2018年の日経平均はどうなるのか。証券業界を代表する3人は、日本株にかなり強気だ(左から阿部修平、武者陵司、松本大の各氏(筆者撮影)

2017年の日本株は、日経平均株価が6年連続で上昇。大納会では2万2764円94銭の終値をつけ、年末の株価としては1991年の2万2983円以来の高値となった。2018年も上昇は続くのか。阿部修平・スパークス・グループ社長、武者陵司・武者リサーチ代表、松本大・マネックス証券社長の3人による「日本株・かなり強気対談」をお届けします。

日経平均3万円どころか、4万円も“通過点”⁉︎

松本:いきなり本題に入りますが、2018年、あるいはそれ以降、日経平均株価はズバリいくらまで上がるとお考えでしょうか。

阿部:2020年の末ごろには4万円になっているでしょうね。もしくは、4万円を超えている可能性もあると思います。

武者:私も2018年には3万円、2020年には4万円もあり得ると思います。4万円も通過点で、2030年から2035年ぐらいには10万円を超えていく可能性が高いと思っています。すでにそれくらいスケールが大きい相場が始まっていて、「今はその入り口に差しかかったところ」というのが、私の考え方です。

松本:なるほど。私も去年の終わりに2019年3月末、だいたい平成が終わるころまでには3万円までいくんじゃないかというのを、会社として正式に発表したところ「すいぶん強気ですね」と言われてきたのですが、お二人はそのはるか先を行っている感じですね。

阿部:1989年に日経平均が4万円に近づいたことがありましたが、今の企業収益はその水準をはるかに超えているんですよね。ただ、設備投資や売り上げはそれほど増えていない。それでも、日本企業の付加価値は確実に大きくなっているのに、株価がそれをしっかりと評価しないということが長く続いているのです。

日本は株価が安いだけではなく、すべてのモノが安いと思います。東洋経済オンラインにも掲載されました(ゴディバと森永製菓、どちらがおいしいのか)が、例えばチョコレートの値段でいうと、森永製菓の代表的な商品のグラム当たりの価格は、ベルギーを発祥とするゴディバの約8分の1。マクドナルドのビッグマックの値段にしても、日本より安い国は主要国では中国とインドくらいしかないんです。こうした状態が修正される局面に入り、今の日本はまさに時代的大転換期にあるのです。その意味では、武者さんとまったく同じ意見ですね。

松本:モノの値段が全般に安いというのは、日本の金融政策とも関係があるのでしょうか。

阿部:おっしゃる通り、マクロ政策が貧困だったことにもよるかもしれません。さらに言えば、企業家が「儲けよう」という気持ちを忘れてしまったことも大きな原因です。株主もそれを黙認してきたので、儲けなくても言いわけが立ったんですね。こうしたさまざまな要因が組み合わさった結果だと思います。

日本の「安すぎる株価」が上昇していく理由

松本:さて、日本の株価が今なお安く放置されているとすると、今後さらに上昇するきっかけは何だとお考えですか。

阿部:一番大きいのは、マクロ的なデフレが通常のインフレ状態に入っていくことでしょう。私はアベノミクスの評価をする立場にはありませんが、少なくともアベノミクス以降はこうした変化がはっきりと出てきています。最も顕著なのは不動産価格です。これが上がって初めて、正常な信用創造ができるのです。その証拠に、最近では銀行が「おカネを貸したい」とかなり積極的になっていますよね。信用創造のないところに正常な市場の機能はありませんから、そういう意味では非常に大きなきっかけだと思います。

松本:武者さんは日経平均がこれから4万円、いずれ10万円までいくとおっしゃいましたが、その理由は?

武者:一番重要な要素は、今世界中で起こっている、新たな「産業革命」ですね。これによって劇的にコストが下がって生産性が上がり、企業は超過利潤を極めて容易に、また旺盛に手に入れられるようになったのです。設備投資も安く済み、商売をやるのに必要な資本が少なくなりました。その結果、儲かったおカネが行き場をなくして、企業も家計も貯蓄過剰になっています。その「カネ余り」が金利を下げているのです。

歴史的に見ても極めてまれなことで、恐らくここ10年、20年に特有の現象だと思います。一方で、せっかくつくられた価値が貯蓄され、購買が先送りされています。この問題を解決するには、信用創造によって購買を少し前倒しにしてやって、つくられている価値が需要に結びつくように働きかけることですね。そうすれば経済は成長してインフレは正常化し、金利が上がり、そして正常な関係のもとで株価が上がるという状況になると思います。

こうした、安定的な状態を取り戻すための政策が、リフレ政策だと思います。アベノミクスは典型的なリフレ政策ですし、米国のドナルド・トランプ政権も不人気ではありますが、まさしくリフレ政策をとっていますよね。このように、2017年は新たな産業革命の成果が個別企業だけの儲けにとどまらず、経済全体の需要創造に結びつきつつあるという流れが、かなりはっきりあらわれてきました。2018年は、これが一気に花を開かせるという、大きな転換点にきていると思いますね。

企業の行動はすでに積極的になっている

松本:先ほど「企業は儲かっているが、設備投資して儲かったわけではないので、株式市場的にはあまり受けがよくなかった」という阿部さんの分析がありました。設備投資がもっと出てくるとさらに雰囲気がよくなると思いますが、2018年は、そういう流れになるでしょうか。

阿部:すでにそういう動きになっていると思います。日本でも機械受注が急激に立ち上がっていますし、米国の耐久財受注や非国防資本財受注も同様に堅調です。中国もハイテク投資にものすごい力を入れています。このように、世界的な大きな投資ブームが起こりつつあるというのが、今の状況です。企業は儲けたおカネをバランスシートの中にため込むだけでなく、積極的に投資を始めていると思います。

企業の儲けが給料や家計の消費に結びつかないという問題は依然として残っています。しかし、企業の儲けが株価上昇となってあらわれ、実際にそこで価値が生まれれば、株主だけでなく、年金財政の改善なども通じて消費に結びつくというチャンネルも出てくるわけですよね。

こう言うと「お決まりのトリクルダウン理論か」との批判も出るかもしれませんが、企業の儲けを需要につなげるのは、何よりも株価上昇だと思うんです。企業の実体価値にふさわしい株価が形成されれば、企業の儲けはただちに経済の好循環の起点になり得るわけです。こうした現象は、実際に世界中で起こっています。

松本:私は、日本の企業はバブル崩壊後「傷んだバランスシートを修復しないといけない」という呪縛があって、この状態に20年間も30年間もどっぷりとつかってしまったので、いまなお急に前向きになれないのではないか、と思っています。実際、企業の行動パターンは変わってきているのでしょうか。

阿部:変わってきていますね。ここ2、3年、私たちの投資ポ信託の成績は極めて良好です。2017年は特によかったですね。この理由は、「感性がいいアグレッシブな経営者を調査によって選ぶ」というプロセスをコツコツ実践した結果だと思います。特に奇をてらった手法があるわけではなく、経営者とお会いして、その方のこれまで言ってきたことと今の勢いを感じとるのです。

武者:日本企業では非常に大きなビジネスモデルの転換が、この過去20数年で成し遂げられてきたと思うんです。つまり、昔の日本企業はテレビも半導体もパソコンもスマートフォンも、何から何までナンバーワンを目指していました。しかしナンバーワンになるためには競争で勝たなければなりませんので、採算は相当厳しくなります。

おまけに、打ち負かした相手からは叩かれ、恨まれる。日本企業はナンバーワンになるという戦いでは、すべて負けたと言ってもいいと思います。しかし、その後日本企業はナンバーワンではなく、オンリーワンのところでしぶとく生き延びるという戦術を選びました。希少性を売りにすると価格もかなり自由に設定でき、優位に立つことができます。オンリーワンに特化し、大企業も中小企業も含めてこうしたフィールドを確保できたというのが、今の企業収益の一番大きな背景だと思います。

松本:2018年以降、2020年以降も含めて見た場合、リスクは何だと思われますか。

2018年の一番大きなリスクは「買い損ねる」こと

武者:私はアップサイド(企業収益が一段と増え、株価も上昇する)リスクについての過小評価が、一番大きなリスクだと思います。もちろん米国の金融政策などが万が一失敗する、あるい中国の景気が失速したり、不良債権問題が顕在化する、さらには北朝鮮を中心とした地政学リスクなど、さまざまなダウンサイドリスクはあると思います。

しかし、それは非常に小さいものです。アップサイドリスクが大きいにもかかわらず、みんな「金利が上がらないから先行きが厳しい」とか、「物価が上がらないから、よほど景気が悪いんじゃないか」などと、非論理的に心配していますよね。これが買い損ねることににつながるわけで、最も懸念すべきリスクだと思うんですよ。

阿部:リスクをどういう時間軸で見るかということも大切ですね。短期的には北朝鮮の問題もありますし、もう少し長い目で見るとトランプ政権が将来、ウォールストリートに支持されなくなるリスクもあると思います。

ただ、過去半世紀、もしくはそれ以上の長い歴史で見ていくと、こうしたレベルのものは、いつでもあったリスクですよ。大きな流れを変えるようなリスクだとは思いませんね。

今は2つの「時代の転換点」を迎えていると思うんです。ひとつはやっぱり米国の覇権の時代が終わったということ。それでいて、次の新しい時代の枠組みがどうなるかは、まだはっきり見えない。私たち日本が、がんばらなくてはいけない時代がまさに来ているのだと思います。

その流れの中で、もうひとつの流れとして、AI(人工知能)やIoT(あらゆるものがインターネットでつながること)、自動運転など、新しい道具も出てきています。これまで私たちが前提としてきたビジネスのやり方が根底から変わる。それを示唆している出来事のひとつが、ビットコインかもしれませんね。

松本:個人的には、私は中国の人民元リスクを意識しています。すなわち、金融緩和をすることで元安が加速化する動きがどこかの段階で起きると、世界的なリスクに発展する危険性があると思っているのですが、中国リスクについてはどうお考えですか。

武者:中国に関する最大のリスクは、まさしくそこだと思いますね。中国は中央集権的な国家ですから、国内で問題が深刻化するということはほとんどないと思います。しかし、対外的な取引、クロスボーダーのところには大きなリスクがあります。今の人民元というのは、現在の中国人の人件費からすると割高ですから。実際、中国の貿易黒字は、年率で2割ぐらいのペースで減っています。

もし今の水準で人民元を維持するとさらに黒字が減りますので、経常赤字にならないためには人民元に手をつけざるを得ないというのはうなづけます。しかし他方で、中国という国はトータルで4兆ドルもの資金を海外からの投資に依存しています。人民元が弱くなれば、こうした投資資金が急激に逃げていくでしょう。

もしそんなことになると、「(ドル建てベースでの債務が膨らみ)、借金を早く返さなきゃいけない」という、中国企業の「借金返済の前倒し」も
起きますから、資本収支が大幅に悪化します。一方で、米国には「中国を経済的に封じ込める」という大きな目的があるので、容易には人民元の切り下げは認めないはずです。そのため中国は人民元を切り下げたいという誘惑にかられることはあっても、実際はできないと思いますね。したがって、これが大きな悪循環のきっかけにはなることはないと思います。

2018年注目のセクターは「金融」と「ハイテク」

松本:なるほど。2018年にあたって、個人投資家はどんな点に着目すべきでしょうか。注目のセクター(業種)などはありますか?

阿部:株式投資は常に余裕資金で行うべきですが、何に投資するかということでいえば、例えばスパークスは配当利回りが3パーセント前後で、10年後にも必ず残っているであろう日本のメガバンクなどの会社に投資しています。バフェット氏に大きな影響を与えたベンジャミン・グレアム氏の言葉を使えば、こうした株は十分な「安全余裕率」があります。

日本のメガバンクが世界的なレベルでの効率性があるかと問われたら、そこまではわかりませんが、いま銀行預金なら利息がほとんどゼロのところが、こうしたメガバンク株を持てば3パーセント前後の配当利回りになるわけです。ここから正常なインフレの時代になれば、銀行は今より収益を上げやすくなる。利益が増えれば当然配当額も増えるるので、狙い目だと思います。

松本: 個人投資家で、個別銘柄に投資するのはどうかという人もいます。ETF(上場投資信託)などの「インデックス投資」でも十分でしょうか。

阿部:インデックスで十分と言うよりは、銀行の預金に置いておくよりは、インデックス投資で配当をもらうほうがいいということです。ウォーレン・バフェット氏でさえも、十分に時間のない投資家にはETFへの投資を勧めています。ただ、投資にかける時間が十分にある人は、もちろん個別に企業を選ぶほうがいいと思いますね。

武者:私はもう少し、大胆に対応できると思っています。例えば日本でも米国でも、個人金融資産のうち大体3割が年金保険の準備金なんですね。違うのはそれ以外の金融資産です。自由になる資金を100として見ると、日本は現預金がそのうちの7割で株式投信が2割、米国はまったく逆で、7割が株式投信で、現預金は2割なんです。

武者:確かに「米国はリスクを取りすぎだ」という批判はあるにせよ、一方では日本も極端に現金が多い。日本人というのは、極めて正常ではないリスク感覚のもとで、間違った投資をし続けているのです。私に言わせれば、借金をして株を買うということが、今ほど効率のいい時期はありません。ある程度の安全資金があり、時間的な余裕がある方には、私はレバレッジを効かせた投資をお勧めしますね。

セクターとしては、阿部さんがおっしゃった金融セクターは、まさしくこうした投資に向いていると思います。もう一つ挙げるとすれば、やはりハイテクでしょうね。IoTとともに、日本が再びハイテクの世界的リーダーになる時代がやってきているのではないでしょうか。

松本:私はこと日本の個人投資家については、武者さんと反対の意見を持っていて、彼らは極めて賢い投資をしてきた人たちだと思っています。実は日本の家計部門というのは、バブルのピークで不動産を売り越したんですよね。これまで世界ではチューリップ・バブルをはじめとするいろいろなバブルがありましたが、その価格のピークにおいては、家計部門は大幅に買い越しているのが常です。しかし、日本だけは家計部門が売り越しで、金融機関(銀行)が買い越したんですね。

「それは売ろうとしたんじゃなくて、担保権を行使されただけじゃないか」という意見もあります。が、それにしても、資産を担保にしておカネを借りてでも買ったという行動は、とてもすばらしい。しかも多くの個人投資家はいいところで売り抜けて、そのおカネで株も外貨も買わず、当時6パーセント程度で回っていた日本の債券などにおカネを移しました。ご存知の通り、株価はその後、4分の1になり、外貨も2分の1や3分の1になり、金利も大きく下がりました。その意味では、日本の個人投資家は時流を的確に読み、天才的にポートフォリオを変更した人たちだと思っています。

ただ、やはり人間なので、過去の経験に縛られてしまうところはある。過去20年の移動平均線を見ると日本株はずっとダメだったので、これから上がると言われても、投資家としてはなかなか買えませんよね。だからこそ「いや、これからは違うんだ」と意識しないと、先ほど武者さんがおっしゃった通り買い損ねてしまうリスクがあると思っています。

2018年は「次の時代を準備する総仕上げの年」になる

松本:3人の中では私が比較的弱気なので、今回は、大変強気なお二人のお話を伺えてよかったです。

武者:私は「平成の大総括」が2018年の大きなテーマになると思っています。実は、平成というのはすごくいい時代でした。株価のパフォーマンスは悪かったけれども、企業のビジネスモデルが劇的に変わり、日本がグローバル・シチズンとして洗練された30年だったと思うんです。世界が日本を見る目も、昭和のそれとはガラリと変わりました。

後から見れば、平成の30年間は「次の新しい10年、20年の土台になった時代」となるのではないでしょうか。その総仕上げという意味では、2018年は、非常に大きな「エポックメイキング」(新時代を切り開くような画期的)な年になる可能性があると思いますね。

阿部:私は「リアルとデジタルの融合」が、これからの企業活動のキーワードになると思います。これまでリアルで圧倒的に強かった会社が、デジタルを道具として生産性を劇的に向上させていく。そのような変化が企業収益にも一段とあらわれる。2018年とは、そういう年です。ですから、「クラウドにデータを集めることができる、リアルビジネスをやっている会社」の株価がどんどん上がると思っています。投資家として引き続き、そういう会社に注目していきたいですね。

(2017年12月末に行われた鼎談を独自にまとめたものです。マネックス証券のHPにある動画で全内容を見ることができます)