俳優としての活躍目覚ましいDEAN FUJIOKA。そんな彼は、昨年末からミュージシャンとしての活動も本格化。八千人超の大阪城ホールと五千人超の東京国際フォーラム・ホールAでの2DAYS公演などもおこなっている。音楽への造詣は深く、自身で作詞作曲をおこない、自身で作品を作り上げる。俳優としての顔がクローズアップされがちだが、今回はミュージシャン・DEAN FUJIOKAを追った。

 DEAN FUJIOKAは今月20日に、自身が主演する日本テレビ系ドラマ『今からあなたを脅迫します』の主題歌「Let it snow!」を2nd EPとしてリリースしている。フューチャーベースというクラブサウンドを基軸とし、タイムレス感を出すためにサウンドにこだわった1曲となっている。台湾やジャカルタでの日々が音楽への向き合い方を変えたと話すDEAN FUJIOKA。もともとインストメンタルを好んでいたが、今は「届けたい」という思いが一番にあるといい「だから歌詞を書くようになったのかな」とも語っている。彼にとって音楽とは。

制作は曲の世界観を重視

DEAN FUJIOKA

――7月におこなわれたライブ『DEAN FUJIOKA Live 2017 “History In The Making”』を観覧しまして、音楽も優ることながら演出面も素晴らしくて。DEANさんは、ライブでは企画段階から携わっているのでしょうか。

 そうですね。曲の流れなどは作っています。それをどうしていくかはチームの皆でやっています。それによってライブはだいぶ変わると思いますから、起承転結をつけて、考えていますね。

――2nd EP『Let it snow!』でもフューチャーベースのサウンドが聴けますが、このジャンルとの出会いはどのようなものだったのでしょうか。

 もともとベースミュージックが好きで、HIP HOPやR&Bなどを聴いていても、自分が今の聴くのはトラップのビートがほとんどですし、そういう流れですね。フューチャーベースに関しても、自分が好きで聴いているサウンドがそういうものが多いので、そのまま自然に入れ込んでいった感じです。

――作曲はアコースティックギターから作ることが多いのでしょうか。

 昔はそうでした。今は全部、ラップトップのPC(パソコン)です。アレンジは今回、Mitsu.Jさんにお願いして、その前のプリプロの段階で仮のデモトラックを作ったりするのは、ラップトップの中でゼロからやって完結しています。(編注=プリプロとはプリプロダクションの略で本番レコーディング前の作業のこと)

――DEANさんがラップトップを使う理由は、移動に便利という面が大きいのでしょうか。

 そうですね。僕の中で生活に一番身近なのがラップトップだと言ってもよいぐらいです。スマホとかでも作れますが、サンプリングなどの扱いが難しいからラップトップの方が都合は良いと思ってやっています。

――プリプロ段階では何割くらいの完成度で持ち込むのでしょうか?

 イメージという面では半分くらいかな。そこでメロディや雰囲気の世界を定めてアレンジしてもらって今のサウンドになっています。でも、サウンドの景色は全然違います。「方向性はこの直線上」という感じでの原点は作っていますから、デモのトラックの中から最終的に使っている音もあります。

――自身の歌が入るという前提で作られるのでしょうか。

 シンガーとしてのどうこうというリミットは決めていないです。自分の声がこうだから、という点はあまり考えて作っていないですね。どちらかというと曲の世界観を重視して作っています。

ラップトップバトルのイベントで衝撃を受けた

――サブスクリプションなどを積極的使用されているとお聞きしたのですが、最近はどういった音楽を聴きましたか?

 最近だとKris Wu(ex:EXO)かな…。あれだけ社会現象みたいになってソロデビューをしてUSでもNo.1とかを穫っているサウンドを知っておかなければ駄目だと思うし、そういうのは積極的に聴きます。おすすめみたいな感じで普通に耳に入ってきますね。あとは、 (YUC'e)の「Future Cαndy」とかよく聴いていました。他の曲も凄く好きでよく聴いています。

――常に音楽のアンテナを張っているわけですね。今作「Let it snow!」のイメージはどのようなものだったのでしょうか。

 ドラマ『今からあなたを脅迫します』の主題歌としてオファーがあって、雪が降ってくるイメージがあったので、雪の景色にはまるような音像の世界観にしたいなと思いました。タイムレス感を出すためにサウンドをこだわって選んだ部分があります。例えばサックスの音とか。

――あのサックスは印象的でした。シンセサイザーで演奏されているのでしょうか。

 そうですね。あえてMIDIっぽい音を選びました。サックスの音って象徴的じゃないですか? もともと、もろにフューチャーベースFuture Bassの感じになっていたから、そこのリードシンセの音があまりにも今っぽくなっていて、逆に半年後、1年後になったら嫌になっちゃうかなと思って(笑)。だからレトロフューチャーな感じでサックスの音にはめたら大成功で、「これでいこう」という感じになったんです。あの音が入ったことでこの曲のカラーが定まったところはあります。

――シンセサイザー、ひいては音の合成に興味を抱いたのはいつ頃でしょうか?

 シアトルで2000年前後だったと思うんですけど、ラップトップバトルのイベントがあって、その当時のCPUやコンピューターのスペックでキーボードを取り出して、音を鳴らしてライブパフォーマンスをするというのは、自分の概念としてはありませんでした。それまでは鍵盤を繋いでシンセサイザーとしてやっているイメージで、YMOやクラフトワークなどのイメージはあったけど、ラップトップだけをステージに持って行って、その中で、リアルタイムで音楽を奏でるというのは凄く衝撃的だったんです。

 当時ラップトップは自分にとってはネットサーフィンしたりとか、文章を書いたり誰かと通信したりと、そういうものであって音楽を演奏する道具という認識がありませんでした。ライブでギターやドラムのように使うということは当時知らなかったから本当にびっくりしましたね。そのときの印象が強く残っています。持ち歩ければいいんですけど難しいじゃないですか。最終的にスマホやラップトップ1台で完結させないと続かないようなライフスタイルだから、それで上手くハマっている感じです。

――DEANさんはアジアやアメリカなど様々な国へ行かれていますが、ラップトップだけでも出来きると感じることはありますか。

 でも、ちゃんとやろうとしたらやっぱりスタジオに入らなければ駄目ですけどね。ラップトップだけで完成させようとは思わないです。それは自分の技術が足りないという部分もありますし。トップDJとかは飛行機に乗っている間にビートを組んでそのままフェスとかでかけたりすると思うけど、例えばそれでCDにするかと言ったらそうじゃないと思います。アレンジを詰めてMIXを詰めてやると思うし。僕の場合はちゃんとスタジオに行かないと駄目だと思います。ボーカル録りとか生で録ることも必要だし、ギターの音やピアノの音とか、必要なときは生で録りますしね。ラップトップだけで完結することにモチベーションがある訳ではないです。

役者は受動的、音楽は能動的

――楽曲「Speechless」のタイトルにはどういう思いを込めたのでしょうか。

 2005年くらいに香港で作った曲があって、それが元ネタになっている曲なんです。ビートを作ってラップを乗せて。とある映像作品のBGMみたいな感じで作っていたんです。これをちゃんとした曲として完成させたいなという思いがずっと残っていて、でもなかなか順番がまわってこなかったといいますか、他のものが先にと縁がある順に発表していきまして。

 それでこの曲が『CANON EOS M6 ASIA AREA』のCMソングのタイアップになっているんですけど、コンセプトがばっちりハマるなと思ったんです。これを2017年リミックスじゃないですけど、作り直して曲の形にしようと決めて、隠された謎を暴くというか、核心に迫るみたいな感覚で(笑)。

 それが例えば、知らなかった美しさを知って“Speechless”になったりとか、残酷なことを知って何も言葉が出てこない“Speechless”とか色々あると思うんですけど、大きく言うと、まだ隠されていた謎を暴くみたいな、その瞬間の感じの“Speechless”のイメージです。それでああいうミステリアスな雰囲気になっています。

――満を持してのお披露目となったわけですね。

 そうですね。「Speechless」のようなビートがもともと僕は好きだったんです。アメリカのラップトップバトルのイベントとか遊びに行ってた頃、トリップホップが当時流行っていたのもあって、Ninja Tuneとかから出ていたのも聴いていました。日本だとDJ KRUSH、USだとDJ SHADOWなどが目立っていた時代ですよね。(※編駐=Ninja Tuneとは1990年にコールドカットの2人によって設立されたイギリス・ロンドンのクラブミュージックのレーベル)

 ああいうちょっと暗いトリップホップの感じが自分の原点だからというところがあるんです。4小節、8小節の繰り返しの上にメロディやラップが乗っかったり、そういうイベントばかりに行っていたから、自分の若かりし頃のこととかも思い出しつつ。CANONのCMのコンセプトとピッタリだと思ったから、リメイクしてEPに収録することになりました。

――「Speechless」からはDEANさんのどこか素の部分、ルーツを感じる部分がありました。

 中華圏に行ってからメインストリームに触れるようになったというか、エンターテインメント性みたいなものは台湾にいた時期に身に付いた感覚なんです。それまではもうちょっと、どんよりしたような音楽ばかり聴いていたから(笑)。ジャズも好きだったし。それまでは熱唱している系の音楽はあまり聴いたことなかったんです。R&Bでもどっちかといったらディアンジェロみたいのが好きでしたから。台湾で色々鍛えられて「エンターテインメントってこういうことだ」というのが身に付いて、アートとエンターテイメントのいいバランス感覚がとれればいいなと思いながらやってきました。だからそういう意味では「Speechless」は素に近いと思いますね。

――そして、今作では言葉と言葉の間を重要視しているのではと感じました。

 間の捉え方としては、あまり詰め込まないようにというか、間はあったらあっただけいいと思うんです。間がリズムをつくると思いますし。必要最低限のものだけで成立させることが一番シンプルにカッコいいと僕は思っています。だからループミュージックにも惹かれるし。基本的にコードプログレッションをあまりしないんです。ずっと4小節とか8小節の繰り返しみたいな。そうじゃない曲ももちろんあるんですけど、コード進行が展開していくことが比較的少ないんです。メロディもつらつらと流れていくよりは、何かを繰り返すチャンティング(詠唱)みたいな感覚の方が好きですし、そのあいだの間は、あればあるほどいいなと思いますけど、もちろんそこはバランスなのでケースバイケースですね。

――DEANさんの思うエンターテイメント性というのは?

 考え方としては、エンターテイメント性、ポップなことをやるというのは「一人でも多くの人に伝えたい」と思えるかどうかだと思うんです。そうなれるかどうかだと思います。自分はそう思うようになったから。その前までは、他人がどう思おうが関係ないと思っていましたから、自分が好きならそれで良いみたいな。それはどっちかというとアートな感覚かなと。ちょっと乱暴かもしれないですけど、その違いではないでしょうかね。だから日本でも台湾でも他の国でも、エンターテイメント性というのは、より拡大思考なものなんじゃないかな…。ということは「届けたい」と思っていることじゃないですか?

――DEANさんの音楽も、今では「届けたい」という思いが一番出ている?

 だから歌詞を書くようになったのかなと思います。それがなかったら、インストで気持ち良いビートを聴いていればそれで幸せだったし、ずっと「歌なんて必要ない」と思っていました。でも言葉で伝えられることとか、歌というものの魅力に気付くことができて、今になってその道を歩んでいるという感じです。

――そういった思いは台湾で育まれたのでしょうか?

 それを経てのジャカルタの日々の方ですね。インドネシアの日々で、明らかに自分の考え方が変わりました。そこに至るまで、中華圏で学んだ事がインドネシアに繋がったと思います。限られた人生で何をやるかと考えたときに、ジャカルタをベースにしながら色んな所に行っていた時期の日々で、自分のアイディンティティが固まっていった感じがします。それが2009年あたりです。28歳、29歳の頃に、一人でも多くの人達に音楽を聴いてもらうために、音楽をやろうと思えたタイミングでした。

――その中で役者として伝えたいことと、音楽で伝えたいことは違いますか?

 役者で伝えたいことってあまりないですね…。自分がプロデューサーや監督にならない限り、「自分がこういうことを思っているから、これを伝えたい」と思って役を引受ける人って恐らくいないんじゃないかな…。どっちかというと、自我みたいなものがあったら邪魔になるかもしれません。だから役者はとても前向きな受け身ですよね。

――なるほど、役者は受動的で音楽は能動的なのですね。では、音楽でこれから伝えていきたいこと、ビジョンはありますか? または挑戦していきたいことなどありましたら教えてください。

 シンプルに言ったら“愛”ですね。例えば今作に収録されている「DoReMi」という曲は、子供以外の方もそうなんですけど、聴いてもらう方々への応援歌みたいなところもあります。聴いてくれるそれぞれの方の気づきになってくれたらいいなと、未来を照らしていくような曲になったらいいなと思っていてて。一緒に育っていくような感じになったらいいなと。こういう風に思う気持ちって簡単に一言で言うと“愛”なのかなと思います。

――2018年はツアー『DEAN FUJIOKA 1st Japan Tour “History In The Making 2018”』も始まりますね。

 チャイニーズ・ニューイヤーのタイミングなので、上手く旧正月感がライブのなかでも出せたらいいなと思っています。サウンド面では前回の『 “History In The Making”』との繋がりだと思っているので、よりソリッドにバンドでの一体感を追い求めて準備をしていきたいと思っています。前回よりも動きをダイナミックにしたいなと思っています。ちゃんとビートを感じて、ステージに乗っかっている方もグルーヴを感じて、お客さんと一体感を作れるパフォーマンスに絶対したいと思っています。ライブだからこそ感じられるような魅力を一曲一曲伝えられたらと思います。

(おわり)