稲田朋美公式サイトより

写真拡大

 29日、坂上忍が司会を務める5時間特番『バイキング・ザ・ゴールデン』(フジテレビ)で、今年世間を騒がせた「ニュースの主役」として元防衛相・稲田朋美議員に坂上が独占初直撃として直撃取材していたが、その内容はまさに唖然とするものだった。

 都内の稲田議員行きつけの蕎麦屋で行われたというインタビューだが、冒頭から「私はよくテレビで見ています」と笑顔の稲田に言われた坂上は、「なに言ってるんですか、僕だってずっとテレビで見ていました」と妙にハイテンション。さらに稲田も「そうでしょうね、オホホホ」と楽しそうに口を押さえて笑いあう。

 次に坂上はなぜ取材に応じてくれたのかを聞くのだが、稲田はたまたま坂上の番組をみて「(私のことではないが)"パツん"と言われていて、ああいいなあって。パツんの言い方が気持ちよかったから」「最近マスコミには出てないんですけど、(坂上を指して)出てみようかな」とはにかむ。対して坂上も少々デレっとした嬉しそうな様子で「えっ〜〜意外!」などと、合コンの盛り上げ役のように大げさに驚いてみせる姿にイヤな予感がした。

 しかし、完全に安倍首相御用芸人と化している松本人志とはちがって、坂上忍は安保法制や「こんな人たち発言」について、かなり厳しい口調で安倍政権を批判している。マッチョで説教オヤジではあるが、安倍政権に対しても言わなければいけないときはハッキリものを言ってきた。

 稲田についても「稲田さんのこともバツんと言ってます」と坂上自身が語ったように、日報問題や、森友問題での虚偽答弁、都議選における「自衛隊としてお願い」発言など、『バイキング』で坂上は稲田のことも手厳しく批判してきた。

 この『バイキング・ザ・ゴールデン』の前半でも、大麻所持で有罪判決を受けた高樹沙耶に対して「同志の男性とは肉体関係にあるのか」などと斬り込んだり、わざわざ取材しに沖縄まで来てやったんだと説教しまくって、泣かせたりしていた。きっと稲田にも、この調子で厳しく批判してくれるにちがいない。そう思っていたのだが......。

 まず、いきなり坂上が切り出したのは、衆院選について。「このあいだの衆院選、すごいですね」「5万票差でしょ」と2位に5万票さで圧勝だったことに感嘆してみせたのだ。一方の稲田は、「グサーっと来て」「結構きつかった」「かなり落ち込んで」「人生の中でもっともどん底の落ち込みよう」と騒動の渦中の心境、苦労を吐露する。まるでアイドルか何かが謂れのないバッシングにでもあったかのような調子で話すのだ。稲田は防衛大臣という重要閣僚だし、日報問題は自衛隊員の生命や憲法という国家の根幹にかかわる重大な問題で、批判は当然だ。しかもいまだ真相はうやむやにしたまま。ところが、坂上はつっこみもせず、同情するようにうんうんとうなずくばかり。

 そして稲田は、防衛大臣になったことが「晴天の霹靂」としてその経緯をこう語ったのだ。

「いきなり安倍首相から『はい、防衛大臣お願いしまーす!』とかくるんですか?」
「(笑いながら)いきなりですよね」
「その時、選択権とかないんですか?『えっ、防衛ですか?』みたいな」
「そりゃ思いますよね。自分の率直な意見は言いましたけど」
「ちょっと防衛大臣は、みたいな?」
「そうですね。『えっ?』みたいな感じはありました」
「正直安倍さんとしてはなんで稲田さんに防衛大臣?」
「そうですね。(安倍首相に)聞いてほしいですね」
「えーーー!!」

 なんの話をしているのだ? そもそも防衛相は荷が重かったということ? しかも坂上は続けて稲田の防衛相抜擢をこう解説してみせたのだ。

「安倍さん的には防衛大臣やってもらって、何年後かには稲田さんに女性初の総理大臣になってほしいっていう思いとかあったんじゃないんですか」と稲田が喜びそうな質問をぶつける。稲田は「知りません」と言いながら、この日一番の満面の笑み。坂上も手をまるめて望遠鏡のように目にあて、稲田の顔をのぞきこみながら「え〜〜〜、本当ですかぁ〜」とお茶目につっこむ。まるで「彼氏はいません」「え〜〜〜、本当ですかぁ〜」とでもじゃれてるような調子だ。

 さらに稲田は自身の政治経験が未熟だったと言い訳を繰り返す。それについては坂上はなんのツッコミも入れない。しかし、本当に目が点になったのは、大臣時代の日常生活に話が及んだときだった。

「ミサイルが飛んだらすぐに登庁しますよね、常に電話を目の前に置いて」
「えーー枕元に? それこそ北朝鮮がミサイルバーンってやったらすぐ行くんですよね」
「はい、連絡来てから10分から15分で家出られるようには、するように、たとえばスーツはかけておくとか」

 問題はここからだ。坂上は突然「それじゃ化粧できないじゃないですか10分じゃ」と話を防衛とは全く関係のない方向に向けていく。稲田も「できます」と笑い「マツエク(まつ毛エクステ)も批判されましたが、マツエクしていればすぐ出れますしね」と大真面目に答えたのだ。

 いやいや、たしかに毎朝つけまつげをつけるよりは、マツエクのほうが支度は早く済むかもしれないが、そもそも非常事態にそこまでしてつけまつける必要があるのか。と、多くの人が画面越しにツッコんだと思われるが、坂上はまったく疑問を呈さず、「そのためにも、マツエクはいい」と同調してみせた。

 どんな茶番だ。一時が万事、こんな調子なのだが、こんな人物が北朝鮮危機を叫ぶ政権の防衛を任されていたのもびっくりである。肝心の森友学園での虚偽発言は? 南スーダンPKOの日報隠蔽は? "戦闘行為"ではなく"衝突"と言い張った真意は? と思っているとやっと森友問題での稲田の国会答弁のVTRが流された後、"失言問題"としてこんなやり取りが繰り広げられた。

「森友問題の時も、(籠池夫妻と)面識あるの? ないの? と聞かれて、とりあえずないと反発しちゃうの?」
「違う、違う。あれは予算委員会でテレビ入りだったの。しかも13年前の訴訟の記録をいきなり小川先生(民進党の小川敏夫議員)が出してきたわけですよ。私もびっくりして、実は籠池夫妻との間ですごく嫌なことがあったりして、本当だったら『確認します』って言えば終わりだったのに」

 言い訳にすらなっていないが、しかし坂上も「そうそう、そうなんですよ!」と稲田に同調、稲田も「そうすればよかっただけなのに、(籠池夫妻と)そういうことがあったのと、本当に全く記憶になかったので『知りません』と」と意を得たとばかりに"人のせい"にすり替えていく。そもそも稲田は「訴訟に出ていない」と言っただけでなく、当初は籠池夫妻と「面識がない」と言い張っていたのだ。「実は籠池夫妻との間ですごく嫌なことがあった」と自身で打ち明けているのだから、「本当に全く記憶になかった」などただの言い訳というか、明らかな嘘だ。しかしこんな子どもでもわかるような嘘にすら坂上はつっこまない。 さらに話題が防衛大臣辞任にうつると、こんなことまで言いだした。

「さすがに見てて、安倍さんね。ちょっと稲田さんをもっと早く楽にさせてあげたほうがいいって感じちゃったんですよ。苦しそうすぎて」「政治家さんって大変ですよね。嫌になりません? ご家族の方は心配されていたんですか?」

 そもそも坂上は、当時、稲田の一連の問題を『バイキング』で盛んに取り上げ、「発言がコロコロ変わっちゃいますよね」「自覚のなさ、知識のなさっていいんですかね?」「やっぱり頼りないと思ってしまうし大臣としての資質が問われてもしかたがない」と顔をしかめて批判していた。そして今回の稲田との対談の合間には、当時のVTRも流されている。しかし、それは視聴者に向けてのアリバイ的なものなのだろう。たとえば、先の都議選で稲田が「自衛隊としてお願い」発言で批判され、謝罪したことがVTRで紹介されたが、インタビューでは完全スルー。そして今回、坂上は決して稲田への批判を口にしようとしなかったし、問題をつっこもうともしなかった。ひたすら稲田の話を拝聴し、それに逐一同調したのだ。

 まるでアイドルや芸能人が、ちょっとした不祥事や舌禍事件を起こし、SNSが炎上しちゃった、ちょっと失敗しちゃった、それを振り返るという、軽〜い感じであり、稲田のイメージアップ、復帰の足がかりをしようとしているかにも思えてくる。

 ある意味圧巻なのは、インタビューのラストだった。坂上は楽しそうに稲田を礼賛し始めたのだ。

「今、こうやってお話を聞くと、明快だし、わかりやすいんですよ。ただ国会とかになると『えっ、稲田さん大丈夫ですか』と。言葉もそうだけど、歯切れとかっていうのも、我々視聴者って感じるじゃないですか。えっ、いまお話されているまんまで、パンパンパンって言ったら、あそこまでの印象はなかったのかな、って思っちゃったんですけど」
「稲田さんって隠さないですよね。普通ね。防衛大臣やった人ですよ。そういう人が普通に反省を口にされるじゃないですか。もうちょっと格好いいこと言うのかなって。そして僕ら年下だけどイラっとしていたかもしれない」

 さらに「目指しているのは総理ですか?」と質問し、「僕なんか女性の総理ってなんで出てこないのって思うくらいなんですよ。腹くくったら、男なんかより全然太い。本当好き嫌いは別として、本当に頑張って欲しいんですよね。女子に」。そして、稲田を見つめながら、「今日、なんか話せて楽しかった」と謝礼まで述べ、稲田もこれに同調すると「その笑顔でちょっとおやじキラーになっているんじゃないですか。だって年上だけど可愛い〜って思っちゃうもん。稲田さ〜ん」とヤニ下がったように、本気で嬉しそうな表情を見せたのだ。

 たしかに坂上はかなり酔っぱらっているように見えたが、『ダウンタウンなう』(フジテレビ)などでは、酔っぱらって説教トークをすることだってしょっちゅうではないか。

 まるで楽しい出会いの場、合コンかという、絶句してしまうような展開だったが、これが噂に聞く、稲田の"必殺おやじ殺し術"なのだろう。笑顔で相手の男を上手にのせることで、男のほうは"自分が男としても好かれている"と特別感とイケメン気分まで味わえ、気分よく錯覚してしまう。しかもこうした稲田の秘法が効くのはおやじだけではなかった。なにしろ年下の坂上も、イチコロになり、手の平の上で転がされてしまったのだから。加えて坂上が、稲田復活の都合のいいPRにまんまと利用されてしまったことも大問題だ。

 おそるべし稲田である。
(編集部)