石炭火力発電事業向けの融資が多いみずほフィナンシャルグループ(撮影:梅谷秀司)

二酸化炭素などの温室効果ガスを大量に排出することを理由に、欧米の機関投資家や大手金融機関は石炭火力発電事業への投融資からの撤退を進めつつある。その詳細については、12月30日付の記事(「脱・炭素化」の動きは、もはや世界の常識だ)で明らかにした。その一方で、日本や中国の大手銀行による投融資規模の大きさが浮き彫りになっている。

銀行vsパリ協定

ドイツのNGOウルゲバルト(Urgewald)と国際環境NGOのバンクトラック(BankTrack)は12月11日、新たに石炭火力発電所の建設計画を進めている世界の大手120社への投融資の状況を明らかにした(サイトはこちら)。

「銀行vs.パリ協定」。こんなタイトルが掲げられたバンクトラックのサイトによれば、大手120社向け融資額(2014年1月〜2017年9月)で首位となったのがみずほフィナンシャルグループ。第2位の三菱UFJフィナンシャル・グループ、第5位の三井住友フィナンシャルグループなど、大手邦銀が上位を占めている。


また、株式や債券の引き受けを含む投融資全体でも、上位を独占する中国の金融機関に続き、みずほ(第8位)、三菱UFJ(第11位)、野村ホールディングス(第19位)が顔をのぞかせている。


大手120社には、中部電力、中国電力、J-POWER、関西電力、東京電力ホールディングス、丸紅が含まれている。邦銀はそれら企業への融資のほか、中国などの電力会社への融資などに関与していることから、上位を占めたと見られている。

パリ協定採択後も巨額融資を継続

ウルゲバルトが構築したデータベースを基にバンクトラックが分析したところ、2014年1月から2017年9月までの3年9カ月間に、6300億ドルもの投融資が石炭火力関連に注ぎ込まれていた。そして全体の68%を中国と日本の金融機関が占めていることがわかったという。2015年12月に地球温暖化対策への国際的な取り組みを決めたパリ協定が採択された後も、2750億ドルの巨額が投融資されたとバンクトラックは分析している。

また、ウルゲバルトが機関投資家による投資状況をまとめたところ、米ブラックロック(米)に続く2位に日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が登場。みずほ(第10位)、三菱UFJ(第14位)、日本生命保険(第20位)なども顔をそろえている(サイトはこちら)。

GPIFは環境や社会、ガバナンスに配慮する「ESG投資」を標榜し、「総合型」などESG指数を選定して投資を進めている。ただ、気候変動に特化した指数は現在まで選定されておらず、石炭火力発電事業を営む電力会社株の多くを保有したままだ。

しかし、「ダイベストメント(投資撤退)」と呼ばれる化石燃料関連資産の売却の動きは、パリ協定採択以降、加速しつつある。

こうした中で、NGOによるデータベース構築やランキング公表が重要な意味を持つのは、「今までリストに含まれていなかった石炭火力発電を営む大手企業がダイベストメントの候補先に新たに加わったことにある」(環境NGO「『環境・持続社会』研究センター」の田辺有輝プログラムコーディネーター)。

田辺氏によれば、これまでにも欧米の大手機関投資家や金融機関は「石炭採掘大手100社」や「石炭関連ビジネスへの依存度が30%以上の企業リスト」などを基にダイベストメント対象を選定してきたが、「大手の電力会社などはこれらのリストに含まれていないことが多かった」(田辺氏)。

今回、大手電力会社を含めた「石炭火力発電に関する大手120社」のリストが新たに作成されたことにより、日本の大手電力会社もダイベストメントの嵐にさらされる可能性が高くなっているという。

アクサが撤退候補選定にリストを活用

パリで気候変動サミットが開催された12月12日、フランスの大手保険会社アクサは、ウルゲバルトが作成した"Global Coal Exit List”(https://coalexit.org/)に基づいて石炭火力発電や石炭採掘を営む企業を選び出し、ダイベストメントに踏み切る考えを表明した。ダイベストメントの動きに詳しい前出の田辺氏によれば、丸紅やJ-POWERなどがその候補に該当する可能性が高いという。

なお、みずほ、三菱UFJは気候変動など環境問題への取り組み姿勢を強調する一方、石炭火力発電事業を営む大手企業向け融資ランキングで首位および第2位になったことへの受け止めについてノーコメントとし、石炭火力発電への投融資方針についても明らかにしていない。