いまや世界大会で各国のモデラーによって腕が競われるようになった、ガンダムのプラモデル「ガンプラ」。その世界レベルの作品群は、もはやアートと呼べるほどの完成と世界観で、見る者を圧倒する。

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2017年末に開催された「ガンプラビルダーズ ワールドカップ 2017 世界大会」にて、メカデザイナー大河原邦男氏が選ぶ特別審査員賞を受賞したのが、台湾代表のチェン・ジェン・イ(Chen Jheng Yi)さんの作品『ジーク ジオン(Sieg Zeon)』だ。



使用キットは『1/48 メガサイズモデル シャア専用ザクII』。一見ストレートに組み上げられたプラモデルに見えて、機体各部に精緻なグラフィックが描かれているのがわかるだろうか。



たとえば下半身。西洋の紋様を思わせる図案にまぎれ、安彦良和の筆致を再現した「ガンダム」のキャラクターたちの姿が見え隠れする。全身赤のイメージが強いシャア専用機の左半身を大胆なブルー基調でペイントしながら、「シャアザク」のキャラクター性を損なわないバランス感覚にも脱帽だ。



脚部をアップで見ると、シャアの人生に大きく関わる女性たちがまとめて目に飛び込んでくる。右腿はシャアが愛したニュータイプの少女ララア、左足には後のホワイトベース乗組員セイラ・マスとなる妹のアルテイシア、そして母アストライアが。まるで「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」のストーリーをなぞるかのような、絶妙のイラスト配置である。



シャアご本人は右肩のシールドに鎮座して満面のドヤ顔。ザクのデザイン上もっとも広い平面部であるシールドに陣取るとは、さすが「先読みのシャア」といったところか。



左腰のスカート部には、まだキャスバルと呼ばれていた少年期のシャア。そして復讐鬼と化した後の「赤い彗星」。その二つの顔に陰に隠れるようなかたちでガルマ・ザビが描かれているのが、ストーリーの暗喩のようで興味深い。



「ジーク ジオン」のタイトル通り、ジオンの総帥ギレン・ザビが一年戦争を象徴する事件「コロニー落し」を背景に拳を振り上げる場面も。まるでガンプラを眺めながらガンダムの物語を追体験しているかのような感覚だ。



「ガンプラビルダーズ ワールドカップ 2017 世界大会」の特別審査員を務めた大河原邦男氏は、この作品について「ガンダムのデザインは、自分がデザインした頃よりはるかにグラフィカルになり、より細部も細かくなってきている。そんななかノーマルなザクに安彦さん調のイラストが描かれている本作品は、私にとってショックであり、新鮮だった。懐かしい時代を思い出してしまった」と話す。



この作品は惜しくもベスト5入りこそ果たせなかったものの、「ペインティング」と「アイディア」では優勝作品を上回る高得点を叩きだした。次回の2018年大会では優勝争いの台風の目となるかもしれない。自由な発想と技術で熱い戦いが繰り広げられる「ガンプラビルダーズ ワールドカップ」に、今後も注目していきたいところだ。



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GUNPLA BUILDERS WORLD CUP 2017

text渡辺 "d." 大輔(編集部)