日立建機が拡販している油圧ショベル

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 建設機械業界が再び中国市場に熱視線を送っている。活発なインフラ整備に伴って建機需要が膨張。2018年も稼ぎ頭の地域との見方が大勢を占めており、現地で増産の動きが広がっている。中国政府の方針で需要が大きく変動し、業界各社はたびたび翻弄(ほんろう)されてきたものの、収益面で魅惑的な市場であり続ける。低迷を耐えてきた各社の攻勢が始まっている。

インフラ整備に買い替え時が重なる
 「インフラ工事が確実に伸びているのは間違いない。中国は現在の調子が続く」―。日立建機の田淵道文執行役専務は市場の底堅さをこう説明する。

 落ち込み続けた需要が昨秋ごろに底を打って以降ここ1年の急速な回復は目を見張るものがある。業界内から油圧ショベルの年間需要が10万台を超えるとの見方も出るほどだ。

 好調な背景にはインフラ整備とともに、建機の買い替え時期が重なっていることもある。一般的に日本や欧米の建機は7―8年稼働すると、新型機を購入する工事関係者が多い。中国市場では前回の拡大期が09―11年だったため、18年にかけて旺盛な需要が続く裏付けとなる。

 各社とも増産に迫られており、コマツは「中国の工場はフル稼働」(大橋徹二社長)という。需要が急速に高まっているとはいえ、各社は現状の生産能力で十分にまかなえることから、作業者の増員で対応する。

 ただ、建機業界では中国市場に翻弄され、増産投資による苦い経験が残っている。日立建機は需要の伸びを見据えて、11年に安徽省に第二工場を完成させたが、田淵執行役専務は「工場ができたとたんに落ち込んだ」と振り返る。その後ほぼ稼働することなく、売却に追い込まれた。

 一方で、需要の回復への備えを着々と進めていた。工場の改善活動を徹底的に実施してリードタイムを短縮し、資材費の低減では日本と同様の手法を取り入れた。“筋肉質”な生産体制に変わり、18年3月期は油圧ショベルを前期比1・5倍の6000台を生産する計画だ。

 中国事業で苦しんだのは神戸製鋼所も同じだ。代理店の財務状況が悪化したのに伴って17年3月期に多額の貸倒引当金を計上した。そのため建機子会社のコベルコ建機は「他社よりも厳しい債権管理」(細見浩之執行役員)を徹底し、販売体制の立て直しを進めてきた。

 神鋼が2月に発表した中国での油圧ショベル事業の販売計画では20年度に4300台だったが、17年度に4000台を超える見通し。前期の損失を糧に巻き返しを狙う。

部品供給が逼迫
 中国・福建省廈門(アモイ)市。新空港が建設される予定地の埋め立て作業が終了しているものの、工事が中断していた。住友建機(東京都品川区)の中国事業を統括する数見保暢常務は、「作業の進み具合がスローダウンしているようだ」と指摘する。

 建設機械の需要を支えているのは各地で進むインフラ工事だが、減速リスクも潜んでいる。工事を管轄する中国政府の方針で良くも悪くも一変してしまうためだ。

 景気の下支え策としてインフラ整備を加速させた一方で、地方政府の財政悪化を懸念すれば工事の抑制にかじを切ることも起こりえる。他国とは異なり、需要動向を読みにくい理由がここにある。

 建機各社にとって最大の商戦期が、2018年の春節明けに控えている。年間を通じて最も需要が集中するだけに、中国事業の収益を拡大できる期待が高まる。しかし、これまでの好調な販売から思わぬ弊害が生じている。数見常務は、「想定以上に売れていて、商戦に備えた在庫が計画ほど積み上がっていない」と実情を明かす。

 このため各社が作業者を増員しながら増産しているものの、売れ過ぎることにより、十分な販売在庫を確保するのが難しくなる可能性がある。

 さらに中国だけでなく世界各地の建機市場が活況を呈していることにより、部品の供給が逼迫(ひっぱく)しつつあることが追い打ちをかける。油圧機器メーカーをはじめ部品各社が増産に動いているが、需要に追いつくことができずに、建機会社の間で部品の取り合いが今後起こることも考えられる。急速な市場の活性化がサプライチェーンに与える影響は小さくない。

 建機を作れば売れる状況の中国市場は東南アジア市場と比べると、売価が2割ほど高いという。販売台数が伸びれば利益を稼ぎ出せるだけに、各社の成長戦略を左右する。需要の低迷期に「学びが多かった」(水原潔コマツ常務執行役員)という認識は各社に共通するはずだ。工場の生産改善や保守サービスの拡大など、地道な努力が成果に変わる状況を迎えている。

(文=孝志勇輔)