ロレックス サブマリーナ16610LV

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 腕時計投資家の斉藤由貴生です。2017年は数多くの腕時計が値上がりとなった年で、過去最高値(私が確認できる情報の範囲内において)となった腕時計を多々見かけました。以前の記事(「約1年で160万円も値上がり!2017年値上がり腕時計ランキング・ベスト5(ステンレス編)」)でもお伝えしたように1年で160万円の値上がりとなった時計も存在します。

 これまで腕時計相場が大きく動いた際は、リーマン・ショックやアベノミクスなど、世の中に影響を及ぼす経済的出来事と相関関係があるようでしたが、2017年についていえば、そのような大きな経済的出来事があったかというと思い当たる節はありません。
 
 ただし、2017年に多くの腕時計が値上がりした理由として考えられることがあるとすれば、アメリカのトランプ大統領の誕生です。ドナルド・トランプ氏が大統領選で勝利したのは2016年11月でしたが(大統領就任は2017年1月)、その直後の12月頃から一部の時計が値上がり傾向となりました。その際、値上がりが目立った時計こそロレックスのデイトナなのですが、デイトナには値上がりするもう一つの理由が存在しました。

◆デイトナの値上がりとその影響

 それは、ステンレスモデルのデイトナが2016年3月に約16年ぶりにフルモデルチェンジしたこと。ロレックスは新型モデルが登場すると、生産終了となった旧モデルが値上がりする傾向があります。そのため、デイトナが値上がりするというのは珍しいことではありません。しかし、通常であれば2016年3月頃から値上がりするはずだったデイトナですが、値上がりするどころか値下がり傾向となったのです。それが、トランプ氏が大統領選に勝利した後からやっと値上がり状態に転じました。

 デイトナのなかでも特に値上がりしたのが16520というモデルです。16250は2000年に生産終了となったのですが、当時から定価の約2倍というプレミア価格が当たり前でした。

 2016年12月頃から16520は値上がりし、それまで120万円程度だったものが150万円程度まで上昇しました。デイトナが値上がりすると、それにつられるように様々なモデルが値上がり傾向となりました。例えば2017年5月には、サブマリーナ16610LVが数か月前まで70万円台だったのに100万円台に上昇。9月頃にはGMTマスター2の16710が60万円台から80万円台まで上昇しました。

 こうしたことからいえるのは、デイトナの大きな値上がりが他のモデルに対して影響を与えたということ。そしてその余波にはタイムラグがあるという点です。

◆思い出される2014年の事例

 2017年以前に腕時計の値上がりが目立った年といえば2013年なのですが、2013年における大きな経済的出来事としてアベノミクスがありました。その年、特に値上がりが目立ったのはロレックスだったのですが、当時は急激な値上がり現象を一時的なものとして捉える声もありました。しかし、翌年2014年にはさらに値上がり傾向となり、2013年よりも高くなったのです。

 そして、2014年において最も重要だったのパテックフィリップが高くなったという点。アクアノートや年次カレンダーなど多種多様なモデルが、2014年はとても値上がりした印象です。例えば、アクアノートの5167/1Aというモデルは、2014年に約250万円という相場だったのですが、2013年時点では100万円台でした。また、青文字盤のノーチラス3800は現在300万円程度という相場ですが、数多くの腕時計が値上がりしたはずの2013年5月時点では、意外にも約90万円で購入可能だったのです。

 ですから、アベノミクスがはじまった2013年にロレックスが高くなったのに対して、パテックフィリップの値上がりが目立ったのは2014年。実に1年程度のタイムラグがあるのです。

◆2018年の腕時計相場予想

・デイトナの値上がりとその影響が及ぼすタイムラグ
・高くなった年の翌年はさらに高くなった(2014年の事例)
・2014年に高くなったのはパテックフィリップ

 これらの要素から2018年の中古腕時計動向を予測すると、2017年はロレックスが値上がりしたことから、「2018年はパテックフィリップが高くなるのではないか」という結論になります。

 なお、ノーチラスは2017年の段階ですでにデイトナを凌ぐほどの値上がりとなっているため、ノーチラスだけでなく別のモデルに対しても値上がり可能性があると感じます。

 とはいえ、腕時計が値上がりするかを予測しても実際どのような動きになるのか、未来のことなので確実なことは不明です。世の中に影響を及ぼす経済的出来事と相関関係が高いため、リスクがないというわけではありません。国際情勢の悪化など懸念材料もあるといえるでしょう。とはいえ、仮に国際情勢が悪化した場合でも、値下がりする可能性がある一方で、値上がりする可能性もあるかと思います。

 私は過去の事例に基づいて予測をしましたが、どのように予測するかは各人によって異なるでしょう。また、2017年に値上がりしているのはロレックスだけでなく、オメガの一部モデルも値上がり状態。例えばスピードマスター3570.50などは20万円台前半から30万円近い相場になっています。ですから、値上がりするのは意外なブランドという可能性があることも、覚えておいてもいいでしょう。

※「値上がり」等の額は参考値であり、正確性を保証するものではありません。購入等の判断は自己責任で行ってください。

【斉藤由貴生(さいとう・ゆきを)】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢することのプロフェッショナルとして、「腕時計投資」を推奨している。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と、新刊の『もう新品は買うな!』がある