年末企画:麦倉正樹の「2017年 年間ベストドラマTOP10」 “関係性”を主軸に置いた作劇が際立った年

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 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2017年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、国内ドラマの場合は地上波および配信で発表された作品から10タイトルを選出。第18回の選者は、無類のドラマフリークであるライターの麦倉正樹。(編集部)

1.『カルテット』(TBS)2.『監獄のお姫さま』(TBS)3.『過保護のカホコ』(日本テレビ)4.『やすらぎの郷』(テレビ朝日)5.『ゆとりですがなにか 純米吟醸純情編』(日本テレビ)6.『ひよっこ』(NHK)7.『セトウツミ』(テレビ東京)8.『架空OL日記』(日本テレビ/読売テレビ)9.『100万円の女たち』(テレビ東京)10.『山田孝之のカンヌ映画祭』(テレビ東京)

 満島ひかりに始まり満島ひかりに終わった……あるいは、坂元裕二に始まり宮藤官九郎に終わった2017年の地上波ドラマ。今年は、人気脚本家たちによるオリジナル作品が、例年以上に鮮烈な印象を残したように思う。坂元裕二の『カルテット』はもちろん、『ゆとりですがなにか』のスペシャル版と『監獄のお姫さま』の宮藤官九郎、さらに遊川和彦の『過保護のカホコ』、そして倉本聰の『やすらぎの郷』、岡田惠和の『ひよっこ』……いずれも原作のないオリジナル作品だ。依然として、漫画や小説などを原作とするドラマも多いけれど、そのクオリティという意味では、オリジナル作のほうが高かったのではないだろうか(平均視聴率、年間トップの座に輝いた『ドクターX』も、よく考えたらオリジナル作だ)。オリジナル脚本の企画が通りにくいとされている(実際、本数もごく限られている)映画の世界に比べると、まさに隔世の感がある。

 さらに、その多くが、いわゆる“起承転結”の物語である以上に、複数の人物たちによる群像劇……もっと言うならば、登場人物たちの“関係性”を主軸に置いた作劇を行っていたことも、ここに指摘しておきたい。恋人でも親子でもない不思議な繋がりをもった“関係性”を描くこと。決して似ている者同士ではない、むしろ違う者同士だからこそ生まれる“緩やかな連帯”。謎めいた4人の関係を描いた『カルテット』はもちろん、『監獄のお姫さま』のおばちゃんたち、『やすらぎの郷』は、舞台そのものが、ある種特別な“関係性”を帯びた集合体だったとも言えるだろう。

 その意味で、画期的だったのは『ひよっこ』だ。近年、何かを成し遂げた女性の半生を描くことが定番となっていた朝ドラにおいて、“名もなき女性”を主人公に、しかも、その“半生を描かない”というのは、実に挑戦的な試みだった。そのドラマが、“乙女寮”、“すずふり亭”、“あかね荘”など、ある場所を舞台とした“関係性”を主軸に置いた作品になっていたのは、上記の話とも一致する。バカリズム原作脚本の『架空OL日記』も、とある銀行で働く女子たちの“関係性”と他愛ない日常を描いたドラマだった(そこに、バカリズム自身が扮する主人公が当たり前のように参加しているシュールさはあったけど・笑)。

 “関係性”が印象に残ったのは、集団においてだけではない。変則的なホームドラマとしての一面も持った『過保護のカホコ』だが、そこでとりわけ印象に残ったのは、高畑充希と竹内涼真の“掛け合い”の面白さだった。延々と繰り返される、ボケとツッコミの応酬。そういった面白さは、『ハロー張りネズミ』(TBS)の瑛太と森田剛、『刑事ゆがみ』(フジテレビ)の浅野忠信と神木隆之介のやり取りにも感じられた。さらに、そんなふたりの“掛け合い”に焦点を絞った『セトウツミ』も、非常に面白かった。いわゆる“ドラマ”ではないかもしれないが、『山田孝之のカンヌ映画祭』の面白さも、先行きの見えない荒唐無稽な展開のみならず、主演の山田孝之と映画監督の山下敦弘という、ふたりの登場人物のやり取りにあったのではないだろうか。

参考:高畑充希演じる加穂子は本当に“社会不適合者”なのか? 『過保護のカホコ』共感度低い主人公の魅力

 それは、海外ドラマの世界においても同様なのかもしれない。今年個人的に印象に残った海外ドラマは、『13の理由』、『ストレンジャー・シングス』S2、『マスター・オブ・ゼロ』S2、『アトランタ』、『ビッグ・リトル・ライズ』あたりになるのだが、それらはみな、プロット的な面白さはもとより、『ストレンジャー・シングス』の子どもたちに代表されるような、登場人物たちのアンサンブルそれ自体が、見ていて楽しかった。物語の続きが楽しみなのはもちろんだけど、その物語世界で生きる“彼/彼女たち”に会いたい、そして“彼/彼女たち”のワチャワチャぶりを、心ゆくまで眺めたい。

 基本的に一回限りの映画とも違う、一気見可能な配信ドラマとも違う、週に一度の“お楽しみ”である、日本の地上波連続ドラマがひとつ追求すべき道は、ひょっとすると、そこなのではないだろうか? 今年、スペシャル版で久々に会えた『ゆとりですがなにか』の面々……岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥の3人の、変わらぬワチャワチャ感を嬉しく思い出しながら、そんなことを考えた。

(麦倉正樹)