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フェラーリ! 思ってもいなかったチャンスが

わたしは富士スピードウェイにいた。4週間連続週末レースというスケジュールの中で、もっと速く走りたい、勝ちたい、と思い、平日の合間を縫って、相棒のロードスターで富士スピードウェイに練習に来ていたのだ。

朝、1本目の走行が終わったところで井原先生から着信があった。

「今、フェラーリのインストラクターで富士にいるんだけど、クリスタルルーム2階に来れる? 紹介したい人がいるの」

わたしは、すごいなあ、フェラーリのインストラクターか……やっぱり一度は乗ってみたいなと思いながらクリスタルルームへ。

指定された部屋を覗いてみると、そこは今まで見たことのない空間が広がっていた。壁が1面フェラ^リの鮮やかな赤でセッティングされており、高級感が溢れている。

見慣れているはずのクリスタルルームが、外国のホスピタリティのクオリティの高さに異国にいるかのように感じた。

フェラーリへの憧れと「ル・マンに参戦するときはこれが普通なのかな」と妄想を膨らませ、少し緊張しながらその部屋に足を踏み入れた。

中に入ると、外国の方が多く、日本であることを忘れるかのような雰囲気。英語で話しかけられたら上手く返答できるだろうか……と頭の中で知っている単語を並べながら井原先生を探す。部屋の奥に井原先生の姿を見つけた瞬間ほっとしてすぐに駆け寄った。

井原先生以外のインストラクターの方々と軽く挨拶を済ませると、「今回、メディア枠でフェラーリを取材して良いって!同乗走行もあるから勉強になると思うよ。運転は出来ないかもしれないけどね」と井原先生。

わたしは、フェラーリ!! あの憧れの車に乗れるなんて!!

運転できなくても、井原先生の同乗走行に乗って、色々感じ取って勉強しよう。

フェラーリに乗せていただくというチャンスを頂けたことに感謝し、胸の鼓動の高鳴りを止められなかった。

走行時間となり、パドックへ向かうと最新のフェラーリがずらりと並んでいる。赤、黄色、青と色とりどりなフェラーリ達が「俺が一番かっこいいだろう」と言わんばかりに1台1台が堂々としていてつい見とれてしまう。

はじめてのフェラーリ助手席体験

いよいよ走行が始まり、井原先生をはじめプロドライバーが順番に同乗者を乗せて富士スピードウェイを駆け抜ける。

フェラーリエンジンの低すぎず高すぎない気持ちの良い音が富士スピードウェイに響き渡らせながらものすごい速さでわたしの目の前を駆け抜けていく。今までフェラーリは何度も見たことがあるはずなのに実際に乗るとなるとよりかっこよく見えた。

わたしの番だ! と立ち上がると目の前に1台のフェラーリが止まる。車両はフェラーリ488GTB。「宜しくお願いします!」緊張で声が震えないように必死に抑えた。今回はフェラーリのノーマル車に同乗とのことで、助手席シートに座るとまず柔らかさに驚いた。世界を代表するスーパーカーだから、ガチガチのシートなのだろうと勝手に予想していた。

ソファのような材質。だからといって、体が包み込まれすぎず、きちんとフィットし、体に吸い付くような感覚があった。

いよいよ走行が始まる。助手席にいたわたしは、一体どんなスピードなんだろうとワクワクしすぎて体中が暑かった。そしてスピードに備えてか、体が無意識にドアノブにしがみついていた。

先程外から聞いていたフェラーリサウンドは、車内でも心地良い音が聞こえるが、うるさくはない。スムーズに発信し、わたしを乗せたフェラーリはコースへと出ていった。

わたしはこの時初めて知ったのだが、フェラーリのステアリングには5段階のトラクションコントロール装置がついていた。5つのモードをひとつずつコーナーごとに切り替えて体験させてもらった。

とりわけ度肝を抜かれたのは「WET」モードだ。

通常、向きを変えている状態でアクセルを全開にすると、もちろんスピンしてしまうのだが、このWETモードだとどんなにラフにアクセルを全開にしてもコンピューターで判断し、車が自動でアクセルコントロールを行い、スピンを防いでくれる。インストラクターの方がコーナー途中で「ほら! アクセルベタ踏みだけどしっかり立ち上がってくれるんだよ」と説明を受け、アクセルを全開にしている姿を見た時、わたしはスピンする映像が頭のなかで再生され、ヒヤッとしたがそんな心配は無用。しっかりと車はコーナーを立ち上がっていった。

「SPORT」モードでもスピードを出しても安定してコーナリングできた。「RACE」モードとなると、リアのトラクションコントロールが弱くなり、リアが出やすく、サーキット向きの車体の動きになった。

ここまではまだコントロールできそうだと感じていたが、「CT OFF」、「ESC OFF」モードになると、今までの感覚とは全く異なり、ペダル操作やハンドルコントロールが忠実に車体の動きに影響し、リアを出しながら前に進む、半分ドリフトのような感覚で走行していた。

この走行を見て、「これは難しそうだし、繊細な運転をしなくてはだめだな……自分の今の運転スタイルだとどうなるんだろう」と不安に思う気持ちと普段からもっと丁寧な運転を心がけようと改めて感じた。

そんなことを感じながらストレートに戻る。

朝走っていたロードスターの走行であればストレートの途中でリミッターがあたり、少しの休憩タイム……となるが、今回は違った。

最終コーナーを立ち上がった瞬間、シートに体が押し付けられた。Gがすごい。そこから一気にスタートラインを過ぎ、気がつけば1コーナー。体感したことのない速さに話すことが出来ない。コーナーが近づき、こんなスピードで止まるの!? と思ったが、後ろでパラシュートが展開したのか? と思うほどの制動力。今までの。加速を一気に打ち消した。

もう1周してそのままピットイン。同乗走行が終わり、感想を一言で言うと、「新世界だった」

同乗走行が終わるとそのまま運転席に案内された。

「? あれ? 今日は同乗走行だけでは? もしかして……」

インストラクターに恐る恐る「運転して良いんですか?」と聞くと、「同乗と自分でも走行ができるんです」と返答が返ってきた。

朝に「もしかしたら運転できるかも」とは聞いていたが確率は低いものだと思っていた。新世界を体感して次は自分で運転!? 一瞬大丈夫か? と不安を感じたが、そんな気持ちよりもあのスピードを自分の意志で出してみたい!という好奇心が勝ち「ありがとうございます!」とすぐに運転席に乗り込んだ。

突然訪れたビックチャンスに緊張で口の中がカラカラに乾いている。

初めてのフェラーリ488、初めての左ハンドル、初めてのパドルシフト。

パドルを手前に1回引いて、ギアを1速に入れる。車体がスムーズに動けるようアクセルをじわりと踏み込む。

恐れていた唐突な発信はなく、シートの後ろで低い唸り声を上げながら488GTBは穏やかに歩みを進めた。

「希望の道が開いた」

コースに出て、1コーナーを抜け、Aコーナー……徐々にスピードをあげていく。

そこで気づいた。

あれ? 車両の足の柔らかさや荷重のかかり方がロードスターに似てる? 想像以上に程よくやわらかくブレーキを踏んでしっかり荷重をかけられることで向きが変わりやすい。また、コーナリング中の路面に吸い付いているかのような安定感があった。

勝手ながらロードスターとの親近感を感じ、少しずつスピードを上げていく。

回転数の上がり方が早くいつもコーナリングしているギアと異なるコーナーがあることとスピードの違いで、回転数で光るギアチェンジのランプを見ながらシフトアップすることで精一杯井だった。

ストレートに帰るとインストラクターの方から「アクセル全開!」と言われ、「良いの?」と不安と期待が混じりながら恐る恐るアクセルを全開に。先程感じたGがわたしをシートに押し付ける。6000rpmを超えたあたりから音に伸びがあり、気持ちよく加速していく。また、シフトダウンして回転数が下がる音さえも中低音で格好良い。室内にはメカニカルノイズとエンジン音が反響していた。感動しているのもつかの間、1コーナーに到着するのがなにより早い。

もうコーナーだ! とブレーキを踏みゆっくり丁寧にシフトダウン。いつものブレーキの感覚よりも効きがよく、踏み心地も硬すぎず、コーナーのだいぶ手前で減速を終え、スピードを殺しすぎてしまった。230km出てるか出てないかのスピードを出しているのに、ブレーキをしっかり踏めばほとんど止まってしまう程良く効いた。

フェラーリはレースカーのイメージが強く、敷居が高くまた運転操作も厳密にやらなければ運転できない難しいクルマというイメージであったが、想像よりも遥かに乗りやすく、またトラクションコントロールのモード選択の豊富さにより、日常からスポーツ走行まで幅広い層が楽しめるクルマであると感じた。

ずっと憧れていたクルマ。これを知らずにレーサーを語ることは出来ないなと感じた。幸運にもわたしはチャンスを頂き、フェラーリに乗り、素晴らしさを感じることが出来たけので、フェラーリに乗ったことない方へもこの感動を伝えていけたら良いなと感じた。

走行が終わり、クルマから降りると2周しかしていないのに心臓がドキドキしていた。

そして、わたしの中に新しい夢も心に芽生えた。

「フェラーリでレースをしたい」

今わたしがフェラーリに乗れているのは、井原先生のおかげでしかないけれど、いつかわたし自身がフェラーリに選ばれるようになりたいと思った。