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もくじ

ー なぜ、この季節を選んだのか
ー VWゴルフGTIパフォーマンス
ー ヒュンダイi30 N
ー ホンダ・シビック・タイプR
ー BMW M4 CS

なぜ、この季節を選んだのか

初めにお伝えしたいのは、サーキットを縦横無尽に走り回ったが、これ程までに大変だったBBDC(Britain’s Best Driver’s Car:イギリスのベスト・ドライバーズカー)の選出は、今までなかった、ということ。

もちろんこれまでのコンテストも簡単だったわけではなく、何時間も試乗を繰り返し、評価付けには悩んできた。けれど、明確に勝者と敗者を選出できたという点では、むしろ良かったのかもしれない。

しかし、最もキツかった。

この季節を選んだのは初めて。クルマの進化は止まることがなく、われわれのテストで試す速度域や条件もどんどん高くなっている。気温が一桁台で落ち着き、地方の道路でも、路面から滑る枯れ葉が無くなる季節が、より攻めた走行には適しているのだ。

とはいうものの、テスト日は雨天で路面は滑りやすく、少なくとも最高出力は実際の倍近くに感じられるだろう。サーキットの名物でもあるバンプの危険性は増しているわけだが、ランオフ・エリアは1cmとして増えてはいない。今回のような状況に、この11台のクルマ。カウンターステアを目一杯当てる前に、壁に突っ込んでしまう可能性も高まる。

車種選択は、従来通り普遍的なものだと思う。ドアの枚数は2、3、4、5枚。FFとFR、4WDの駆動方式。ボディタイプも、ハッチバック、セダン、スーパーカーにクーペ、スポーツカーと言われるものからエステートと多彩。エンジンは、自然吸気と過給器付きに、4、6、8気筒が揃った。

カッスル・クーム・サーキットのパドックに溜まった水たまりを吹き飛ばしつつスタートするドライバーの表情は、不安を隠すかのように笑顔だ。

ピットレーン出口のシグナルがグリーンに変わると、まずはじめに、フォークスワーゲン・ゴルフのGTIパフォーマンスから試乗が始まった。正直に言って、われわれにとっても、ゴルフは絶好のトレーニング素材で、まず初めに運転したいと考えるクルマ。本気度の高いクルマに乗る前に、自分の感覚を掴んでおくのに丁度よい。

そして期待を裏切らなかった。

VWゴルフGTIパフォーマンス

フォークスワーゲン・ゴルフGTIパフォーマンスについて「ウェットコンディションでも、素晴らしいスタビリティと安全性を得ている」とダン・プロッサーが第一印象をまとめている。

シャシーバランス、ブレーキ性能に加えて、限界付近での粘りと、その明確な手応えが気に入ったようだ。マット・ソーンダースは、「初日の大雨の中では、サーキットを速く走ろうと思わせた、唯一のクルマ」としている。

それは一般道でも同様で、どんな状況においても運転が楽で、他のクルマと乗り比べると、ドライバーの処理すべき量を減らしてくれる、ということに気付くはず。

路面が乾きだすと、ゴルフの間違いのない潜在能力の高さは、心を開いて、モチベーションを高めてくれる友人のような感覚を与えてくれる。少しさっぱりとしているけれど。

マット・プライヤーは、「フィードバックがより魅力に溢れ、操作性に幅があれば、言うことなし」と話していた。11万ポンド(1670万円)もの価格差があるにも関わらず、メルセデス-AMG GT-Rと最終選考まで残ったことを考えると、ドイツの自動車メーカーのプライドとして、そのレベルの高さを物語っている。

もうひとつの注目点は、ヒュンダイi30 Nの進化だ。

ヒュンダイi30 N

ヒュンダイi30 Nがゴルフに並び、追い越すことができたのかどうか。見ていこう。

ホットハッチの開発に関して、40年以上ものギャップがある中で、いささか難題にも思えるが、この韓国メーカーは、近年その差を一気に縮めてきている。

わたしが強く印象づけられたところは、全てのホットハッチが備えるべき、基本的な安定性の高さ。ゴルフですら遠慮気味に走るような濡れた路面でも、ヒュンダイがサーキットを突き進んでいくのは、カッコよく思えた。しかし、それ以外の評価は分かれた。

ソーンダースは「ステアリングの印象は若干退屈で、トラクションも不足している」とし、プロッサーも「難しい状況において、ゴルフよりも挙動変化が激しい」と評価している。一方で、「ゴルフよりもエンターテイメント性がある」とプライヤーは述べている。

わたしは、もう少し煮詰める時間をかけても良かったと思う。例えば、ペダルのレイアウトは完璧ではないし、ドライビング・ポジションも高め。希薄なブレーキの感触と、時折看取されるトルクステアは、改善を望みたいところ。

一般道では、これらの課題は目立たなくなり、シフトの印象も良く、乗り心地も上質にまとまっている点は好ましい。

しかし、ゴルフで感じ取ることができる全体的なスムーズさという点には、未だ至っていないと思う。ただし、ヒュンダイの進化の幅は大きく、次回は違う評価を得られるに違いない。

次項の主役はお待ちかね、ホンダ・シビック・タイプRだ。

ホンダ・シビック・タイプR

3万ポンドのホット・ハッチ、ホンダ・シビック・タイプRに期待するものとは?

もちろん、ホンダは5世代に渡って、20年間、シビックにタイプRのグレードを設定してきた。しかしこれは、高回転型の自然吸気エンジンを捨て、ターボによる過給を得た新モデル。従来モデルには懐疑的だったわれわれだが、大好物のホットハッチの最新型が、カッスル・クームにやってきたのだ。

サーキットに出れば、他のホットハッチだけでなく、もっと高価なスポーツモデルでさえ、いとも簡単に打ちのめす走りを見せる。ウェット・コンディションでも極めて速い。

エイボン・ライズ・コーナーのコーナリング・スピードは、コンチネンタル製のタイヤを履き、濡れたピットレーンのストレートでもブラックマークを残すほどのスーパーカーでさえ、同じ速度で走るのをためらうほど。

ギアボックスの機械的な感触も好印象で、ヒュンダイよりもダイレクトなパワーデリバリーを味わえる。

また、リアのマルチリンク・サスペンションは、見本的な設計例。前代のトーションビーム式と比較して、シビックはアクロバティックとも言える旋回性能を身に着けており、しかも、ウェットコンディションでも、200km/h近い速度からのフル・ブレーキを許容する。ベストなコーナリングを引き出す難しさは、限界性能の高さの明確な証拠でもある。

一般道での乗り心地も大分良くなった印象。ソーンダースは、昨年テストした時よりも遥かに過酷な条件のもとで、2016年に発表されたスーパーカーのNSXよりも、獲得ポイントが1ポイント高かったことを、指摘している。

そして、もう1台、BMW M4 CSも、パフォーマンス性能の向上を大きく印象づけた。

BMW M4 CS

昨年、BMW M4 GTSのテストをした際は、サーキット走行での優れた評価を、一般道での悲惨な乗り心地が帳消しにしてしまった。CSは、さらにそれを酷くするのではないかと危惧していたのだ。

ウェットコンディションのサーキットで2ラップを重ね、全てのドライバーはコースアウトすることなく、ピットに無事に戻ってくる。「ほとんど運転できない」というのが、プロッサーの本音。

タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2だったとはいえ、同じタイヤを履いていた他のクルマは、そこまで酷い影響は受けなかった。

M4 GTSの力強いエンジンや秀でたシフトフィール、ステアリングレスポンスを好んでいたプロッサー。しかし「ストレートで4速、130km/h程度のハーフスロットルですら、リアタイアが滑ってしまう。まったく速く運転できる状態ではない」と、その限界を認めていた。

一方で、一般道においては、GTSの時よりもはるかに悪条件のもとでありながら、CSは完全に性格を改めたようだ。わたしのメモでは、「わたしが覚えているどのクルマより、一般道とサーキットとの印象の差が大きい」と記しており、プロッサーもシャシーに対して「一般道ではかなり良く感じる」とコメントしている。

つまり、限界付近でない限りクルマは素晴らしく、サーキットでもドライなら楽しめたのかもしれない。結果、サーキットでの挙動は、クルマの採点において決定的な要因ではあるが、昨年のGTSよりも高得点を獲得している。

2015年にスネッタートン・サーキットで行ったテスト結果を念頭に置きながら、2台のメルセデス-AMGに乗り込む。

ドライバーズカー選手権2017(3)へつづく。