小田急電鉄の新型ロマンスカー「70000形」(愛称:GSE)は「ローズバーミリオン」のカラーリングが印象的だ(撮影:梅谷秀司)

JR発足30周年という節目の年となった2017年の鉄道業界は、春から夏にかけてJR東日本「トランスイート四季島」、JR西日本「トワイライトエクスプレス瑞風」、東急電鉄「ザロイヤルエクスプレス」の運行が始まり、JR九州の「ななつ星 in 九州」も合わせてクルーズトレインが競演するという華々しいトピックスが踊った。しかし、秋口を過ぎると、東海道・山陽新幹線の重大インシデントやJR京浜東北線の架線切れなど、トラブルが多発するという波乱の幕切れとなった。

では2018年の鉄道業界はどのようなものになるのだろうか。鉄道業界の最大のトピックスといえば新規路線の開業だが、今年予定されているものはない。2019年にはJRおおさか東線・放出―新大阪間、沖縄都市モノレール・首里―てだこ浦西間などの延伸開業が控えているので、2018年は翌年の飛躍に備えた雌伏の年という位置づけといえる。一方、新型車両は昨年に引き続き数多く登場する。2020年の東京オリンピックを控え、インバウンド(訪日外国人)の需要を取り込む動きがさらに活発化しそうだ。

小田急のロマンスカーが新旧競演


小田急の新型ロマンスカー「GSE」では先頭車のフロントガラスを高さ方向で「VSE」より30cm広げた。また、柱の位置も工夫したことで、展望席からの眺望もより広がった(撮影:梅谷秀司)

私鉄では、小田急が新型ロマンスカー「70000形」(愛称:GSE)を3月に投入する。ロマンスカー伝統の2階建てが特徴だ。GSEは老朽化したロマンスカー「LSE」の置き換えという位置づけ。ただ、GSEと入れ替わりでLSEが退役するのではなく、「少しだけGSEとLSEが並存して走る期間がある」(星野晃司社長)。新旧ロマンスカーの競演が見られるのは貴重な機会といえる。

小田急は、複々線化工事完了に伴い、3月に実施する大幅なダイヤ改正でも注目を集めている。運行本数を大幅に増やし、朝ラッシュ時の輸送力を4割強化することで、混雑率は現行の192%から150%程度まで下がる見通しだ。始発列車やロマンスカーも増発するため、座って通勤できる可能性も増えるという(「混雑ワースト3脱却、『小田急新ダイヤ』の威力」)。


西武鉄道が開発を進める新型特急車両のイメージ。2018年度末の営業開始を予定する(写真:西武鉄道)

西武鉄道は、「いままでに見たことのない新しい車両」をコンセプトとした新型特急車両を開発中。周囲の風景に溶け込むような車体外観のイメージは、確かにこれまでにない印象を受ける。はたして実際にはどのような仕上がりとなるか。営業開始は2018年度末の予定だが、年内にその姿を見せる可能性もある。


JR東海が開発中の次世代新幹線「N700S」の車体。営業運転開始は2020年度を計画する(撮影:尾形文繁)

新幹線にも動きがある。JR東海(東海旅客鉄道)が開発中の次世代新幹線「N700S」が3月にお目見えする予定だ。今回登場するのは「確認試験車」と呼ばれる試験運転用の16両1編成。営業運転は行わず、いつどこで走るかを事前に知るのは難しい。やはりダイヤが非公開で、遭遇できれば幸せになるとさえいわれる新幹線電気軌道総合試験車「ドクターイエロー」並みの人気を得られるだろうか。

在来線でも量産先行車が続々登場

在来線では、JR東日本が新潟・秋田地区に投入する新型気動車「GV-E400系」を開発中。量産先行車3両がもうじき落成する。ディーゼルエンジンと発電機による電力により、モーターで走行する電気式気動車で、量産車が新潟地区に2019年度までに、秋田地区に2020年度までに投入される予定だ。

また、JR北海道は老朽化したキハ40形の置き換え車両として、GV-E400系をベースとした新型「H100形」の開発を進めている。極寒対策など北海道に特有の仕様が付加されるのが特徴だ。2月に量産先行車が登場し、およそ1年間の試験走行を経て来年度以降に本格投入される。JR東日本が開発中の車両に基本仕様を合わせることで、車両開発コストを低減できるというメリットがある。JR九州も、蓄電池とディーゼル発電機のいずれでもモーターを動かして走行できる新車両の試作車を今年半ばには完成させる予定だ。


東急電鉄の新型車両「2020系」。田園都市線に2018年3月から導入を始める(撮影:山内信也)

通勤電車では東急電鉄が田園都市線に新型車両「2020系」を3月に導入する。大容量の情報管理装置を採用し、車両故障の未然防止を図るという。田園都市線では地下インフラ部分だけでなく、車両故障を原因としたトラブルも少なくない。新型車両導入でトラブル減少が期待されるが、3月に導入されるのは3編成のみ。車両トラブルが目に見えて減るまでには、まだ時間がかかりそうだ。

相模鉄道は2019年度にJR線、2022年度に東急線との相互直通化など都心乗り入れを控えており、ブランドイメージと認知度向上を図る「デザインブランドアッププロジェクト」に取り組んでいる。その一環として、東急との直通運転を行う「20000系」を開発。2月に営業運転を開始する。横浜の海をイメージしたという深い青色の塗装が特徴的だ。

インバウンド需要受け、地下鉄にも新型車両

東京メトロでは2018年度に丸ノ内線で新型車両の導入を計画している。非常用走行バッテリーや曲線通過時の騒音・振動を減らす効果がある操舵台車などを備えた車両になる計画だが、まだデザインなどの詳細は発表されていない。


東京都交通局の新型車両5500系。都営地下鉄浅草線に今春から導入する予定だ(撮影:尾形文繁)

東京都交通局は、都営地下鉄浅草線に新型車両5500系を今春から導入する。浅草線は成田空港や羽田空港に直通するほか浅草や東銀座など都内の名所も走るため、訪日外国人(インバウンド)の利用が多い路線だ。デザインは沿線にある歌舞伎座にちなんで、歌舞伎の「隈取り」をアレンジしたものだが、訪日客の話題を集めることができるか。


JR三江線は利用者の減少で、2018年3月末で廃線になる(記者撮影)

新型車両登場は鉄道業界にとって華やかなニュースだが、一方で寂しい話題もある。島根県江津市と広島県三次市の108kmを結ぶJR三江線(江津―三次)が、利用者減少で3月31日をもって運行を終える。最近は、今のうちに乗っておこうというファンで連日盛況だ。思わぬ「廃線特需」には地元住民も複雑な心境に違いない。

三江線は2013年の集中豪雨で鉄橋が流出するなど壊滅的な被害を受けた。当時から廃線は取りざたされていたが、「被災と廃線論議は別の話」(JR西日本)という理由で沿線自治体とともに復旧を決断、2014年に運転再開にこぎ着けた。それから4年足らずで結局廃線。莫大な復旧費用を考えるとやりきれない思いも残る。

3月にはJR各社のダイヤ改正が実施される。大きくダイヤが変わるのはJR九州(九州旅客鉄道)だ。九州新幹線「つばめ」「さくら」の6本を含め、在来線特急や普通列車を中心に1日当たり合計117本の大幅減便となる。2018年は鹿児島県がNHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」の舞台となり、多くの観光客が押し寄せると思われるが、鹿児島県も九州各地で進む減便の流れから逃れられなかった。

同じ九州では、昨年7月の九州北部豪雨の影響で不通となった久大本線・光岡―日田間(いずれも大分県日田市)が7月ごろに運転再開の見通しだ。久大本線は九州でも指折りの人気観光地・由布院(湯布院)や「九州の小京都」と呼ばれる日田を沿線に抱える観光路線。復旧を機に観光客を呼び戻したいところだ。

海外ではメーカーの大型再編が進む


仏アルストム製の高速列車TGV(手前)と独シーメンス製の高速列車ICE(奧)(記者撮影)

海外に目を転じると、ドイツのシーメンスとフランスのアルストムが年末までに鉄道事業を統合し、新会社「シーメンス・アルストム」が誕生する。鉄道メーカー世界2位と3位の統合は世界の鉄道勢力図にどのような影響を与えるのだろうか。中国も国内2社を統合し、中国中車という世界最大のメーカーを作り上げた。

シーメンスやアルストムと並ぶかつての「ビッグスリー」の一角、ボンバルディアはカナダの航空機事業の一部をエアバスに売却するなど経営に大なたを振るう。はたしてドイツの鉄道事業は無傷でいられるか。業績低迷中の米ゼネラル・エレクトリック(GE)は電力、航空機、ヘルスケアの中核3分野に事業を絞り込み、鉄道事業の売却を打ち出している。世界の車両メーカーは再編に拍車がかかった。日本メーカーは次にどのような手を打つのか、目が離せない。