10年前に出合った「アンチゴーヌ」に出演する蒼井優

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フランスの劇作家ジャン・アヌイの代表的悲劇作品「アンチゴーヌ」。日本を代表する演出家・栗山民也のもと、蒼井優、生瀬勝久ら豪華キャストの競演で現代によみがえる。1月9日(火)の東京・新国立劇場を皮切りに、全国5カ所で上演する。

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本作は、法と秩序を守り権力者として政治の責任をつらぬこうとする冷静な王・クレオン(生瀬)と、クレオンに命を懸けて立ち向かおうとする若干20歳のアンチゴーヌ(蒼井)の対立を描く。

そんなアンチゴーヌを演じる蒼井に、「アンチゴーヌ」にとの出合いや作品に対する思いなどを聞いた。

■ 20代で運命的に出合った作品

――10年前に本作「アンチゴーヌ」と出合ったということですが、きっかけは何でしたか?

蜷川幸雄さんの舞台に出させていただいた時、演出助手の方が「もっと戯曲の世界になれた方がいい」とおっしゃって、私にたくさんの戯曲の台本をくださったんです。その中の1つが「アンチゴーヌ」でした。それを今でも持っていますけど、ボロボロになるくらい読みました。

――たくさんあった中から、なぜ「アンチゴーヌ」だったんですか?

ます、アンチゴーヌが魅力的な女性だったということと、若干20歳のアンチゴーヌにいっぱい勇気をもらいました。私がどこかクレオンみたいな考えになりそうな時に、アンチゴーヌから力をもらっていましたね。

――では、20代はこの戯曲とともに、過ごされる時間が多かったんですね。

でも、自分の中のヒロインをまさか自分がやることになるとは、全く思っていなかったです。普通、同じ年くらいの登場人物がいたらやりたいと思うのですが、私は思わなかったんです。作品を見たいとは思っていたんですけど、アンチゴーヌが実在に近いくらいの人物になっていて、1人の人間として見ていたので、そういう発想にはならなかったです。

■ クレオンの気持ちが分かるようになってきた

――最初にアンチゴーヌと出合ってから年月が立ちましたが、年齢を重ねていくことで、アンチゴーヌに対する考え方は変わりましたか?

クレオンに対する印象が違いますね。クレオンの孤独さとか、苦しみとか…。初めて「アンチゴーヌ」を読んだ時はアンチゴーヌ目線で読んでいたんですけど、今はクレオンの気持ちが分かるようになりました。若干、クレオンが憧れに近くなってきている気がしクます。でも、いろいろな登場人物の感情が分かるようになるのは、楽しいなと思います。

――自分ではやらないだろうと思っていたヒロインをやることになって、今の心境はいかがですか?

「こんなにせりふがあったかな?」という感じです。人が出てくるとしゃべるから、「もう出てこないでくれ!」みたいな(笑)。台本の16ページ以外は全部出ずっぱりなんです(苦笑)。今回は楽屋に戻っている時間もないんじゃないかと。

――生瀬さんとは舞台「楽屋〜流れ去るものはやがてなつかしき〜」(2009年)以来ですね。

あの時、生瀬さんは演出をされていたので、共演とは違いますが、一度ご一緒したことがあるので、信頼はしています。でも、役者としての生瀬さんが作品とどのような距離感でお仕事をされる人かを知らないので、そこはワクワクしています。生瀬さんはすごい方なので、ちゃんと対峙(たいじ)できるようにしなきゃなとは思っています。

■ 栗山ならではの演出法とは?

――栗山さんとは舞台「あわれ彼女は娼婦」(2016年)ぶりですよね。

そうなんです。「あわれ彼女は娼婦」の時に、もう一度栗山さんとご一緒したいと思っていたんです。そしたら、舞台が終わるころ、栗山さんから「アンチゴーヌ」のお話しをいただいてうれしかったです。

――前作「あわれ彼女は娼婦」の栗山さんの演出で印象に残っていることはありますか?

今までご一緒した演出家の方と大きく違うところは、外から固めていかれるところですね。動きとか、立ち位置とか。一番の外枠が見えている方です。「あと、うめていく作業は個人でやってください」って投げてくださるんです。でも、それが不思議とうまるんです。最初違和感あったりするところも、うまっていくとそれがベストなんです。それがすごいなと思います。感情の部分とかは、特に指示はないですね。そこは役者同士の部分だから、役者同士で話し合ってくれみたいな感じです。

■ 十字架の舞台で観客も共演者に!?

――舞台が十字架になっていて、どこからも見えるので息が抜けない舞台ですね。

十字架の四隅にお客さんが入っていただけるから、この物語のテーバイという国の市民、ある意味共演者みたいな感じがします。信念をつらぬくってすごい覚悟がいるので、悔いのないように1公演1公演に信念を持ってやろうと思っています。ものすごくエネルギー量のある作品なので。

昔、先輩が「お客さんによって、お芝居って本当に変わる」とおっしゃっていたのが、最近になって分かるようになりました。「お客さんと作り上げていくのが楽しい」と思えるようになりました。

――翻訳劇なので難しそうと思われがちですが、「アンチゴーヌ」はそうでもないですよね!?

「アンチゴーヌ」はすごく分かりやすいです! 登場人物も少ないし、太い新がドーンと通った作品なので、私が知っているこういうお話の中で、一番シンプルですね。戯曲を初めてみる方にもお薦めの作品です。戯曲を読みなれていない20歳の私が分かったくらいですから!

■ 「アンチゴーヌ」を新たな成長の場に

――2017年はどんな年でしたか?

一番大きかったのは10代の子供たちと一緒にドラマ「先に生まれただけの僕」(日本テレビ系)に出演して、初めて高校の先生役をやらせてもらったことです。オーディションで選らばれたほとんど仕事をしたことのない子供たちが多くて、最初は緊張していて声も張れない状況だったのですが、3カ月ちょっと一緒にいて最後は別人のようになっているんです。1本の作品でこんなに成長するんだと思って。「私はこの1本でどれくらい成長したんだろう?」と思った時にものすごく刺激を受けました。自分の10代のころもこれくらい成長したんだろうなと思いながら見ていました。

――2018年の始まりは「アンチゴーヌ」ですね。

新しい気持ちで新年を迎えて、お客さんと一緒に作品をつくることにワクワクします。この作品が次の成長の場になればと思うし、成長の場にしなきゃいけないですね(笑)。(ザテレビジョン)