松屋銀座はイベリコ豚の生ハム丸ごと1本を福袋として販売する。台とナイフもセットになっている。その名も「フォトジェ肉」。価格は税込み21万6000円(約44万円相当)で限定2点(写真:松屋)

百貨店各社が初売りの目玉企画として販売する福袋。2018年は主要な百貨店が1月2日の初売りに向け、「コト消費」を意識した参加・体験型といった趣向を凝らした福袋をそろえた。

将棋界で中学生棋士の藤井聡太四段が活躍していることは、多くの人が知るところ。百貨店大手の高島屋が売り出す福袋は、なんと「藤井四段の師匠、杉本昌隆七段と対戦できる権利」だ。購入者は杉本七段との対局や将棋講座の受講ができる。価格は税込み2018円。小学生を対象に、東京と大阪の2会場で実施する。

プロフィギアスケーターの指導も


高島屋では将棋に加え、フィギアスケート人気を取り込んだ福袋を用意する(撮影:尾形文繁)

高島屋は2018年2月に開催される平昌五輪を見据えフィギュアスケートにも着目し、「織田信成氏のアドバイスを受けることができる権利」も販売する(税込み2018円)。小学生を対象に、新横浜と大阪で実施する。 

購入者は、プロフィギュアスケーターでタレントとしても活躍する織田氏のスケート教室やトークショーに参加することが可能になる。

高島屋は「顧客のニーズが高いものを福袋として提供する」と語る。藤井四段の快進撃で盛り上がる将棋界や、ファンが多いフィギュアスケートの人気を取り込み、初売りに弾みをつける狙いだ。

老舗百貨店の松屋は基幹店である松屋銀座の初売りで、400種類3万個の福袋を用意し、前年比3%増の売り上げを目指す。

松屋の目玉商品は「君の足を速くする福袋」。400メートルハードルの日本記録保持者、為末大氏がプロデュースするTRAC(かけっこスクール)が、購入者に特別レッスンと靴選びを指南するという内容だ。レッスン全2回のうち1回は為末氏が特別指導する。価格は税込み2万円。小学生を対象に、新豊洲のランニングスタジアムで実施する。

「日本人初の100メートル9秒台の大記録が出たことに注目し、それを福袋に反映した。『小学生は走り方を少し教わるだけで速くなる』とも言われていることから消費者の関心は高く、商品に対する問い合わせが多い」と、松屋の担当者は話す。

松屋は同時に、「キャリアウーマンの靴を35足そろえた福袋」も販売する。お笑い芸人、ブルゾンちえみの流行語「地球上に男は何人いると思っているの? 35億」にちなみ、パンプスやサンダル、ブーツなどを35足も詰めこんだ。1人限定で、税込み3万2400円(総額65万円相当)。

電車を運転できる福袋も


松屋銀座では、お笑い芸人のブルゾンちえみの流行語にちなみ、35足の靴を詰め込んだ福袋を販売する(写真:松屋)

35足並べるとインパクトは相当なものがあり、松屋はインスタ映えを重視する消費者に訴求する構えだ。

松屋は入社3〜4年目の20代社員が中心となって、福袋のアイデアを考えている。若手社員の柔軟な発想で、消費者の目を引き、かつ“遊び心”のあるものを投入しているという。

関西圏で「庶民派」として親しまれる近鉄百貨店は、親会社と連携し「近鉄電車を運転できる福袋」を売り出す。税込み2018円。購入者は近鉄の車庫内約100メートル区間で、2両編成の近鉄電車の運転体験ができる。運転講習修了証や近鉄電車の鉄道グッズも提供される。

「3年前から実施しているが、毎年好評。プラレールの人気が依然高く、電車好きの子どもも多いので、そういった親子連れの鉄道ファンから支持を得ている」と、近鉄百貨店の担当者は説明する。

百貨店国内首位の三越伊勢丹ホールディングスも多様な福袋をそろえる。基幹店の1つである銀座三越では「あなたがモデルになる権利」を販売。1人限定で税込み108万円。雑誌『LEON』の石井洋編集長が衣装を選定し、同誌で活躍するカメラマン、スタイリスト、ヘアメイクがコーディネートする。

表紙、裏表紙の2カットを撮影し、購入者オリジナルの『LEON』を作成する。撮影で使用した衣装は、購入者にプレゼントされる。

老舗洋食店とのコラボ福袋も


日本橋三越本店では、老舗洋食店「たいめいけん」とコラボレーションした体験型福袋を販売する(編集部撮影)

日本橋三越本店では「たいめいけんの個室で特別パーティを開く権利」を売り出す。2組(1組6人)限りで、税込み10万8000円。日本橋の老舗洋食店「たいめいけん」の本店3階を貸し切り、購入者の面前で三代目の茂出木浩司シェフがオムライスを仕上げるなど、特別洋食フルコースを堪能できる。

こうした参加・体験型の福袋は数量限定のため、ほとんどが抽選販売となる。購入希望者は事前に受け付け指定された百貨店に足を運び、専用応募用紙で申し込まなければならない。

話題性のある福袋をそろえることは、百貨店にとっては消費者の来店を促す動機づけになるというわけだ。また、子どもが飛びつくような福袋を用意すれば、これまであまり百貨店を利用してこなかったファミリー層など新しい顧客層の開拓につなげることもできる。

とはいえ、多種多様な福袋の積極投入は裏返せば、従来の商品詰め合わせ型だけでは消費者を呼び込めないことを物語る。「消費者の目はより厳しくなっている。安くても、必要のないものは買わない」(ある百貨店の担当者)。

インターネットによる通販の急拡大など競争環境が激しさを増す中、移ろいやすい消費者の心をいかにとらえるか。百貨店の現場では、いっそうの知恵と工夫が求められる2018年となりそうだ。