「Thinkstock」より

写真拡大

●好調だった世界経済

 昨年の日本経済を一言で表現すると、好調な海外経済やそれに伴う円安の進展などにより、大企業を中心に企業業績は最高益を更新したものの、企業の慎重姿勢により分配活動が不十分で家計に十分恩恵が波及しなかったということだろう。好調な企業業績を反映して、日経平均株価もバブル崩壊以降の最高値を更新した。それなのに景気回復の実感が乏しかった原因は、好調な企業業績の割に賃上げ率が低下したことがある。また、年明けから上昇に転じた消費者物価が、家計の消費行動に対する慎重姿勢を誘発したこともある。

●賃上げで個人消費活性化
 
 今年の景気を占う上では、春闘が大きなカギを握っているだろう。安倍政権は2018年度の税制改正大綱に、賃上げ3%以上と設備投資を行う大企業の法人税を軽減する一方で、賃金と設備投資の伸び率がいずれも不十分な大企業は法人税の優遇措置を停止することを盛り込んだ。また、中小企業も賃上げをすれば税負担を軽減することも打ち出している。いずれにしても、企業の内部留保の活用をにらんで、企業に焦点を当てた税制改正が打ち出されるだろう。

 賃上げ環境に関連すれば、肝心の企業業績は株価の上昇が示す通り過去最高水準を更新している。また、完全失業率が3%を下回っており、労働需給のひっ迫も賃上げの後押しになるだろう。また今回の春闘では、従業員の生活水準が維持できるよう、インフレ率が上昇していることも加味されるだろう。昨年2.11%だった大企業の春闘賃上げ率は2.5%程度になると予想しており、家計に恩恵が及ぶ可能性がある。

●買い替えサイクル到来で耐久財消費に期待

 耐久財の買い替えサイクルに伴う需要効果もやはり大きいと思われる。内閣府の消費動向調査によれば、テレビと自動車の平均使用年数は9年程度となっている。テレビや自動車の販売は14年4月の消費税率引き上げ前に駆け込み需要で盛り上がったが、さらに前に遡ると、09年度〜10年度にかけても販売が盛り上がっている。

 背景には、リーマンショック後の景気悪化を受けて、麻生政権下でエコカー補助金や家電エコポイント政策が打ち出されたことがある。これで自動車やエコポイントの対象となったテレビ、冷蔵庫、エアコンの駆け込み需要が発生し、今年は9年目を迎えることから、その時に販売された自動車や家電の買い替え需要が期待される。特にテレビに関しては、11年7月の地デジ化に向けて販売が盛り上がったので、買い替え需要はかなり積み上がっていることが期待される。19年10月に消費税率引き上げが控えていることも、買い替え需要の顕在化を後押しする可能性があるだろう。

 さらに、18年に開催されるサッカーワールドカップも市場を盛り上げる要因になることが期待されるため、それもテレビの買い替え需要を促すだろう。結果として、来年期待される賃上げは、耐久財消費市場を活性化させる可能性が高いだろう。

●米国の減税と利上げが日本経済に追い風

 米国経済も一つのキーワードとなろう。米国の共和党政権は来年から税制改革を実施することになっており、来年から10年間で1.5兆ドル、日本円にして170兆円規模の減税が実現することになっている。このため、米国経済が順調に拡大するなかで、大規模な減税が実施されることになれば、日本経済にとってもプラスの効果が高いだろう。

 一方、減税効果が出現するということは、それだけ米国経済の勢いも増すということになる。FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策の打ち出し方次第では、一時的に市場はネガティブに反応するかもしれないが、日本としても、米国経済の拡大を反映してドル高・円安となることで、株価の押し上げ要因となろう。実物経済面でも日本の財やサービスの競争力が増し、輸出も促進されるだろう。

 こうした点で、日本経済にとってプラスの面が大きいと推察される。また、世界最大の米国経済の正常化が、低位に張り付いている日本の長期金利の上昇に結びつけば、日本の金融機関にも好材料となるだろう。

●日米の金融政策に注意

 一方、日銀が行っている10年国債利回り0%をターゲットにしたイールドカーブ・コントロールや、ETF(上場投資信託)を買い入れる金融政策は実体経済にポジティブと捉える向きもある。しかし、今後は日銀が金融政策の出口に向かう可能性もあることからすれば、金融政策の動きには注意が必要だろう。
 
 日銀の金融政策については、今年3〜4月に執行部が交代することから、枠組みが変更されるリスクもあり、証券市場にとってもネガティブになるとの見方もある。米国で大型減税が実現し、FRBも金融政策の正常化を市場の見通しより加速させるという見方が強まれば、日本の長期金利上昇を通じて証券市場の調整が加速する可能性もあるだろう。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)