。



建物内・ホールに使われているステンドグラスが、うっすら透けており……



その下には天使の彫像。ここには「1914」と「1918」という2つの数字が書かれています。これはかつてのグランドマスターであるウィンストン・チャーチルがアバディーン大学の学長に就任していた時期と重なるので、何か関係があるのだろうか……と外観を眺めているだけでも象徴というか暗号らしきものがあふれています。



イングランド・連合グランドロッジの標語であるラテン語の「AVDI VIDE TACE(見て、聞きて、黙せよ)」という文字も掲げられていました。両サイドに立っているのは人間・獅子・牡牛・鷲の全てを一身で体現しているという「ケルビム」。4つの生き物は東西南北・四大元素・四季・四福音史家を表しています。



近づいて見上げてみるとこんな感じで、シンプルに見えて細かな模様が入っているのがわかります。



建物のてっぺんには金色に輝く星。



建物を横からみるとこんな感じです。



1階と2階部分にそれぞれ縦長の窓が並んでおり、窓の上にはさまざまなシンボルが刻まれています。「秘密・用心・沈黙・警告」を示すカギ、三角のマークの中に入った書籍や……



分度器・羽ペン・羊皮紙など、かつては石工職人のギルドだったフリーメイソンを象徴するマークが刻まれています。



あまりにも象徴が多いので、これも何かのシンボルなのだろうか……とあらゆる場所をしげしげ見てしまいます。





図書館と博物館は月曜〜土曜日であれば10時から17時まで開館しており、少し早く来てしまったので外観をじっくり眺めていましたが、10時前には人が出入りし始めたので入館してみました。



1階には受付があり、ここで入館の説明などを受けることができるのですが、フリーメイソンのメンバーたちが頻繁に出入りしていることもあるためか受付周囲は撮影禁止でした。訪れた時にはフリーメイソンのネクタイをした男性が「荷物が届いているはずなんだけど……」と受付の女性に語りかけており、「ここは確かに秘密結社なんだ……」という実感がひしひし湧いてきました。

ということで図書館&博物館がある2階へ。日差しの明るい廊下を進んでいきます。



窓の反対側にはマスターを務めている人々の写真。ちょうど日光で写真が照らされるようになっています。



例えばSunny Sandhu氏は2008年に初めて「Master Mason(親方)」の位についた人物。写真の横にはメッセージカードのようなものが貼られており、「親方になるのは人生で最もわくわくする経験だった!」とテンション高めでつづられています。Sandhu氏は2006年に友人が訪れてきた際に人生についての哲学的な会話をかわし、それが種となって好奇心もありフリーメイソンに入会したそうです。フリーメイソンは家族のような存在で、「自分が大きな絵の一部である」という感覚や目的、信頼でき誠実で同じ原則に従っていきる「兄弟」を与えてくれたとのこと。自分にとってのフリーメイソンは「人々に対する高潔さや愛を意味し、より大きな共同体に対して大きなインパクトを与えるもの」だとつづられていました。



こんな感じのゲートをくぐり……



ライブラリーミュージアムへ。



部屋の左右には本棚があり、真ん中には展示物が並べられています。



少し進むと、こんな感じでフリーメイソンにまつわる数々があちこちに展示されています。



ここも建物外観と同じく、部屋のいたるところにシンボルが隠れていました。





どんなものがあるのかな〜と見回していたところ、まず発見したのはテンプル騎士団やマルタ騎士団衣装など。フリーメイソンの起源には諸説ありますが、その中の1つにテンプル騎士団の生き残りが建てたとする説もあります。



白いマント赤い十字の衣装がテンプル騎士団で……



赤い衣装に白いマークがマルタ騎士団の紋章。諸説あるとはいうものの、本家本元が博物館に飾るということはほぼ公式情報なのでは……という思いがつのります。



剣やハット。



書籍や装飾品。



「ナイト・グランド・クロス(大十字騎士)」という高位の騎士に与えられる紋章や最もすばらしいグランドマスターに与えられる六芒星など。バトンもグランドマスターが使っていたものですが、バトンについているシンボルマークにはテンプル騎士団の十字モチーフとなっています。



バトンと同じシンボルが使われている黒い布はテンプル騎士団のエプロン。



続いて、ひときわ大きな展示を発見。



中央に置かれているのは波型の刃を持った剣です。このようなジグザグした刃は動くと炎のように見えるとして、フリーメイソンのシンボルとして多く使われていたもの。



以下は儀式のグランド・ディレクターのアシスタントの衣装と、フリーメイソンの上位階の1つである「ロイヤル・アーチ」の集会所内部のミニチュア。



これが儀式を行う場所のミニチュア。イスラエルの部族を表す旗と祭壇が置かれ、遠近感がおかしくなりそうな独特な床は「ロイヤル・アーチ」の「アーチ」を示すシンボルとのこと。なぜイスラエルかというと、「ロイヤル・アーチ」という名はソロモンの逸話に由来するものであり、このミニチュアからフリーメイソンと古代イスラエルのつながりが読み取れるわけです。



よく見るとマネキンがつけているカラーからは全能の目がぶら下がっています。



さらに歩いていると……



ここにも全能の目が刻まれた衣装。蛇や人の手も刺繍されており、「何の儀式に使われたのだ……?」とわくわくしていると、「ジャン=ポール・ゴルチエがフリーメイソンからインスピレーションを得て製作した衣装」とのことで、ちょっとがっかり。



これはスコットランドのロッジにあったもので、1925年〜1959年の間に作られたと考えられているものですが、フリーメイソンさえも「何に使われたのかが不明」という不思議な机。右側に数字の書かれたパーツがあり、何かの計算に使われていた様子は伺えるのですが、フリーメイソンとは関係のない数字の組み合わせだそうです。



シンボルが刻まれたお皿などがずらりと置いてあったり……



フリーメイソンのシンボルが描かれたトレーシング・ボードも。これは、フリーメイソンのメンバーが後輩たちに講義を行う際の教材として使われたものだそうです。







ハンマーも石工職人を象徴するものの1つで、棚に並べられていました。



フリーメイソンが運営していた病院から戦後取り外された石板。



階級ごとに異なる装飾品の展示も行われていました。これはフリーメイソンから派生した秘密結社「ヨーク・ライト」の7階位にあたる「ロイヤル・アーチ」の装飾品。



シンボルの1つである六芒星をモチーフにしたジュエリーの数々。





マーク・マスター・メイソンの現グランドマスターであるマイケル・オブ・ケント王子が装飾品をうけている様子。儀式を行う際はカラーとともにエプロンを付けるようです。



エプロンにもいろいろ種類がありました。









ロッジの標語である「見て、聞きて、黙せよ」を示すボックス。



大きな絵画。



とにかくあらゆるものがフリーメイソンだらけの空間です。秘密結社でありながらこんなにもオリジナルグッズが作られていたのか……という点にも驚き。













また訪れた時には「Three Centuries of English Freemasonry(フリーメイソンの300年)」という特別展も行われていました。ここでは、フリーメイソンともつながりがあるアメリカの友愛結社「Odd Fellows」の儀式で使われた謎のマスクや……



1792年から1812年までイングランド・連合グランドロッジのグランドマスターを務めたジョージ4世のためのイスなど。ジョージ4世は記録上はフリーメイソンとしては初めての英国王とのこと。



後ろはこんな感じ。写真からは分かりづらいですがかなり巨大です。



かつての儀式が行われていたロッジのアイテムいろいろ。



間取りはこんな感じ。長細い部屋の長辺部分にロッジのメンバーやゲストが座れるようになっており、東の方角にマスター、西の方角にマスターを補佐し共に運営を行うシニア・ウォーデンが位置します。



当時の写真がコレ。



ということで、じっくり展示物を見て気が済んだところでお土産やさんへ。そう、秘密結社であるイングランド・連合グランドロッジですが、フリーメイソンのシンボルが入ったグッズで溢れるお土産やさんがあるのです。



「こんなにカジュアルな感じで売っていていいの?」と逆に不安になってしまう儀式用エプロンや……



図書館&博物館で見てきたような装飾品の数々。



この一角には……



ネクタイや蝶ネクタイ。



よく見るとフリーメイソン柄のネクタイたち。





「今日儀式だけどシャツやカラーを忘れちゃった!」という時に便利な服飾関係。



ピンバッジは種類が豊富でした。





時計やカフス。



困ったときにさりげなく相手に見せれば「ブラザー、困ったときはお互い様だ」と助けの手が伸べられるかもしれない指輪たち。



ネクタイピン



テディベア、お財布、名刺ケースなど。これらさえあれば日常生活でさりげないフリーメイソン感をかもしだせそうです。



ちなみに、ロッジを後にして少し歩いていると……



「FREEMASONS ARMS」というパブを発見。



この建物にもあちこちにフリーメイソンのシンボルが見られます。



「イギリスで最も古い醸造所」と書かれており、かつては現代のいわゆる「飲みサー」のような存在としても機能したフリーメイソンなので、儀式や集会の後にはこのようなパブで盛り上がったのかもしれません。



ということで、無料なのに好きな人にはたまらないネタがてんこもりだったイングランド・連合グランドロッジ。なお、展示を見ている最中にマレーシアのフリーメイソンのメンバーだという人に会ったので少し話を聞いてみたところ、入会理由は「コミュニティに参加して、いろんな人に合うため」だとのことでした。見知らぬ土地に行ってもロッジに行けば「ブラザー」と呼び合う他のメンバーたちに会え、交流関係がどんどん広がっていくそうです。出会った時も、イングランド・連合グランドロッジに訪れる前にはエディンバラのロッジで集会に参加していたと語っていました。「リッチな人たちの集まり」というイメージのフリーメイソンですが、男性によると入会に最も大事なのは人柄で、メンバーの中には医者・会計士・教師など、さまざまな職業の人がいるそうです。マレーシアは元イギリスの植民地なのでフリーメイソンの活動も活発だということですが、「日本では陰謀論があって……」と言うと笑っていたので、日本でのイメージとは少し違う様子。ただ、後になって「あの笑いはどういう意味の笑いだったのだろう……」と少しもんもんとしました。

イングランド・連合グランドロッジでは無料ツアーも行っており、2017年11月にはこのページからのリンクでスケジュールが確認できましたが、記事作成現在はリンクが外されている模様。図書館&博物館の他にホールの見学ができる日程・時間帯もあるので、見学したい場合はツアーの開催についてここから連絡すればOKです。

なお、今回訪れた際に購入した以下のピンバッジをGIGAZINE年末年始プレゼント企画で大放出中なので、欲しい人はここからじゃんじゃん応募してください。