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架空請求の手口として、ハガキが使われることが増えています。国民生活センターには、実在しない「民事訴訟管理センター」をかたるハガキだけでも、2017年3月以降、約1万7000件の相談が寄せられています。このほか、実在する団体に似せた「知的財産教育協会財団」からのハガキなど、複数の架空請求事例が報告されています。

この手のハガキの特徴は、根拠として法律の名称を出したり、裁判を連想させる言葉や表現を使っていたりすることです。提訴されたので連絡しろとか、このままだと差し押さえになるといっておどかしてきます。

もしこんなハガキが届いたとき、我々はどこをチェックすれば、良いのでしょうか。大村真司弁護士に聞きました。

●プライバシーの問題があるから、そもそも「ハガキ」で請求は怪しい

ーーハガキのどこを見たら良いでしょうか?

最近、親族からも同様の相談を受けましたが、10年くらい前に流行った時と全く同じ手口、文面まで変わらずで、逆に驚きました。

そもそも、ハガキによる請求は怪しいです。裁判所の手続の場合、通常は「特別送達」という書留の一種で届きます。裁判手続に載せているのなら、裁判所からすぐに文書が届きますから、あえてハガキで別途送る意味はありません。

訴訟外の請求でハガキを使ってはいけないということはありませんが、プライバシーの問題がありますから、まともな請求者なら通常は使わないでしょう。

ーー文面で判断できる部分は?

文面から見分ける方法というと、我々が見たらほとんど全体が怪しいので、枚挙に暇がありません。大抵、我々専門家が見ると笑ってしまうような、全く制度や法律を無視した文面で脅すような請求をしています。

「裁判」「訴訟」「執行」「差押」といった、裁判手続を匂わせる文書がハガキで届いたら、それだけで怪しいといえるでしょう。法律も架空の場合が多々あり、ネットで調べて法律が出てこなかったら怪しいです。

他には、「最終通告」等の威圧的なタイトル、「独立行政法人」とか「民事訴訟管理センター」といった公的機関っぽい、あるいはただ事ではない雰囲気の組織の名称です。名称をネット検索すると、大抵は詐欺だという情報がヒットするのではないでしょうか。

連絡先が携帯電話だとまず怪しいですが、最近は東京の電話番号も多いようで、番号が固定電話だったからといって信用できません。

ーーなるほど、ネットで名前を検索するだけでも、かなり排除できそうですね。でも、中には、「身に覚え」があって、判断がつきづらいものもあるのでは?

債権者が誰か、何の債権かはっきり書いてないものが多く、通常は身に覚えがないと思いますが、中には、例えば、何年か前に実際に利用していたレンタルビデオ屋で返却未了ですから違約金を支払ってください、というようなハガキも見たことがあります。なぜそんな請求ができたのか分かりませんが、推測するに、倒産した会社の名簿が流出したのかなと思ったりしています。

どうしても不安な場合は、自治体の消費者センターに相談してみればよいでしょう。

対応策としては、無視すればそれでOKです。大量にハガキを送り連絡してきた人を食い物にするという手口なので、それ以上は何もしてきません。

ーー相談先が分からないときは、消費者ホットライン(電話番号188番)にかければ、身近な消費生活相談窓口を紹介してもらうことができます。

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
大村 真司(おおむら・しんじ)弁護士
広島弁護士会所属。日弁連消費者問題対策委員会副委員長、広島弁護士会 非弁・業務広告調査委員会委員長、消費者問題対策委員会委員、国際交流委員会副委員長、子どもの権利委員会委員
事務所名:大村法律事務所
事務所URL:http://hiroshima-lawyer.com/