健康な老後は夫婦円満にあり?(depositphotos.com)

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 イギリスの哲学者フランシス・ベーコンの箴言に耳を貸そう。「妻は夫が若いときは愛人になれ。夫が中年になったら友人になれ。夫が年をとったら看護婦になれ」。ベーコンの妻は、愛人にも友人にも看護婦にもなれたかどうかは知らない。だが、結婚して幸運を引き寄せる夫婦があっても不思議ではない。

 University College LondonのAndrew Sommerlad氏らの研究チームは、「婚姻状態と認知症リスクの関連」を検討した15件のシステマチックレビューとメタ解析を実施。その結果、「配偶者と死別した人と未婚者は、既婚者よりも認知症リスクが高い事実が判明した」とする研究成果を『J Neurol Neurosurg Psychiatry』(2017年11月28日オンライン版)に発表した。

認知症リスクは「未婚者」「死別者」も既婚者よりも高いが、「離婚者」は低い?

 発表によれば、Sommerlad氏らは、2016年12月までにMEDLINEを含む医学データベースに登録された15件の研究による計81万2047例(平均年齢72.8歳)を対象に、婚姻状態や配偶者の有無と認知症の関連について定量的なランダムメタ解析を実施。対象者の内訳は、既婚者27.8〜80.1%、死別者7.8〜48.0%、離婚者0〜16%、未婚者0〜32.6%だった。

 その結果は瞠目すべき事実を示した。認知症の発症リスクは「未婚者は42%」「死別者は20%」も既婚者よりも高かった。離婚者のリスク上昇は認められなかった。

 ただし、未婚者のリスクは「身体的健康度で調整すると低下」し、死別者のリスクは「学歴で調整すると低下」した。「身体的健康度」と「学歴」が、交絡因子として影響する事実が確認された。

 また、未婚者のリスクは、研究の方法や時期による差が認められた。たとえば、未婚者のリスクは、新しい研究(被験者の平均出生年が1927年以降)では古い研究(被験者の平均出生年が1927年以前)よりも低くかった。

 Sommerlad氏らは「結婚すると社会との関わりが増えるため、不健康な生活習慣や行動が減少し、認知症リスクが低下する。死別者や離婚者は、ストレスが増大するので、リスクが高まる可能性がある。社会との関わりが学歴や身体的健康に及ぼす影響が大きい点に注目し、未婚者の認知症の予防に取り組むべきだ」」と結論づけている。

「修正可能な危険因子を発見したからといって、認知症を予防できるわけではない」

 一方、シンガポールのNational University of SingaporeのChristopher Chen氏と中国のChinese University of Hong KongのVincent Mok氏は、『J Neurol Neurosurg Psychiatry』に付随論評(2017年11月28日オンライン版)を寄せて、次のようにコメントしている。
 
 「婚姻状態を認知症の修正可能な危険因子に追加するとしても、今回の観察結果を認知症の有効な予防方法にどのようにつなげるべきかという問題が残る。修正可能な危険因子を発見したからといって、認知症を容易に予防できるわけではない。したがって、医学的プログラムとともに、認知症への誤解や偏見の解消と認知症患者に優しいコミュニティーの構築を推進すべきである」

離婚すれば、脳卒中、肝硬変のリスク、自殺に至る恐れも

 ところで、パートナーとの離別・死別は、認知症だけでなく、脳卒中や肝硬変、余命にも影響を及ぼすとする報告もある。日本人の生活習慣とさまざまな病気との関係を究明し、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸に役立てるための多目的コホート研究(JPHC研究:Japan Public Health Center-based prospective Study)を見よう。
 
 昨年(2016年)3月28日、国立がん研究センターの予防研究グループは、約15年に渡って追跡調査し、「婚姻状況の変化(既婚者から非婚者へ)」と「脳卒中発症のリスク」との関連性を発表した。対象は、研究開始時の1990年(および1993年)に、全国9カ所の保健所管内で既婚者だった40〜69歳の男女約5万人。調査開始から5年前に配偶者と同居(既婚)していた対象者が選ばれ、婚姻状況の変化による影響を調べた。

 その結果、2134人が脳卒中を発症し、婚姻状況に変化が生じた人ほど発症リスクが高かった。特に脳出血のリスクが高く、男女差は見られなかった。

 また、国立社会保障・人口問題研究所が発行する雑誌『人口問題研究』(1999年)は、日本人の男女を「’朸者あり」「配偶者と死別」「G朸者と離別」「ぬずА廚4グループに分類し、それぞれの「平均余命」を算出して公表した。

 その結果、婚姻状況の変化がアルコール摂取量を増加させるため、肝硬変などの発症リスクが高まることが判明。さらに、居住形態や経済環境が一変し、人間関係の悪化や破綻によるストレス過剰に陥れば、最悪の場合は自殺に至るリスクが強まる事実が確かめられた。 

 今回の研究成果は、どれも恐ろしい。それは男女差がないからだ――。冒頭の名言を想起しよう。「妻は夫が若いときは愛人になれ。夫が中年になったら友人になれ。夫が年をとったら看護婦になれ」。古今東西、幸福な結婚の真理はただ一つ、夫婦円満!
(文=編集部)