パブリッシャーがこぞってプラットフォーム上の分散型メディアモデルに傾倒するなか、ブルームバーグ(Bloomberg Media)のCEO、ジャスティン・スミス氏は警鐘を鳴らす。プラットフォームを完全に無視するという選択肢はありえない。だが、パブリッシャーは使うプラットフォームを慎重に選ぶべきだと、彼は言う。

ブルームバーグにとって、Twitterは最重要の提携プラットフォームのひとつであり、12月18日の「ティックトック・バイ・ブルームバーグ(TicToc by Bloomberg)」の発足で、さらにそれが鮮明になった。ティックトックは、野心的な24時間ライブ動画ニュースチャンネルで、世界中で働くブルームバーグの2700人のジャーナリストと専属チームが報道に携わる。GoogleとFacebookによる業界の二極支配に不平をこぼしてばかりのパブリッシャーが多い昨今、ティックトックはブルームバーグの「ビッグアイディア」の一例だと、スミス氏は言う。

「メディアオーナーに対しての二極支配への回答は、守りに入って『取り払えない障壁が成長を阻んでいて、我々は常に瀬戸際にある』と考えることではなく、イノベーションを生み出すことだ」と、スミス氏。「陳腐に聞こえるかもしれないが、この窮地を脱する唯一の方法は、メディア企業として消費者と広告主の心をつかむ、何か新しいことをすることだ」。

スミス氏へのインタビューの抜粋を以下に紹介する。読みやすいよう一部に編集を加えた。

――BuzzfeedのCEO、ジョナ・ペレッティ氏は先日、デジタルメディアは危機にあると述べた。これには同感? あるいは、劣ったビジネスモデルが危機にあるだけ?



デジタルメディア全体が危機にあるとは考えていない。危機にあるのは、デジタルメディアの独立型デジタル広告モデルだ。広告収入ベースのビジネスモデルが窮地に立たされているのは明らかだ。だがそれは、存在意義を揺るがす根本的な危機ではないし、新たな発想、イノベーション、優れた戦略と実行で解決できる。私はこの危機は乗り越えられると希望を持っている。困難はあるが、大きな成長のチャンスも山ほどある。

――二極支配のせいにしすぎていると?



まわりの環境に適応しなければならない。GoogleとFacebookがデジタル広告費のシェアを拡大しつづけているのはまぎれもない現実で、誰もが頭に入れておく必要がある。ただし、ふたつの面で脅威は誇張されている。ひとつは、GoogleとFacebookの広告売上の合計をよく見ると、その大部分はダイレクトレスポンス広告がデジタルに移行したものなのだ。ブランドの部分は依然として従来メディアにある。そこをめぐる争いもはじまっているが、GoogleとFacebookの勝利が決まったわけではない。もうひとつ誇張されているのは、GoogleとFacebookの支配が永遠に続くという仮定だ。状況は流動的であり、それは消費者と広告主の行動や、規制環境が流動的であるためだ。圧倒的にみえる二極支配にも、穴の開く余地はいくらでもある。まだ多くのパブリッシャーは気づいていないが、GoogleとFacebookのやり方が永遠ではないのはほぼ確実だ。なにしろ15年前には、ヤフー(Yahoo)とAOLという、別の二極支配があったのだ。

――その見解をどう戦略に反映する?



我々は社員にこう話している。この激変の時代の収穫をプラットフォームに独占させてはいけない。我々も莫大な利益をあげられる場を見出そう。守りに入るのはやめて、エコシステムに攻め込んでいこう。

――メディアは守りを固めすぎていると?



その通りだ。いまの環境でメディア事業を続けていくことを考えるうえで、経営陣は収入源の多角化を考えがちだ。ジョナ(・ペレッティ氏)も多角化に言及していた。我々は、収入源の多角化とともにプロダクトも多角化すべきだと考えている。多角化のもうひとつの方法として、コア事業に関連する新たなプロダクトを生み出すこともできる。この方法を検討しているメディア幹部はあまりいない。彼らは売上を、最初のバケツから次のバケツへ、そして3つめ、4つめのバケツへと移しているだけだ。

――つまり、ティックトックはプロダクトの多角化であると。



その一例だ。我々はデジタル事業の成長にワクワクしている。今年のデジタル広告収入は25%増、もしかしたら30%増になるかもしれない。ティックトックはプロダクト多角化のチャンスだ。我々はTwitterでの動画ストリーミングを開始し、Twitterには大勢の熱心なニュースオーディエンスがいると知った。そうして、Twitterに対し、普通とは違った見方をするようになった。Twitterは世界最大のニュースメディア企業になりうると、我々は考えている。ブルームバーグの財産とオーディエンスを結び付け、Twitter上で話題を呼ぶ新たなプロダクトを作り出すにはどうすればいいかを考えた。それはつまり、報道機関にできる最良のことと、SNSにできる最良のことを融合させるということだ。

――なぜFacebookではなくTwitterなのか? FBの方がスケールメリットがあるのでは?



ニュース速報に関して、もっともオーディエンスのスケールがあるのはTwitterだ。Facebookにニュース速報を見に行く人はいない。FB上のニュースは、もっと受動的かつ全般的な体験で、速報ではない。私が3月に(DIGIDAYパブリッシングサミットで)述べたことのひとつは、プラットフォームとの関係を厳選せよ、というものだ。我々はこれに関して、Twitterと緊密に連携している。彼らはデータと考察を提供してくれているし、我々はコンテンツ・動画制作のノウハウを共有している。それに、二大巨頭との契約と比べて、金銭的にも対等の関係だ。理想をいえば、ブルームバーグは3000人のジャーナリストを起用し、世界のニュース速報の質を向上させるつもりだ。これこそが「ビッグアイデア」だ。

――3月に話したとき、あなたはペイウォールは概して失敗だったと言った。だが、そこには成功の兆しも見えているのでは。



超プレミアム市場では、すでに確立されたプレミアムブランドが成功を手にした例がいくつかある。だが、それ以外の市場の大部分では、有料コンテンツはうまくいっていないのが実情で、それは数字を見れば明らかだ。だが、この状態がずっと続くわけではない。消費者の行動は変化する。ユーザー体験はますますストレスフリーになってきた。これまでのところ、サブスクリプションで成功した企業はごくわずかだ。だが、ニッチなB2B市場では、サブスクリプションは安定して成長している。ビジネスウィーク(Businessweek)はその範疇に入るだろう。特に、業界関係者が法人カードで購読する場合は。

Brian Morrissey(原文 / 訳:ガリレオ)