ローリングストーン誌が選ぶ「2017年ベスト・ポップ・アルバム」20枚

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ロード、テイラー・スウィフト、ハリー・スタイルズ、ケシャといった時代を象徴するアイコンに、伝説的バンドのブロンディ、新鋭デュア・リパまで。2017年に人々の心を掴んだポップ・アルバム20選を紹介する。

20位 P!NK『ビューティフル・トラウマ』
19位 アンバー・コフマン『City of No Reply』
18位 ポッピー『Poppy.Computer』
17位 ナイル・ホーラン『フリッカー』
16位 ガール・レイ『Earl Grey』
15位 デミ・ロヴァート『Tell Me You Love Me』
14位 エイミー・マン『メンタル・イルネス』
13位 トーヴ・ロー『Blue Lips』
12位 イェンス・レークマン『ライフ・ウィル・シー・ユー・ナウ』
11位 ケリー・クラークソン『ミーニング・オブ・ライフ』

10位 ブロンディ『ポリネーター』

どんなバンドでも40年に渡ってフレッシュな音楽を提供し続けることは至難の技であり、どんなバンドもブロンディにはなり得ない。アルバム『ポリネーター』では、デヴ・ハインズ、チャーリーXCX、シーア、ザ・ストロークスらと楽曲を共作し、現代のロック・バンドやポップ・アクトとの間にブロンディならではの繋がりを見出している。その結果としてできあがった作品は、ニューウェイヴ、エレクトロディスコ、ダンスポップなどのジャンルを縦横無尽に動き回る爽快で楽しいポップスの宝石箱。ジャンルを超越したパンク・バンドの先駆け、ブロンディの面目躍如といえる最新サウンドだ。

9位 デュア・リパ『Dua Lipa』

コソボ人とアルバニア人の移民を両親に持つ、ロンドン育ちのシンガーソングライター、デュア・リパ。男心を惑わす曲「Be the One」を2015年にリリース以来、シャープなシングルを次々と発表。昨年の「Hotter Than Hell」がじわじわと注目を集め、遂にイギリスで大ヒットした(この2曲ともデビュー・アルバムに収録されている)。P!NK風のハスキーな声色とシーア風の芝居がかった表現が合体したようなデュア・リパだが、恋人を軽くあしらう「IDGAF」や、ミゲルの熱量を調和させたエロティックな「Lost in Your Light」では、デュアの歌声がピンクやシーアよりも温かく聞こえる。ここ数年のクラブ系ポップスのフレーバーがすべて詰め込まれたビートが彼女の歌声と見事にマッチし、ディープハウスのソウルフルな鼓動が息衝いている。

8位 チャーリーXCX『ナンバー1エンジェル』

ポップス界ナンバー1の永遠の反逆者ことチャーリーXCXが、目を見張るほど最高のミックステープでメインストリームに戻ってきた。ダンス・ポップスの実験集団PC Musicのメンバーとのコラボ、ヒップホップ寄りのプロモ・シングルのリリースなど、2014年にリリースされた前作『SUCKER』以降の彼女の音楽活動が集約された作品となっている。エキセントリックなビートとバブルガム・サウンドが共存するこの『ナンバー1エンジェル』には、「Lipgloss」でソフィーや新進気鋭のラッパーCupcakKeと一緒にEDMで大興奮したり、「3AM (Pull Up)」でMøとクラブで騒いだ後のロマンチックで夢心地なまったり感を味わっていたりと、イギリスのスター、チャーリーXCXの斬新でちょっと風変わりなポップのエッセンスがふんだんに詰め込まれている。

7位 ラナ・デル・レイ『ラスト・フォー・ライフ』

アルバム『ラスト・フォー・ライフ』のオープニング曲「LOVE」。フィル・スペクターとアトランタ・トラップの間に広がる大きな溝を埋めるようなベースが響くと、ラナ・デル・レイは「過去の一部 でも今のあなたは未来」と歌う。彼女の5枚目のアルバムは、一聴すると心地良い日暮れの雲の上を漂うお馴染みの雰囲気の音楽に聞こえるため、収録曲の大胆なまでに独創的な本質を見落としてしまいがちだ。まるでスマホの連絡帳をスクロールするように、ラナは摩訶不思議なキャラクターをシャッフルして身にまとう。歌詞はイギー・ポップ、パッツィー・クライン、ブライアン・ウィルソン、レッド・ツェッペリンを想い起こさせる。参加ゲストはウィークエンド、スティーヴィー・ニックス、エイサップ・ロッキー、ショーン・レノンなど。”異常”という我々の新たな”正常”の無力さを呼び覚ますために彼女は何でもやる。「ホエン・ザ・ワールド・ワズ・アット・ウォー・ウィ・ケプト・ダンシング」では「これは一つの時代の終わりなの? これがアメリカの終焉?」「いいえ、これは始まりにすぎない」とソフトに語りかけるように歌う。恐ろしいことに、彼女のこの歌詞の示すところが今年アメリカで作られたすべての曲に通じるのも真実だ。

6位 パラモア『アフター・ラフター』

パラモア特有のハイテンションなフックと聞く者の自信や気力を萎えさせる歌詞が、『アフター・ラフター』では蛍光塗料のような鮮やかさをもって炸裂している。絶望へと横滑りしながら落ちていく様子を事細かに描写しつつ、ポップス界随一の躁病患者の理想像を描き出そうとしているかのようだ。意気消沈しつつもダンサブルな「ハード・タイムス」、ミラーイメージ的でアシッドなシンセポップ「ローズ・カラード・ボーイ」、悲痛なほど巧妙なストリングス・バラッドの「26」で分裂気味の躁状態になり、ここにハイライフ調のギタートーンとゆらゆら揺れるカウンターメロディーが加わって、オーバーヒートした空気感を作っている。ヘイリー・ウィリアムスのいつも通りのパワフルで率直なパフォーマンスは、優しく囁く歌声にも、子供っぽくはしゃぐような歌声にも、等しく説得力を持たせている。彼女の虚勢のおかげで『アフター・ラフター』が外界に疲れた彼女の子細な記録だということを忘れてしまうほどだ。

5位 ハリー・スタイルズ『ハリー・スタイルズ』

ワン・ダイレクションでの輝かしい活動を考えると、ハリー・スタイルズなら、望めばどんなことでもできたはずだ。ソロになるという大きな変化を迎えた彼には、豪華絢爛なラジオ・ポップ曲を歌うことも、セレブをゲストに迎えることも、有名プロデューサーを好きに選ぶこともできただろう。しかし、スタイルズはロックスターという肩書を賭けて、70年代スタイルのギター・グルーヴを持つ素晴らしいアルバムを作ることにしたのである。深奥なアコースティック・バラッドの「スウィート・クリーチャー」「エヴァー・シンス・ニュー・ヨーク」、オアシス的側面を前面に出した「キウイ」、自身の愛したミューズとの別れの悲しみを、コズミックメンターのスティーヴィー・ニックスを援用しつつ歌った「ツー・ゴースツ」。世間に認めてもらいたいという余計な必死さもなく、ワン・ダイレクション時代の活力と自信を失うことのない彼は、ソロに転向した他のボーイズグループ出身シンガーとは一線を画している。さらなる躍進が期待されるこの男から目を離してはいけない。

4位 サム・スミス『スリル・オブ・イット・オール』

サム・スミスは液体のように滑らかなソウルマンだ。オーティス・レディング、アリサ・フランクリン、レイ・チャールズの流れを汲みつつ、エイミー・ワインハウスやアデルなど、近年のアイコンの影響も取り入れる柔軟さを持つ。大ヒットアルバム『イン・ザ・ロンリー・アワー』に続くこの作品では、”彼の声”がすべてを先導している。初期の頃のシグネチャーだったクラブビートは鳴りを潜めているが(ディスクロージャーの「Latch」参照)、ファルセットがかった魅惑のボーカルはそれを補って余りあるだろう。特筆すべきは「ヒム」。クィアの恋愛感情と、それに対する文化的な非寛容をうたった感傷的なこの曲は、派手さを排除したゴスペル風で、LGBTQの公民権運動のアンセムとなっている。これは自分なりのやり方で世界中の人々へ熱心に手を伸ばしている一人のゲイのサウンドであり、その目的を達成している音楽である。

3位 テイラー・スウィフト『レピュテーション』


悪感情(「Bad Blood」)は家の中で生まれる! 何ヶ月も表舞台から姿を消していたテイラー・スウィフトが、華やかに飾られた恨みと水晶のようなトラップビートで埋め尽くされた、きらびやかな音の宮殿とともに華々しくかつ大胆にカムバックした。「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ〜私にこんなマネ、させるなんて」での悪女っぷりはぜひ歴史書に記録して、これが画期的なPR作戦なのか、世紀の大失策なのかを、後世のポップス学者たちに何世代にも渡って討論してもらいたいものだ。ラッキーなことに、シングル・カットされたのはアルバムで語られるストーリーの前半部分だけで、同作に収録されているスウィフト史上、最もリアルで、最も生々しい曲はピカピカに磨かれたサウンドの後ろにしっかりと隠されている。「ドレス」では新しいロマンスの到来に興奮しているテイラーがいる。「ニュー・イヤーズ・デイ」ではパーティーが終わったあとに何が残るかを思い悩む彼女がいる。そして最後に、我らがスウィフト女王は、気分次第で最先端ポップスの王座にいつでも返り咲けることを、これ見よがしに見せつけるのである。

2位 ケシャ『レインボー』

裁判での辛苦のあとのリリースという状況ゆえ、どんな作品であっても当座の成功は保証されていただろう。しかし、デビューから7年経った今回のカムバック作品は、人々の想像を遥かに超えた、芸術の戦士の強力な雄叫びといえるものとなった。まずはアコギで奏でられるアンセム「バスタード」で幕開けする。この曲はコンサート会場で観客が一斉にライターを灯す往年の曲さながらだ。そこからケシャは下品な「レット・エム・トークfeat. イーグルス・オブ・デス・メタル」でパンク・ポップに舵をきり、「あちこちのヘイターたちに私のディックをしゃぶらせることにしたの」と生意気な小悪魔ポップス調で歌う。これに似た珠玉の瞬間が次々と飛び出してくるのだが、最高の瞬間は「ウーマンfeat.ザ・ダップ・キング・ホーンズ」でやってくる。最初のヴァースの真ん中で彼女が歌いながらいきなり笑い出すその声は、自分の中の絶対的な強さを確信して、地獄のような日々を生き延びた者にしか出せない声だ。

1位 ロード『メロドラマ』

「ロイヤルズ」で登場した10代の神童も20歳になり、共同プロデューサー、ジャック・アントノフの協力を得て、従来のヒューマン・スケールと手作り感は残しつつも、エレクトロニック・ミュージックの壮大な風景を導入した2枚目のLPでさらなる音楽の高みを目指した。無敵の不機嫌な高校生ロードの感情パレットはその絵の具の数を膨大に増やし、シンセ・ビートとダブ・エフェクトの隙間を縫って聞こえてくるギターと管楽器の音風景も大きな広がりを見せる。最も野心的な収録曲はアート・ロックの母ケイト・ブッシュを彷彿とさせる(シングル曲「グリーン・ライト」参照)。しかし、今作での一番の功績は、21世紀のポップスのフィールを巨大に広げながらも純粋なまでの深奥さを持たせた点だ。これから世に出てくる若手ポップ・ミュージシャンたちの試金石となるべき1枚である。