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もくじ

ー セナが愛した、世界一エキゾティックなアシグルマ
ー 開発開始から足掛け22年の歴史
ー いま乗ると、古さと安っぽさ目立つ
ー 果たして、その走りはどうなのだろう?
ー ホンダNSXの中古車 購入時の注意点
ー 専門家の意見を聞いてみる
ー 知っておくべきこと
ー いくら払うべき?
ー 掘り出し物を発見

セナが愛した、世界一エキゾティックなアシグルマ

500万円以下のNSX、それもタルガトップのATという仕様の1995年式で、20万km以上走っている物件を見つけた。フェラーリでは、とても考えられない走行距離だ、とまさに書こうとしていた矢先、24万km超えの1998年式F355GTSが4万5000ポンド(681万円)で売られているのを発見したのは、間がいいのか悪いのか。町内をひと回りしたきりしまい込まれているフェラーリも少なくないことを考えれば、これは驚異的な数字だ。ただし、このF355がこれまでに費やした整備や修理の費用は、トータルで8万ポンド(1211万円)ほどにもなるとのことだ。

今回の取材車は、元はホンダの広報車で、ホンダが惜しみなく経費を注ぎ込んだと思う。しかも22年も前のクルマだが、そうであっても、ランニングコストの総額は、その働きすぎた跳ね馬の1/4にもならないだろう。きちんと残された整備記録をすべて洗えば、容易に証明できることだ。

ここで引き合いに出したF355は、フェラーリとしては例外中の例外だ。ところが、この程度走ったNSXはザラにある。たとえば、この原稿を書いている時点での話をすると、自動車サイト『ピストンヘッド』で売りに出ていた23台のNSXのうち、4台が16万km以上で、7台が8万kmを優に超える。

英国にあるNSXが300台足らずであることを考えると、これは驚異的な数字だ。それは、NSXがいかに乗りやすく日常遣いしやすいかだけでなく、オーナーたちが愛車にぞっこんで、ディーラーに並ぶ最新モデルにも目をくれず、快適なガレージを出て走りたがっているかも教えてくれる。

アイルトン・セナも、このクルマを愛したひとりだった。彼は鈴鹿でプロトタイプを走らせ、エンジニアたちや開発ドライバーたちにインプレッションを語ったという。開発ドライバーの面々も手練れ揃いだが、世界一のテストドライバーの話を神妙に聞いたことだろう。セナの関与は、NSXに箔をつけたが、それはホンダのV8フェラーリに一太刀浴びせようという信念にとって重要なことだった。

開発開始から足掛け22年の歴史

1984年に開発が始まったNSXだったが、発売にこぎつけたのは1990年のこと。リアミドにマウントされたオールアルミの3.0ℓV6VTECは、パワーこそ280psに過ぎないが、車両重量は1400kg弱。

ボディやサスペンションにもアルミを多用したクーペで、ほぼ手作業で組み立てられた。トランスミッションはMTだけでなくATも用意され、LSDを介して後輪を駆動する。1995年のマイナーチェンジでは、ATがシフトパドル付きのFマチックとなった。

インテリアはSFチックなデザインだが、よく見れば多くの部品をホンダの量販車とシェアしていることがわかる。ということは、信頼性やわかりやすさ、使いやすさやクオリティは保証されており、それがNSXを定義づけている要素だともいえる。

タルガトップ式のNSX-Tは1995年登場。しかし、英国では1997年のマイナーチェンジでグレード廃止に。この時、MT仕様は6段化と3.2ℓの新規ユニット採用が実施された。2002年にはヘッドライトを固定式に変更。その3年後に生産を終了した。

現在では、レアな最終型3.2ℓクーペで走行6万km程度なら、価格は8万5000ポンド(1287万円)からといったところが相場。再初期モデルで走行距離も多ければ、3万ポンド(454万円)くらいから探せる。しかし、5年前ならこれより1万ポンドは安かった。

ここから得られる教訓は、この世界一エキゾティックな乗用車を購入するなら、価格が手の届かないところまで上がる前の今しかない、ということだ。

走った感じはどうなのだろう?

いま乗ると、古さと安っぽさ目立つ

NSXは、かなりの長距離を重ねることにも堪えるクルマだ。しかし、今回の試乗車はそれほど距離を重ねていない。これはホンダの所有する個体で、5万kmに満たない走行距離はむしろ特筆すべき少なさだ。

このクルマが新車だった2005年は、NSXが生産を終えた年だが、デビューした当時よりずっとモダンなライバルたちに立ち向かわなければならなくなっていた。乗り込むと、当時にタイムスリップしたような気分になれる。狭いキャビンは水平基調で、黒いプラスティックが散見され、かなり古めかしい。

しかし、それは問題ではない。コクピットからの眺めが独特なものだからだ。視界にはふたつの盛り上がりが入り込み、下端の低いフロントウインドウが優れた視認性を叶える。振り返ると、そこには幅広くフラットなスポイラーが鎮座する。リアウインドウの下に広がるエンジンカバーは味気ないが。

これは結局のところ、ホンダ車の範疇を超えるものではなく、最優先項目は扱いやすさや実用性であり、近代フェラーリのようなショーマンシップではないのだ。

走らせてみると、どうなのだろう?

果たして、その走りはどうなのだろう?

NSXは、素晴らしく従順だ。たしかに、乗り心地はやや硬いが、決して不快なほどではなく、それでいてこれはグランドツアラーではなくスーパーカーだと思わせるものがある。

であれば、地味なことぐらいなんだというのか。

市街地では、軽いステアリングとスムーズで扱いやすいペダルがありがたい。また、NSXは華奢で、幅の狭い道を走るのも思いのほか怖くない。

自動車メディアで使い古された批判を、ここで持ち出すつもりはないし、実際にこれはよく言われるジキルとハイドのようなクルマでは全くない。鞭を入れたからといって、性格がガラリと変わることはないのだ。実際には、のんびりでも、飛ばそうとしても、ドライバーの意のままに走ってくれる。

ステアリングは軽いがフィールはあり、重くないのに反応はダイレクト。ノーズの向く位置を、完璧に決めることができる。コーナーを抜けるたびに、車体は右へ左へ華麗に向きを変え、類を見ないバランスを示す。まるでバレリーナのように、挙動の全ては一部の狂いもなく整っていて、脚どころかつま先までピンと伸びたようなクルマだ。

加えて、V6は驚くほどに中毒性がある。吸気音は大きく、甘美で金属的なサウンドが、回転が上がるにつれて高まる。パワーの盛り上がりもまたしかりで、シフトアップを遅らせて各ギアで回し切るほどに、その魅力はいっそう花開く。思い切り絞り上げることを、進んで求めてくるようなエンジンだ。

さらには全域で力強く、信頼性のリスクに怯えることなく、自信を持ってポテンシャルを使い切れる。比較的大きなミドエンジン・スーパーカーであるにもかかわらず、まるで小ぶりなスポーツカーのようなキャラクターの持ち主だ。

いうなれば、ターゲットとしたフェラーリよりも、ロータス・エリーゼを感じさせる。そして、もちろん当時のスポーツカーより速いが、際立ってパワーがあるわけではない。その能力と、ホンダが自社初のスーパーカーに込めた巧みさの融合から生まれる高性能だ。

加えて、NSXは気安さも魅力だ。これほど、速さと扱いやすさを兼ね備えたクルマは、1990年の発売当時はもちろん、現在でもそうはない。まさしく万能なクルマで、その域に達するのはなかなか難しいことだ。

過去の名車に名を連ねるモデルで、飛ばしているときばかりでなく、ゆっくり走っても楽しい。元祖「使えるスーパーカー」と言ってもいい。そしてその楽しさは、今でも登場時となんら変わらない。

購入時、どんなところに注意すべきだろう?

ホンダNSXの中古車 購入時の注意点

エンジン

チェックすべきはバルブカバーのガスケット、後側のカムプラグシール、そしてVTECソレノイドからのオイル漏れ。タイミングベルトとウォーターポンプ、カムシャフトベルトプーリーは、7年もしくは11万kmごとに交換が必要だ。アルミエンジンのマウントは、スロットルのブリッピングと過剰な動きの目視で様子を見よう。

温間時と冷間時のパフォーマンスを試し、VTECの作動がスムーズかどうか、音を聞こう。ヘッダータンクからのクーラント漏れにも注意。クーラント交換は2年おきに行い、ホースの摩耗や亀裂もしっかり調べよう。

トランスミッション

ニュートラル状態でクラッチを踏み込んで、インプットシャフトのベアリングからノイズが出ていないか確認しよう。1990〜92年の5段MTを積む初期モデルでレバーがルーズだったり、ギアボックスがノイズを発していたり、ギアが抜けたりするようなら、カウンターシャフト・ベアリングのスナップリングが疑われる。交換する必要がある、それも可及的速やかに。

サスペンションとブレーキ

タイヤの偏摩耗がないか確かめよう。それはアライメントに問題があるかの目安になる。リアタイヤは120ポンド。それで調子が戻れば安いものだ。ABSシステム作動時に唸りを上げるのは問題ないが、それもすぐに音が収まれば、の話。サーキット走行をした個体なら、ブッシュやボールジョイント、ベアリングに大きな負担がかかっていることが考えられる。

ボディ

パネル間のギャップや仕上がりはパーフェクトでなくてはならない。アルミパネルの修復や再塗装は厄介だ。パテや上塗り、下手な修復などはないか、見逃さないように。室内はカーペットをめくって、パネルの継ぎ目が工場出荷時のままかどうかも調べるのをお忘れなく。リトラクタブル・ライトのモデルでは作動確認が必要だが、後期型の固定ヘッドライトも高価なので、状態を確かめよう。ゴム類やシールもチェックが必要だ。とくにフロントウインドウ周りは弱点といえる。

インテリア

NSX-Tの脱着式ルーフは、コンディションをしっかり見極めたい。エアコンやドアハンドルの動きも確かめるべきポイントだ。パワーウインドウの上下動も見ておかないと、安くないモーターとレギュレーターを購入しなくてはならなくなる。走行距離のかさんだクルマは、運転席のシートボルスターが擦り切れていることが多い。

専門家の意見を聞いてみる

グラハム・ホーガン
プランズ・パフォーマンス

「NSXのデザインとエンジニアリングは、いつ見ても感心させられます。長年にわたり過小評価されてきましたが、最近になって価格が、特にMT車では急激に上がっています。確認すべきはECUのコンディションです。なにぶん古いクルマですし、水が浸入することがあるからです。カムベルトとクラッチの交換歴も調べておきましょう。それぞれ費用は2000ポンドほどかかるので、購入時の交渉材料にするか、交換済みか確認するかしておきたいですね」

「幸いにも、整備費用は年200ポンド程度で済みます。ただし、専門店以外での購入は慎重に。査定や整備に専門知識が必要なクルマですから。NSX-Tはスカットルシェイクが発生しがちなので、固定ルーフのクーペモデルより人気が低いですが、そのぶん価格も割安です。とはいえ、ボディ剛性を高めるために、専用部品が50点ほど組み込まれているんですけどね。とにかく、細部にまで気を配ること。そうすべきなのが、NSXというクルマですから。」

知っておくべきこと

MT車は引っ張りだこで、価格は高くなりがち。いっぽうのAT車は、人気が低いぶんだけ格安だ。程度が同じくらいなら、2割程度低い値付けがされている。とはいえ、かのアイルトン・セナのアシグルマは、ATのNSXだったとか。そんなわけで、ベストバイにはATのNSX-Tを推したい。

いくら払うべき?

3万〜3万3950ポンド(450万〜500万円未満)

この価格帯で買えるのは、エンジンは3.0ℓのみ。しかも、過走行の初期型AT車くらいだ。

3万4000〜3万9950ポンド(500万〜600万円未満)

低走行のAT車がほとんどだが、まれにMT車も見つかる。走行距離の多ければ、コンディションは最上級で、オーナー数がそれほど多くない物件になるだろう。

3万9000〜4万9950ポンド(600万〜750万円未満)

低走行の3.0ℓMT車が多く見つかる。中にはタイプRも混ざるが、程度がいいものは限りなく5万ポンドに近い値付けとなる。

5万〜7万9999ポンド(750万〜1200万円未満)

大事に乗られた低走行の個体で、平均的なものより幾分割高な値付け。

8万〜10万ポンド(1200万〜1500万円)

フェイスリフト後の、低走行な3.2ℓ車を狙うならこの辺りから。

掘り出し物を発見

ホンダNSX3.0クーペ 登録1992年 走行19万km 価格3万9000ポンド(585万円)

8オーナーで、20万km近いが、人気のMT車で、整備履歴は揃っており、大切に乗られてきた様子がそこかしこにうかがえる。しかも、英国でも屈指の専門業者が扱った英国仕様車だ。並行輸入車で構わなければ、同程度の価格でフルに調整可能なサスペンションやバケットシートも付いて、走行5.6万kmという個体もある。