「Thinkstock」より

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 近頃、どうも「集中力が落ちた気がする」「やる気が出ない」「イライラしてしまう」「疲れやすくなった」……。こんな症状に悩まされている男性は、もしかすると「LOH症候群」と呼ばれる男性更年期障害かもしれない。

 女性特有と思われがちな更年期障害だが、実は男性にも同様の健康リスクが存在する。しかも、専門家によれば、LOH症候群に苦しめられるのは中高年とは限らず、早ければ30代でも陥る危険性があるという。

●うつ病と間違いやすく、病院でも気づきにくい?

 男性を襲うLOH症候群は、正確には「加齢男性性腺機能低下(LOH)症候群」といい、男性ホルモンの低下が招く更年期障害の一種だ。

 男性ホルモンの「テストステロン」が低下すると、心身にさまざまな症状が引き起こされる。そして、このテストステロンは、一般的に加齢とともに減少することから、LOH症候群は「男性更年期障害」とも呼ばれているのだ。

「精巣でつくられるテストステロンは、男性にとってもっとも重要といっていいホルモンです。テストステロンが不足すると、心身にあらゆる不調が現れます」

 そう話すのは、「男性更年期外来」を併設するメンズヘルスクリニック東京の小山太郎医師だ。

 LOH症候群の症状は多岐にわたる。たとえば、精神的には「なんとなく気分が落ち込む」「イライラしてしまう」「集中力がなくなる」「やる気が出なくなる」など、うつ病のような症状が現れ、身体的には「疲れやすい」「筋力が落ちる」「メタボ体型になる」といった症状が出てくる。加えて、性欲の減退やEDなどにつながるケースもあるという。

 つまり、LOH症候群は、男性の「心」「体」「性」のすべてに影響を及ぼすわけだ。

「男性の心や体のすべてに影響するのは、テストステロンが筋力や精力といった、いわゆる『男らしさ』、さらには仕事に不可欠なリーダーシップやチャレンジ精神など、あらゆる能力に密接にかかわっているためです」(小山医師)

 LOH症候群には、およそ600万人、日本の成人男性の8人に1人の潜在患者が存在するといわれる。しかし、それほどの潜在患者がいながら、認知度はいまだに低いのが現状だ。

「LOH症候群が認識されるようになったのは、ここ10年ほどのことです。男性患者のなかには、『まさか自分に更年期障害が起きるなんて思ってもみなかった』という方が多くいらっしゃいます」(同)

 認知度が低いのは、LOH症候群の症状がうつ病と混同しやすいことにも原因があるという。

 そのため、「気分の落ち込みからうつ病を疑って心療内科を転々としたが、診断がつかない」「肩の痛みがひどくて整形外科を受診したが、治療しても症状がまったく改善されない」といった人も多い。

 小山医師によると、原因不明の心身の不調に長年悩んできた患者を診察したところ、LOH症候群が原因だったケースが目立つという。

●LOH症候群の効果的な予防法は?

 LOH症候群を自覚する男性が少ないのは、発症の時期や症状に大きな個人差があることも理由のひとつだ。

 女性の更年期障害は「閉経の前後10年間」という時期の目安があるが、LOH症候群にはそれがなく、中年男性でなくても発症することがあるという。

「20代後半から30代の若年層でも、過度なストレスがかかったり睡眠不足が続いたりすることにより、テストステロンの分泌量が低下してしまう危険性があります。LOH症候群は、40〜50代の中高年だけでなく、すべての男性が気をつけなければいけない症状なのです」(同)

 実際、30代前半のある男性患者は、ある日突然「趣味のカメラを楽しめなくなった」のを自覚したことで、小山医師のクリニックを受診したという。検査の結果、テストステロン低値が認められ、生活指導や投薬による治療をスタートさせている。

 では、LOH症候群にならないためには、どんなことに気をつければいいのだろうか。

「もっとも望ましいのは、生活に支障をきたすような症状が現れる前に予防することです。睡眠不足をなるべく避け、食生活では肉やニラ、にんにくなどのいわゆるスタミナ食を積極的に取ってください。また、趣味など自分が打ち込めることを見つけて楽しむことも、テストステロンの分泌につながります」(同)

 さらに、「特に心当たりがないのに健康診断の数値が悪化した」「最近、朝勃ちしなくなった」なども重要なサインだ。こうした症状を自覚して早めに診断を受ければ、治療のきっかけになるという。

 LOH症候群の治療では、テストステロンの分泌量を上げるための生活指導や運動指導を行うほか、ホルモン注射やホルモン外用薬などの投薬を個人の症状や年代に合わせて選択する。

「心身の不調が続いたときは、年齢にかかわらずLOH症候群を疑ってみてください」というのが、小山医師からのアドバイスだ。

「治療をスタートさせるタイミングは、それぞれです。男性はテストステロンの分泌によって、あらゆる面で元気を取り戻すことができます。最近は“生涯現役”を望む70〜80代の男性が治療に訪れるケースも多いですよ」(同)

 男性ホルモンのテストステロンは、男性の「心」「体」「性」のすべてに密接にかかわっている。「集中力が落ちた」「やる気が出ない」「疲れやすくなった」などと悩んでいる男性は、不調を「疲れや加齢のせい」と決めつけず、LOH症候群を疑ってみるべきかもしれない。
(文=森江利子/清談社)