マルコムはミスを犯した事がない。彼は全てに注意を払ってるんだ。ステージ上では照明とか何か気に入らない事があった場合は、二度と起こらないように徹底させていたんだ。バハマで『バック・イン・ブラック』の製作中の出来事なんだけど、レコーディングした曲を聞き返している時に、俺は「イエーイ。これがマルコムのリフだぜ!」てな事しか考えてなかくて、フィル(・ラッド)のドラムもいつも通りタイトだった。でも突然マルが「何かノイズが入ってる。」って言い出すんだ。俺達は皆「ノイズなんか入ってるかよ?何言ってんだ。」って言ったんだけど、彼は「何かのノイズが入ってるからもう1回再生してくれ」って言うんだよ。だからもう一度再生して聴き返してみたんだけど俺達には何も聞こえないんだ。

次に俺達はトラックを1つずつミュートしていってどこにノイズが入ってるか確認していった。最後に残ったキックの音だけを聞いてみると、何とクリック音が聞こえたんだ。「なんだこの音は?」ってなってメンバーがキックの中に詰めていた黒い毛布を取り出したら、その中から小さなカニが出て来たんだよ。どうやら紛れ込んでたカニが2日間もそこにいたみたいなんだ。フィルが人生の鬱憤を晴らすように強烈にドラムを叩いている間、そのカニはドラムの中でくつろいでやがったんだよ。俺達はマルコムを見て「どうやってそんな音が聞こえたんだ!」って驚いたよ。信じられないんだけどマルコムはそういう奴だったんだ。

彼が81年か82年かに「ネス湖に行こうぜ。ネッシーがいるかどうか見にいかないとな」ってマルコムが言い出した。俺達は湖のすぐ横のホテルを取って夕飯を済ませて、少しドラッグを取ったんだ。その後湖の周りを散歩してる時に、マルコムが何か持っていて「何持ってるんだ?」って聞いたらそれは花火だった。「何に使うんだよ。」って聞いたら「これをぶっ放したらネッシーどもの注意を引けるだろ。」ってさ。オレも「それはクソみたいにいいアイデアだ。」って思って、俺達は靴もはいたままで湖の中まで歩いて行ったんだよ。全てが水に濡れて、足下を取られてで転んだ時、俺達は何かを見たと思ったんだよね。ハッキリとは分からなかったけどね。

マルコムはロックンロールに衝撃を与えたんだ。ロックンロールのケツを蹴り上げたんだよ。よく色んな奴がマルに「どうやってその音を出したんだ?」って聞いたんだけど彼は「ただギターを弾いてるるだけだ」としか言わなかった。奴らに説明したくなかったか、マル自身もどう弾いているか説明できなかったかどっちかだね。『レット・イット・ビー・ロック(邦題: ロック魂)』をライブで演る時によくマルコムの横に立ったんだけど、マルコムは1曲でギターピックを2つ使い潰していたんだ。彼は最も精密なギター・プレイヤーだったんだよ。

「マルコムはロックンロールに衝撃を与えたんだ。ロックンロールのケツを蹴り上げたんだよ」

ツアー中によくアンガス言ってたのは、「ブライアン、俺は毎日部屋でも練習してるんだよ、ソロのパートから何から何まで毎日だ。」って言うんだ。俺はビックリして「本当かよ。いつも自然に演奏できてると思ってたよ。」って言ったら「マルコムが後ろにいるからなんだよ。もし俺がミスした時はあいつがそこを拾ってきて俺よりも上手く弾いたりするからな、俺はその恐怖にいつも怯えてるんだよ」

80年代にいわゆるヘアー・バンド(グラム・メタル)の連中が出てくると、俺達は時代遅れになった。アトランティックのお偉いさん来て、当時出た俺達のニュー・アルバムをマルとアンガスのが座るテーブルに投げて来て「シングルがなければ意味がない」って言って来た事があったんだけど、マルは「俺達はシングルを出す為のバンドじゃない。コレが俺達のやり方だ」って言い切ったんだ。他の奴もスタイルを変えろとか、革ジャンを着ろとか、80年代半ばに流行った髪型にしろとか言って来たんだけど、黒いTシャツとジーパンを2枚づつしか持っていないマルコムこそが何をしてる時もクールに見えたんだ。