前回の箱根2区で見事な走りをして、今季も調子を上げている塩尻和也

 総合力が抜けている青学大と東海大に対抗して、往路で突っ走る可能性を持っているのは神奈川大や東洋大、山梨学院大など。

 加えて、そこへ割って入りそうなのが、前回の箱根駅伝では1区15位と出遅れながらも、2区から立て直して総合4位に食い込んだ順天堂大だ。

 その柱となるのが1年生からエース区間の2区を走り、3000m障害でリオデジャネイロ五輪に出場した塩尻和也(3年)だ。

 前回は1区15位で襷(たすき)を受けてハイペースで突っ込み、最終的にはエチオピア人留学生のワークナー・デレセ(拓大・当時2年)らに逆転される結果になったが、1時間08分06秒の区間5位でまとめる地力を見せた。

 昨秋からは、こだわりを持って取り組んでいる3000m障害で世界大会の標準記録を突破するためにレベルアップしようと、5000mと1万mの走力強化を課題にして取り組んできた。その成果、5000mでは4月にそれまでの記録を22秒以上も上回る13分33秒14の自己新を出した。

 1万mでも昨年までは28分32秒85だった記録を、11月下旬の八王子ロングディスタンスでは、ケニア人選手や設楽悠太(ホンダ)らと競り合い、日本学生歴代4位の27分47秒87まで短縮。今回は一気に、鈴木健吾(神奈川大・4年)やドミニク・二ャイロ(山梨学院大・3年)と並ぶ2区の区間賞候補に浮上した。

 さらに、前回は4区で区間賞の走りをしてチーム順位を10位から6位に上げた栃木渡(4年)も、今年は5000m13分58秒04、1万m28分19秒89と自己ベストを更新してパワーアップし、ハーフマラソンでもユニバーシアードで6位と結果を出している。

「前回の1区は精一杯でしたね。元々出遅れたというより、守っていって、そこで何とかつなぐという考えだったので……。その点で(想定より)よくなかったのは3区と7区くらいで、あとは計算通りの走りだったと思います」

 こう話す長門俊介監督は「今年も優勝を狙っていくのではなく、『虎視眈々と』というチームかなと思っています。全日本でも1区23位と出遅れて結果は12位、まだまだそんなチームじゃないというのも見えてきたので。ただ、箱根に関して言えば、前回のメンバーから4年生が4人抜けていますが、往路に関しては1区の1人だけなので、見方によっては今年の方が戦力的にはいいんじゃないかなとも思いますね」と言う。

 その自信の根源になるのが塩尻と栃木の2本柱に加え、5区には前回区間5位の1時間14分12秒で走った山田攻(こう/3年)が今季も残っているからだ。

「山田は前回、上りの最高地点の通過タイムは全体のトップだったんです。そこからの下り区間で5番まで落ちただけなので、上りだけなら本当に強い。それに今年は5000mと1万mで自己記録を更新してパワーアップしているし、全日本でも7区で区間9位と平地もそこそこ走れるようになっている。上りがこれ以上速くなることはないでしょうが、最後の5km(前回より)は走れるようになってきているんじゃないかなと思います」

 長門監督はそう期待する。ただ、大きな課題は1区に誰を使うかということだ。出雲駅伝では1万m29分20秒79の清水颯大(そうだい/1年)を使い、全日本では29分16秒71の橋本龍一(2年)を使ったが、それぞれ区間15位と23位という結果に終わっている。

「全日本の橋本は1区のテストをしたわけではなく、出雲の7区でいい走りをしたので、アップダウンに強いかなと思って使っただけです。箱根ではトラックタイプがもう1枚いれば、それを1区に持っていくかもしれませんが、現状で大学対抗戦でも戦えるとなると塩尻と栃木しかいない状態だから……。1区の場合はどういう展開になるか読めないですが、たとえ遅い展開になってもハイペースに対応できる選手を使う必要がある。

 でも、栃木を1区には持っていきたくないという思いもある。順大の箱根駅伝は歴史的にみても”適材適所の配置”というのを重視していて、1区に関しては、”勝負の1区”をやっていないんです。もし栃木を1区に持っていって、塩尻が(2区で)神奈川大の鈴木くんと一緒にいけるようになったとしても、4区に栃木が置けなくなるので他大学の監督はうちに怖さを感じないと思うんです。

 だから塩尻がガンと行っても、『行かせとけ』ということになる。僕が他大学の監督だったらそうするし、逆に栃木が4区にいたなら『これ以上、行かすな』という指示を出しますから。選手はその特徴を生かす区間で使いたいなという考えです」

 29日に発表された区間エントリーでは、1区に吉岡幸輝(3年)が置かれ、栃木は”カード”として補欠となった。当日、このカードをどのように切ってくるのか

 復路に関しては、前回4年生が8区以降を区間7位、3位、1位と好走して、一時は6位まで落ちた順位を4位まで上げた。早い段階から往路候補か復路候補か選手を見極めて、秋から練習メニューを別にする調整方法をとっていることが功を奏していると自信を持つ。

 また、往路か復路かを問わず、クロスカントリーを基本にした練習に加え、フィギュアスケートの選手をみているフィジカルトレーナーを自力で探してきて、体幹部の強化だけではなく、動きの中での体のバランスや重心を取ることを意識して強化してきた。その結果、劇的に故障も減り、全体的なレベルアップにつながっているという。

「今回の箱根は、総合力があって復路でもひっくり返せる力を持っているのは青学大と東海大しかないので、神奈川大は往路で勝っておかないと優勝はないと思っています。それはうちの場合も同じで、往路で前にいなければいけない。

 もし神奈川大が前にいれば、全日本の走りを見ると『ちょっときついかな』とは思うけど、ひっくり返せる可能性はあると思います。だから総合優勝の可能性が出てくるとするなら、他校がミスをしたうえで、そういう状況に持ち込めた時ですね」

 長門監督が「普段はおとなしいが、スタートをした途端にスイッチが入ってしまう選手。駅伝では前に人がいると抑えきれないタイプ」と評する塩尻が、十分に持てる力を発揮できる位置でタスキをもらえれば、これまで以上に走れるのは確実。そうなれば、2区終了時点でトップに追いつかなくても、4区の栃木と5区の山田で逆転する可能性は十分に秘めている。

 順大が往路で突っ走り、優勝戦線を混乱に陥(おとしい)れるカギは、1区に起用された選手がどんな走りをするか、その一点にかかっている。

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