インフルエンザワクチンを毎年接種すると免疫力が高まる(depositphotos.com)

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 インフルエンザワクチンの不足騒ぎが起きている今年(2017年)、厚生労働省は10月に、13歳以上の任意接種については接種回数を原則1回とすることを徹底し、2回接種を控え効率的に使うよう異例の通達を出した。

 接種は1回でも2回でも変わらないのか? あるいは毎年、本当に接種必要があるのか? 

毎年インフルエンザの予防接種を受けると次第に免疫力が低下していく!?

 そもそも予防接種には、法律に基づいて市区町村が主体となって実施する「定期接種」と、希望者が各自で受ける「任意接種」がある。インフルエンザは「任意接種」となっている。

 やはり任意なのか? 接種しても接種しなくても、どっちでもいいのか?

 はしか(麻しん)や結核を予防するBSGワクチンは毎年受ける必要がない。これは、予防接種による免疫が長く続くからだ。

 これに対してインフルエンザワクチンの場合は、予防効果が期待できるのは、接種した2週間後〜6カ月程度と考えられているのだ。さらにインフルエンザのウイルス型は大きくA型、B型、C型の3種に分類され、どの型が流行するかは毎年違う。特にA型は毎年少しずつ変異しながら流行を繰り返す。このため、その年ごとに流行を予測してワクチンが作られている。

 また、高齢者(65 歳以上の者)や妊婦、小児、医学的にハイリスクの人などは、感染して重篤化する可能性が高く、命にかかわる。このため毎年、流行する前に予防接種を受けることが推奨されている。

 ところが、一部で「毎年インフルエンザの予防接種を受けると次第に免疫力が低下していく」という、まさに都市伝説を信じる人がいるという。

 もちろん「そのようなエビデンスはない」。むしろ、インフルエンザワクチンの接種歴が1回だけという人よりも、毎年接種してきた人の方が、免疫力が高いことを示した研究結果がある。

インフルエンザワクチンを毎年接種すると免疫力が高まる

 ベルゲン大学(ノルウェー)臨床科学部のRebecca Cox氏らがこうした俗説を打ち破る研究を実施した。

 以前より繰り返しワクチンを接種することでウイルスなどに感染した細胞を破壊するキラーT細胞(CD8陽性T細胞)の働きが阻害されることが、動物実験と免疫が低下した小児を対象とする研究で示されていた。

 そこで同氏らは、健康な成人でも繰り返しインフルエンザワクチンを接種すると免疫が低下するのかどうか調べたという。Cox氏らによる研究の詳細は「The Journal of Infectious Diseases」3月号に掲載されている。

 対象は、2009年にインフルエンザワクチンを接種し、それ以降は接種したことがない医療従事者と、同年以降も毎年ワクチンを接種していた医療従事者の計250人。インフルエンザの流行シーズンが始まる前またはワクチン接種時に採取された血液サンプルを用い、抗体価とキラーT細胞およびヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞)の活性を評価した。

 その結果、ワクチンを接種した人では接種回数にかかわらずインフルエンザウイルスの感染を予防できるレベルの抗体価が維持されていた。また、接種歴が1回だけの人と比べ、毎年接種していた人ではヘルパーT細胞の活性が高く、ウイルス感染と戦う能力が高いことが示された。

 呼吸器専門医である米レノックス・ヒル病院のLen Horovitz氏は「毎年予防接種を受けてもウイルスから身を守るもう1つの防御力が失われるわけではないことを示した研究結果であるといえる」と説明。

 一方、米ノーザン・ウェストチェスター病院の感染症診療部門に所属するDebra Spicehandler氏も「この研究結果は、毎年インフルエンザワクチンを接種しても、自然免疫は低下しないことを示している」と話している。

 日本でのインフルエンザの発生は、毎年11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1〜3月頃に患者数が増加し、4〜5月にかけて減少していくパターンを示す。

 12月にはワクチンの供給も安定化してきた。未接種の場合はやはり接種をするべきだ。
(文=編集部)