2017年、ストリーミングサービスは音楽シーンをどう変えた? チャートアクションなどから考察

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 宇多田ヒカル、小沢健二、DREAMS COME TRUE……キャリアあるアーティストが次々とストリーミング配信を解禁するなど、2017年は日本国内でもストリーミングサービスに大きな動きがあった。そこで今回、海外シーンにも詳しい音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏に2017年のストリーミングサービスの動向について話を聞いた。

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 ジェイ氏によると2017年はSpotify、Apple Music、Amazonといった勢いを増すサービスと、そうではないサービスの差がはっきりと示された年だったという。さらにストリーミングをめぐる環境の変化から2017年を「非常にエキサイティングな年」と評し、ストリーミングサービスが音楽業界・アーティストにとって無視できない存在になったと教えてくれた。

「音楽ストリーミングはいまやグローバルなメジャーレーベル3社(ソニーミュージック、ユニバーサルミュージック、ワーナーミュージック)のビジネスの中心となり、2017年にはストリーミングの売上が初めて10億ドル(約1100億円)を超えてCDとダウンロードを超えました。それに伴って業績も右肩上がりでアップしています。しかし日本国内だけで見ると、やはりまだフィジカルが強い。ストリーミングをうまくビジネス化できていない印象があり、恐らく2017年もまだストリーミング配信の売上が日本全体で大きな割合を占めるまでに至っていないでしょう」

 さらにジェイ氏は、ストリーミングサービスによるチャートの変化についても言及した。国内ではBillboard JAPAN Chartが10月からストリーミングチャートの発表を開始したが、アメリカ本国のBillboardは2018年以降の集計でシングル・アルバムチャートにおけるストリーミングサービスの影響力をより重視するという。ジェイ氏はこれにより、インディーズなどでリリースしているアーティストもBillboard Chartで1位を獲得しやすくなると予想した。

「今年ヒットしたアルバムはケンドリック・ラマーの『DAMN.』(1週間で3億4060万回再生)やドレイク『More Life』(1週間で3億8400万回再生)など、ストリーミングとプレイリストでよく再生されていたアルバムがほとんどです。一方、売上だけで考えると、1位はテイラー・スウィフト。彼女は“ストリーミングで配信しない”ということ自体をプロモーション化して、オルタナティブな存在となっていたことが印象的でした。2018年は従来の業界のプロモーション方法から外れて、クリエイティブな音楽の届け方を作っていくということが主流になっていると思います」

 ジェイ氏曰く、音楽ビジネスに創造性が必要とされることに伴い、音楽制作に携わるのも若いマインドを持った人が増えているとのこと。実際、エド・シーランやジャスティン・ビーバーを手がけるベニー・ブランコ、ケンドリック・ラマーを手がけるマイク・ウィル・メイド・イットなど、20代にしてヒット作を送り出すプロデューサーも目立つ。最後にジェイ氏は国内の動きについても言及した。

「日本で大物アーティストがストリーミングを解禁したことは、SpotifyやApple Music上陸に次ぐ大きなムーブメントであり、ストリーミングが主流に近づいている第一歩。またAppleが音楽認識アプリ・Shazamを買収したことも、2018年以降の音楽ストリーミングに注力するビジネス戦略としての象徴的な出来事だったと感じます。こうした国内のレーベルの動きや、世界的なサービスの動きが活発化することによって、日本の音楽業界の中でも、ストリーミングサービスへの認知は確実に上がっていると言えます」

 2018年も国内アーティストが新たにストリーミングサービスでの配信をスタートする動きはさらに加速するとみられる。ストリーミングサービスのさらなる普及が、日本国内でもチャートやレーベルの業績などを大きく変化させる可能性は高そうだ。(村上夏菜)