2017年12月12日にパリで開かれた「気候変動サミット」。前後して多くの企業や金融機関が「脱炭素化」を表明した(写真:ロイター/アフロ)

世界の金融機関や投資家、事業会社が「脱炭素化」に大きく踏み出している。

二酸化炭素など温室効果ガスの削減ルールを取り決めたパリ協定の採択からちょうど2年に当たる2017年12月12日、同じフランス・パリで開催された「気候変動サミット」に相前後して、多くの企業や金融機関が脱炭素化への取り組みをアピールしている。

世界銀行が新たな融資を凍結

この日、世界銀行は2019年以降、石油や天然ガス開発に新たな融資をしない方針を表明。仏アクサや独アリアンツ、米カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)など225の機関投資家・金融機関が、温室効果ガスの排出量が多い企業100社に対して、気候変動対策のためのガバナンスの強化や気候関連の財務情報開示の強化を求めると明らかにした。

このClimate Action 100+と題した活動には日本からも三井住友信託銀行が参加する一方、要請の対象にはトヨタ自動車やJXTGホールディングス、新日鉄住金など日本の大手10社も含まれている。

企業側も政府に対策の強化を求めている。サミット前日の12月11日、独アディダスや仏ミシュラン、米フィリップモリスなど54社が、世界の温室効果ガス排出量の74%を占めるG20(主要20カ国・地域)に対して、2025年までに化石燃料への補助金打ち切りや炭素税などのカーボンプライシング導入、気候変動リスクを財務情報として開示する取り組みを求めるとの声明を出した。54社には、日本からもダイキン工業やセイコーエプソンが名前を連ねている。

気候変動対策が大きく前進したのは2015年。同年9月には「持続可能な開発のための2030(年)アジェンダ」が国際連合で採択され、SDGs(持続可能な開発目標)として気候変動対策など17分野での取り組み方針が盛り込まれた。

そして、同年12月のパリ協定採択により、すべての国が参加して温室効果ガス削減に取り組む制度構築が合意された。その後、米国が脱退表明をしたものの、日本や中国、インド、欧州などの主要国はパリ協定の枠組み維持で歩調を合わせており、具体的な削減目標策定が始まっている。

雪崩打つ脱炭素化の動き

そうした中で、パリ協定で採択された、「産業革命以降の気温上昇を2℃未満に抑える」うえで鍵を握るのが企業の取り組みだ。

気温上昇を抑えるには、今後排出が可能な温室効果ガスの総量には制約があるという「カーボンバジェット」の考え方が打ち出され、排出削減の有効な方法として、石炭火力発電からの撤退や再生可能エネルギーへのシフトが求められるようになっている。

日本にいてはさほど気がつかないが、世界の大手金融機関や機関投資家、企業は次々と脱炭素化への取り組みを表明している。


ノルウェーの中央銀行は世界最大規模の運用資産を持つ同国の政府年金基金に関して、投資対象から石油・ガス会社株を外すことを2017年11月16日に提案した。今後、石油・ガス開発の投資リスクが大きくなるとの見通しに基づく判断だ。

フランスの大手保険会社アクサは気候変動サミット当日の2017年12月12日付で、石炭関連ビジネスへの投資を大幅に減らすとともに再生可能エネルギーに投資を振り向ける決定をした。

投資削減の対象は売上高の30%以上を石炭関連ビジネスに依存している企業などだ。合わせて石炭やオイルサンド関連事業への保険付与を取りやめるとも表明した。アクサは方針決定に際して、ドイツのNGOウルゲバルトが作成したGlobal Coal Exit Listに基づいて投資撤退の候補企業を選定する。

「(このまま放置した場合に想定される)平均気温が4度も上昇する世界では、保険の提供は不可能になる。世界規模の保険会社や投資家の役割が鍵を握る」(アクサのトーマス・ブベル最高経営責任者〈CEO〉)

オランダの大手保険INGも石炭関連への投資を大幅に見直す。同社もサミット当日の12月12日付で石炭火力発電プロジェクトへの投融資削減を加速化し、2025年までに投融資残高をゼロにするとの方針を表明。パリ協定を強く支持する姿勢を示した。

石炭関連企業も動き出す

石炭関連企業の間でも、驚くべき動きが起きている。

世界最大規模の石炭採掘企業であるオーストラリアのBHPビリトンは、12月19日付で世界石炭協会から脱退を検討していると明らかにした。同社はその理由として、気候変動およびエネルギー政策に関する考え方の相違を挙げている。さらに、カーボンプライシングに反対であり、パリ協定に批判的な立場を崩さないことを理由に全米商工会議所からの脱退についても検討。それら決定の期限を2018年3月末としている。

オーストラリアでは12月下旬に、インドの大手石炭関連のアダニグループが、地元州政府の低利融資拒否をきっかけに石炭採掘計画の断念に追い込まれた。

こうした中で、オーストラリア第4位のオーストラリア・ナショナル銀行は12月18日付で、今後新たな石炭採掘への融資を取りやめる方針を明らかにした。世界最大の石炭積み出し港である豪ニューカッスル港のロイ・グリーン次期理事長は、「石炭依存からの脱却に向けて事業を多様化していく必要がある」と述べている。

パリ協定から2年を経過する中で、脱炭素化への動きは雪崩を打って加速しつつある。