『婚活中毒』(秋吉理香子/実業之日本社)

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 映画化も果たした衝撃作『暗黒女子』の著者が、今度は≪婚活≫にひそむダークな人間模様を活写した。『婚活中毒』(秋吉理香子/実業之日本社)は、婚活をテーマに、愛、嫉妬、策略が渦巻く「どんでん返し」の連続を描いたイヤミス短編集である。

■運命の相手は連続殺人犯? 「理想の男」

 40歳を迎える直前にフラれてしまった沙織は、失意の中、地元の結婚相談所に登録する。そこで紹介されたのは、「なんでこんな人が相談所にいるの!?」と驚くような好物件の杉下。

「付き合ってみると、致命的な欠点があるのでは?」と疑いを抱くものの、関係が深まっても、杉下にこれといった欠点は見つからない。沙織はますます彼に惹かれていく。

 しかしある時、これまで杉下とお見合いをしていた3人の女性が、全員「突然死」していることを知り、愕然とする。

 愛した人は殺人犯なのか――。沙織は杉下を疑い始めるが……。

■性格の悪い美女と優しいブス……どっちを選ぶ? 「婚活マニュアル」

 友人の孤独死をきっかけに「早く家庭を持ちたい」と願うようになった30歳の圭介は、思い切って街コンに参加する。女性慣れしていない彼はマニュアル本を駆使し、参加者の中で人気ナンバーワンの美女と付き合うことになるのだが、彼女は「金のかかる女」だった。

 デートは高級レストラン。もちろん圭介の奢り。記念日でなくとも、ブランド物のプレゼントを要求される。「美人を連れている自分」に浮かれていた圭介も、そんな彼女に嫌気が差し始め、彼女の友人であり、同じ街コンに参加していた気立てがよく、料理も上手で働き者のブス子(本名は靖子)を結婚相手として考えるようになる。

 ついに圭介は、美女を捨ててブス子に交際を申し込もうとするが、そこにはある「落し穴」があって……。

■理系女の用意周到な婚活事情――「リケジョの婚活」

 テレビ番組の婚活バラエティ企画に参加したリケジョの恵美。彼女は参加者募集時の映像に映っていた水産加工業者の次期社長・舘尾(たてお)に一目惚れしてしまう。「何がなんでもこの人と結婚したい」と、徹底的に相手を分析。舘尾と結婚するために、完璧な作戦を立てて婚活に挑む。

 頭でっかちに婚活を進める恵美に、友人は「そもそも婚活なんて、データ通りなんか行くわけない」と意見するが、恵美は聞く耳を持たない。果たしてリケジョの婚活は成功するのか。婚活において「(ある意味)本当に大切なこと」を教えてくれる物語。

■息子のお見合い相手の母親に恋をしてしまった男の悲劇。「代理婚活」

 35歳の息子のために「代理婚活」(子どもの親同士がお見合いをして、結婚相手を探す)をすることになった益男(ますお)。一人息子を甘やかす妻に辟易しつつ渋々参加した婚活の場で、益男は息子のお見合い相手の母親・久恵に恋心を抱いてしまう。

 お見合い相手は息子を気に入り、これから家族ぐるみの付き合いが続いていくことをひそかに喜ぶ益男だったが、息子はお見合いを破談にしてほしいと言い出す。

 久恵と会いたい益男は、息子の意向を隠して婚活を続けていこうとするが、思いがけない事実が発覚して……。

……という、4作品が収録されている。

 婚活を舞台に人間のダークな部分を浮き彫りにする本作は、イヤミスの部類に入るのかもしれない。だが、ラストの「どんでん返し」には一種の爽快感があった。また、4話目の「代理婚活」だけが「いい話で終わる」のも個人的には好みだ。

 婚活中の方はもちろん、そうでない方も、男性でも楽しめる一冊になっている。……むしろ婚活に燃えている方は、読んだら最後、怖くなってしまうかも? ご注意を。

文=雨野裾