一度燃え上がってしまったら簡単に消火できない時代だ(写真:gc8hiro / PIXTA)

日本と海外の情報格差がなくなってきた。多くの情報は、すぐさまスマホでキャッチできる。しかし、それでもなお、海外では報じられているにもかかわらず、日本では言語の問題で、さほど紹介されないニュースがある。

その中には日本人にとっても興味深いものも少なくない。「日本ではあまり知られなかった2017年世界の炎上騒ぎ」を5例、紹介しよう。“語られない”問題を見ることで、日本に伝播しなかったのは当然だったか考えるのは面白いだろう。

言論の自由ではあるが…

(1)マクドナルドのトランプ大統領批判

米国マクドナルドのツイッターアカウントが2017年3月16日、トランプ大統領に批判的な書き込みをした。かなりストレートで“You are actually a disgusting excuse of a President”とし、「残念なヤツが大統領に選ばれた」とまで書いた。

もちろん、言論の自由はある。私もそれは自由だと思う。ただ、批判が殺到するのも、想像に難くない。米国でも同様だった。

「中の人」の犯行かもしれないが、いちおうマクドナルドの言い分を信じるならば、これはマクドナルドのアカウントがたまたまこのときにハッキングされたのが原因で、マクドナルドとは無関係の誰かが、トランプ大統領の批判ツイートを投稿したようだ。

とりあえず、「Trump disgusting excuse McDonald」とでも検索すれば、対象となるツイートを載せる記事を見つけられるだろう。

現在では、トランプ大統領を揶揄的に批判するのは茶飯事だ。メディアに出るコメンテーターで、むしろ、トランプ大統領支持者は少数だといっていい。それでも、いち企業が堂々と、自国の最高指導者を批判するのはいかがなものだろうか。SNSを考えてみてほしい。日本で大手企業の公式アカウントが、安倍首相を批判する書き込みをしたらさすがに非難されるに違いない。

(2)アディダスの無神経メール

「おめでとう! あなたはボストンマラソンで生き残った!」

アディダスは、今年のボストンマラソンで完走した顧客を対象に、「生き残った」ことを賞賛するマーケティング用の電子メールを送った。メールのタイトルは「Congrats, you survived the Boston Marathon!」だ。

ボストンマラソンといえば2013年大会がテロに巻き込まれたことは記憶に新しい。ゴール付近で爆発があり、3人が死亡。数百人が負傷した。アメリカで映画化にまでされたほどのおぞましいテロ事件だ。

アディダスの送ったメールはそれを想起させる。確かにテロの記憶を呼び起こし、再発防止に努めたり、危機感を高めたりするのは重要だろう。しかし、さすがに不謹慎すぎた。

実際に、すぐさまSNSなどで反応があった。アディダスは謝罪した。にわかには信じがたい出来事だが本当の話だ。「Adidas Boston Marathon」などで検索してみてほしい。

いまだに続く人種問題

(3)ダヴの黒人洗浄問題

続いてアメリカの日用品メーカー、ダヴだ。今年10月、Facebookの公式アカウントに投稿された動画広告が問題になった。

ボディソープの宣伝を目的とした内容だが、黒人の女性がそれを使ったら、白人に変身するというものだ。笑顔の黒人女性が服を脱ぐと、その下ではきれいな白Tシャツを着ており、顔(というかその女性自身)はいつの間にか、白人女性のそれになっている。

いまだに続く、人種問題だ。ほんとうに、いまさら感がある。広告代理店のセンスを疑うものとなっている。案の定、非難が殺到し、ダヴが謝罪する騒ぎとなった。

もともと、広告表現は、このところ、さまざまな消費者にPRできるように、最大公約数をねらっていたはずだ。それに、多様性の表現を失念してはならない。しかし、前述のとおり、「いまさら感」がある表現がまかり通ること自体が、人種差別問題がいまだに根深いと教えてくれる。

これは「Dove black woman turning into white one」と検索してみよう。画像を見ていただけるとわかるように、黒人女性が奇妙なほど笑顔であることが、逆説的に不気味さを際立たせている。

(4)ペプシの政治活動広告

ペプシは今春、社会運動をCMで描いて炎上した。しかし、これが日本人にはきわめてわかりにくい。

街ゆくデモ隊がいる。そのなかに、一人のモデルの女性がいる。デモ隊は、警官が立ち並ぶ地点で足を止める。すると、その女性が、ペプシを一本、警官の一人に差し出す。

警官は、業務中だというのに、そのペプシの魅力に抗うことができず、ペプシを飲んでしまう。すると、その光景に、デモ隊から拍手喝采が起きる。すると、警官同士も笑顔で顔をあわせる。内容はYouTubeで「Black Lives Matter Pepsi」と検索してみよう。

実際の事件として、2016年にアメリカではルイジアナ州で黒人が警官に射殺された。そのとき、ある黒人女性が捨て身で、武装警官たちの前に立ち抗議をした。これは、人名「Ieshia Evans」と検索したら画像が検索できる。これはいまなお残る人種差別に抗議した、切実なものだった。

それにたいして、ペプシは、さすがに商業的すぎた。本来は政治的で、かつ、根深い差別ゆえに立ち上がった人たちを、ある種、揶揄するものとして受け止められた。これってパロディだろ? と感じてしまう人がいたとしたら、それは日本人ゆえかもしれない。

ミネラルウォーターなどの値段が数倍に

(5)アマゾンの値上げ

企業も、人々のインフラになってしまうと値上げ自体が批判の対象になっていく。

米国では今年9月、ハリケーンのイルマがフロリダを襲った。物流網がストップ、あるいは生産に多大な影響が出た。無数の住人たちは、食料品や、ガソリンの高騰に苦しんだ。売り手からすると、値上げしたい意図はあるだろう。ただし、米国・フロリダでは、生活の基礎となる商品を、このような緊急時に大幅値上げすることは違法としている。

しかし、このハリケーンが襲った際(ちなみに、襲来する以前から)、実際には3000を超える小売店がそれを見越して値上げをしていた。それはリアル店舗だけではなく、インターネット通販大手のアマゾンもそうだった。

ツイッターのユーザーたちは、アマゾンでさまざまな商品が通常価格よりも高くなっているとツイートし始めた。ミネラルウォーターなどが数倍になっている、などだ。

これでアマゾンを責めるのも難しい気はする。アマゾンを使って、小売業者たちが販売をしているからだ。ただアマゾンは、店舗の監査をおこない、実際に不当な便乗値上げを行う業者を取り締まる、とした。プラットフォーマーとしての責任を自覚したかっこうだ。

以上、5つの炎上事件を取り上げた。中身をみると、企業が不用意に、政治や差別につっこんだ点が理由にあげられる。

ひとつ違うのは、5番目のアマゾン炎上事件だ。これは、おそらくSNSがなかったら可視化もされていなかったに違いない。しかし、今では全員がスマホを持っており、スクリーンショットも撮れ、すぐさま共有できる。さらに、プラットフォーマーとして、すべてを監視するのは難しい。どうしても対応は後手になってしまいがちだ。

こう考えると日本企業にも示唆に富む話であるように私は感じる。読者は、炎上する消費者のほうがむしろ“やりすぎ”と考えただろうか。それとも炎上してやむなし、と考えただろうか。